赤い地球

今年は新年早々に追いかけていたバンドがボーカルを残して解散する。掲げているバンド名だけ残り、メンバーが入れ替わる。「人間関係」が問題なのは明白な終わり方だ。悲しかったのは、いつでもどこでもお前らがいるから、ステージに立てるんだよ、と全員が体現しているライブを何度も見ていたのに、という気持ちが宙に浮いたままだということ。
「いつから私への気持ちが無くなってたの?」
恋愛のそれと似ている気持ちだと思う。

つまり私の平成最後の年明けは悲しみへのカウントダウンでしかなかったのだが、それでも謹んで新年のお慶びを申し上げて廻った。
昨年心身の健康を害し光回線すら通っていない実家へ帰省し、現代の医学では完治は無理と言われている持病の手術もすると決意し、長年の不眠症からは開放されたかのように夜だけはしっかり寝られるようになり、それでも両親の定年退職による経済状況が心配で、焦っているところに弟の弁護士デビュー確定の報告。
ちなみに兄も挫折組だが、彼は自分のことは自分でしているし、弟が気胸で手術になった際には手術代の20万を貯金から出せる程自立している東大文科一類卒のフルタイムアルバイターだ。

今年はいつまで私はこの、時々3Gになる、所によっては圏外になる山奥の、土壁の、畳の、瓦屋根の家で暮らすのだろう。
一人暮らしの部屋は契約継続したままだ。
やたら酒に強い体質だからコスパが悪いと手を出した煙草も実家に帰省する際に捨てた。
もともとピルを飲んでいたのだ、辞めるべき癖だった。
一人暮らしの部屋に戻れたなら、まず就労移行支援を利用して「一人で」「身綺麗に暮らし」「定時に出て」「定時に帰る」練習をする。
登録したままになっている派遣会社に面談を申し込み、紹介予定派遣に応募してどこか単調な座り仕事に潜り込んで未来の正社員を祈る。
その為に私は「この一冊で中学英語の振り返り」的な英作文を毎日ABCアルファベット順に進めている。
平たく言えばリハビリだ。

ここは田んぼしかない。

紫煙に塗れたアルコールで床がベタベタするライブハウスはひとつもない。
そもそも町内に駅はない。
ベランダもない日本家屋がポツポツと離れて有るのみ。
早くここを脱しないと、私の根底にあるどす黒い祖母への怒りや父への失望が溢れてくる。
春に退職する母を、一人暮らしの部屋に呼び寄せたい。
若者の街で待ち合わせをしてオシャレな居酒屋で晩御飯を済ませて笑いながら部屋へ向かって、温かいお茶を飲みつつ夜を更けさせ「おやすみ」と普通に眠る。
恋は叶えたいがまだ今の私は好きになって貰えるような要素がない。

願わくば、従兄弟の子供達に憧れられる存在に、好かれる存在に、奪い合いになる存在に近付けられるように。
来年のお年玉は新しい年号の小銭を入れて笑えるように。

私は私という獣と戦うのだ。

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