20230819

 中上健次『千年の愉楽』(河出文庫)の読書会だった。紀州の被部落差別地である〝路地〟で生きる中本の血を引く若者たちを描く六篇の短編集。産婆としてこの土地の若者を幾人も取り上げてきたオリュウノオバが何百年も生きるという、幻想的視野と語りで六篇の世界観が統一されている。と同時に、出来事や時間が混然とし、台詞も地の文に組み込まれていて〝悪文〟と批判された中上独自の文体で読む人間を選ぶ気もする。わたしは、こういった読みにくいとされる小説を読み慣れているというか、こういう文体に憧れを抱いているので読みにくさは感じなかった。博打、盗み、女遊び、暴力……といった血と精液にまみれた世界観は正直、好みではないので世界観に入り込みにくさがあったことは否めない。個人的に「天人五衰」が好みの一篇だった。

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