案件数158%UP!事業部サイトリニューアルの裏側:コニカミノルタのリアルなBtoBマーケ実践ストーリー2
こんにちは、コニカミノルタジャパンの名畑です。
2023年で6年目を迎える、私たちのマーケティングチーム。ほんの6年前、ほぼ何もない状態で3名でチームを立ち上げ、約5年間のマーケティング施策で創出したパイプライン(売り上げ見込みの金額)の割合は全体の27.3%。チームメンバーも16名になり、成熟期を迎えようとしています。
この6年で行ったマーケティングの取り組みは数知れず。その中から、皆様のお役に立ちそうな内容をピックアップしてお伝えしている私たちのリアルな実践ストーリー。第2回目はリード獲得数150%UPを達成した事業部サイトのリニューアルについて解説します。
ちなみに第1回のストーリーはこちらからご覧ください。
事業部サイトリニューアルに向けた事前準備(4か月)
“Webマーケティングを行わないデジマ”が慣例になっていた
私たちがリニューアルから運用開始までにかけた期間は約9ヶ月。事前準備に約4ヶ月、リニューアルに約5ヶ月かけました。
まず、「なぜWebサイトリニューアルを行ったのか?」。
理由は、マーケティングチームが立ち上がったにもかかわらず、相変わらず営業チームがサイトの管理・運用をやっていたからです。
当時は営業活動の片手間でマーケティング活動を行っていたため、リード獲得に直結する短期的な施策(主にセミナー施策)が優先されて、短期的な結果を出しづらかったWebサイト運用は後回しになっていたのです。ただでさえ忙しい営業チームが自部門のウェブサイトを運用するのは、さすがに無理がありました。
これではいけない!とマーケティングチームが声を上げ、まずは当時の事業部Webサイトのアクセス分析を実施し、課題把握から取り掛かりました。
課題をあぶり出すために3つの分析手法を駆使
サイトの課題を見つけ出すために、私たちは3つの調査手法を使いました。
1.ユーザ目線(ヒューリスティック分析)
サイトを訪れるユーザ目線に立って、サイトの使いやすさを分析しました。例えば、「CVボタンへの導線が悪い」「目当てのページにたどり着くまで時間がかかる」など、デザインや構造、操作性などの課題を探し出します。
2.アナリスト目線(アクセスデータ分析)
数値データを用いて客観的にサイト状況を明らかにしました。Googleアナリティクスのアクセスログ解析などを通じて、具体的な数値で課題がある場所を探し出します。
3.企業目線(ヒアリング)
マーケターや営業として、訪問者に見てほしい・回遊してほしいポイントを洗い出し、理想としたい姿と現状とのギャップをリストアップしました。
なぜ3つも分析手法を使ったのか?
理由は、Webサイトの目的であるリードの獲得(問い合わせ、資料ダウンロード等による個人情報の獲得)に直結する改善を行うためには1つでは足りないからです。
ヒューリスティック分析では、デザイン・構成面の課題をピックアップすることはできますが、それがどの程度のインパクトなのか数字で測ることはできません。また、そもそも想定ユーザ像がずれていた場合は効果がありません。
Google Analyticsでアクセスデータ分析をすれば、リード獲得上でボトルネックになっているページをピックアップすることができます。根拠に基づいた課題の挙げ出しが可能なのはメリットですが、逆に言えば、どのページに問題があるかしかわかりません。
また、単に訪問者数を増やせば良いというわけではなく、事業として関係を構築したい顧客を呼び込む必要があるので、マーケティング部門や営業部門に確認(ヒアリング)することも必須です。
サービスを知ってもらえず機会損失していることが判明
では、具体的にどんな分析結果が出て、どんな改善をしたのか?
まず、Google Analyticsのデータからサイト内の回遊及び閲覧状況(滞在時間、スクロール率)を確認しました。すると、直帰率がなんと70%以上と判明!せっかくWebサイトを訪問してくれたユーザーの7割以上が、1ページしか見ないでサイトから離脱してしまっていたのです。サービスページまでたどりついてもらえていない=コニカミノルタに興味があるのに、何をしている会社がわからないまま離脱しているユーザーが大勢いるという事実が明らかになりました。
一方で、自然検索から問い合わせをしてくれるユーザーが多いこともわかりました。そのため、「自然検索流入を増やせばCVも増加するはず」と仮説を立てて対策を行うことにしました。
分析を組み合わせることで課題が多数顕在化した
なぜ直帰率が高いのか。これを知るために私たちは、「アクセス数が多いのに直帰率が高い」ページを対象に、アクセスデータ分析とヒューリスティック分析を組み合わせた分析を行いました。
結果は、まずペルソナに関しては想定通り。抽象的なキーワードでの流入が多く、専門的な情報ではなく分析やリニューアルの進め方を知りたいユーザがしっかり流入していました。
しかし、ユーザは思ったように回遊してくれていません。ヒューリスティック分析を行ったところ、原因はコンテンツにあることが判明しました。ひとことで言うと、「検索でサイトにたどりついたのに、求める回答が書いていないため、すぐにサイトを離れてしまっている」状態だったのです。
「コンテンツにストーリー性がなく内容がわかりにくい」「そもそも他ページへの導線がなく回遊できるような仕組みになっていない」という課題も出てきました。
リニューアル前の課題要因は、リソースと計画性、推進力の不足
まとめると、「思ったようなペルソナ、キーワードでの流入は獲得できているが、SEO対策が不十分、コンテンツが不十分、サイト導線が不十分なためにCVしていない」という課題が浮き彫りになったわけです。
こうした問題はすべてマーケティングチームがWebサイト運用に関わってこなかったことが原因です。Webサイト施策は、営業が本業の片手間にやるのではなく、専門知識のあるチームが予算をかけて計画性と推進力を持って進めることが重要だと改めて実感しました。
ウェブサイトのリニューアル実施(約5か月)
社内調整のポイントは「運用に向けたリニューアルを共通認識にする」こと
課題が分析できたら、あとは実行あるのみ!「Webマーケティングの運用基盤を5か月で整え、運用半年で、実施年度で昨対比170%増のパイプラインを創出します!」と、サイトリニューアルの改善企画書としてまとめ、上層部に宣言し承認を得ました。その後、Webサイトリニューアルプロジェクトをスタートしました。
※パイプライン:売り上げ見込みの金額
ここでのポイントは、数値目標はリニューアルしただけで達成できるものではなく、運用してはじめて達成できるということ。結果を出すには運用体制の整備が不可欠なので、数値目標を宣言する際は、運用体制の構築もセットで宣言しました。
「運用に向けたリニューアルであることを共通認識にする」ことが社内調整のポイントだと実感しています。「リニューアルさえすればアクセスが増えて自然と効果が出るだろう」という考えはNGだと学びました。
実施内容1.コンテンツ拡充
2つの役割を意識し、カスタマージャーニーマップをベースに企画
コンテンツには、①集客目的の集客コンテンツ、②集客したお客さまにサービスに興味・購買意欲を持っていただくセールスコンテンツの2つがあります。
①は検索に引っかかりやすくするためのコンテンツで、例えば、検索キーワードに合わせたコラム記事の作成などが挙げられます。②はCVへ誘導するためのコンテンツで、お役立ち情報や導入事例など、ターゲットが求める情報をダウンロード資料にすることなどが挙げられます。
①②いずれも、ペルソナを立て、営業/マーケター/Webディレクター/インサイドセールスが一丸となってカスタマージャーニーマップを作成して作り込む必要があります。
もし、リソース的にどちらか1つにしか取り組めないなら、セールスコンテンツから始めましょう。アクセス数を増やす施策より、CVにつながる施策を優先してください。
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※クリックいただくとPDFが別ウインドウで開きます
コンテンツ拡充+MA/ISR連携で相乗効果を狙える!
カスタマージャーニーマップをベースにコンテンツを作成することで、マーケティングオートメーション(MA)及びインサイドセールス(ISR)との連携による相乗効果も狙えるようになりました。
例えば、ユーザがいまどんな検討段階にあるのかをMAで検知できるようにしておき、それに合わせた段階的なCVポイントを設置しておけば、機会損失を最小限にできます。また、インサイドセールスもリードナーチャリングに必要なコンテンツ施策を打ち出しやすくなり、Webマーケティング施策が好循環し始めます。
実施内容2.サイトの導線整備
最適な顧客体験を提供するための導線とは?
コンテンツが拡充できたら、次は導線の整備です。ここで大事なのは、カスタマージャーニーマップに基づいて導線設計すること。企業側が「見せたい!」ものを「見せたい」順番に見せるのではなく、ユーザーが「見たい」ものを「見たい」順番で見せることです。
実施内容3.運用体制整備
ウェブサイトのリニューアル後の運用体制について、私たちは営業チームの管理運用ではなく、マーケティングチームでの運用にしました。
そして、サイトリニューアル後はウェブサイトへのアクセス状況およびパイプライン創出状況など、定期的に数字をチェックすべきものに関しては、Googleデータポータルでダッシュボード化し、KGIやKPIの指標が誰でも簡単にデータが見られるようにしました。KGI・KPIの達成状況を追いかけるということも運用をしていく上で重要なポイントです。
例えば、私たちの場合は月次でどのぐらいのユーザーが閲覧しているのか、どのページがよく見られているのか、またどの資料がダウンロードされているのか、問い合わせは何件あったのかなどの指標を追えるようにしています。
ダッシュボードがあると、自分たちが確認したい指標のデータのみがすぐに参照できるので手間がかかりません。上司への報告や関係者への共有の際も、視覚化されたダッシュボードを見せることで比較的話がスムーズに進みます。
また、コンテンツのネタ切れを防ぐため、長期・短期両方を考慮したコンテンツの運用計画も重要です。ペルソナ・カスタマージャーニーマップを活用して、コンテンツネタのストックを考えていくだけでなく、お客様と直接接点を持つ営業やインサイドセールスのメンバーにヒアリングして、ニーズを拾い上げることもしています。
サイト運用とその成果
昨対比創出案件数158%増、創出案件金額160%増
課題分析に時間をかけ、しっかりコンテンツを作り込んで運用すること6ヶ月。堂々と胸を張れる成果を出すことができました!
昨対比(リニューアル前)創出案件数158%増、創出案件金額160%増という数値を達成できたのはもちろんのこと、KGI/KPI達成に向けた計画立案・体制づくり、課題を早期発見するための仕組み作りも完成しました。
ウェブサイト経由の問い合わせや資料ダウンロードがきっかけで案件創出につながる割合が圧倒的に増えました。ただし、注意いただきたい点として、私たちもウェブサイトのリニューアルを行っただけで、上記の成果につながったわけではありません。もちろん、集客施策も込みです。
定期的にメルマガで案内をお送りしたり、最新のコラムを公開した場合はターゲットリストにご連絡するなどの集客施策も並行して行ったゆえの成果となります。
リニューアル後も反省点・改善点はあるので、日々のマーケティング活動の中でコンテンツの追加やページの改修を試行錯誤しながら繰り返しています。
まとめ
基礎を固めることが重要で、一定の効果が出せる!
マーケティング施策において短期的な結果を出しにくいといわれるWebサイト。しかし、基礎的な運用をきちんと行うだけでも、私たちは一定の効果を出すことが可能だと考えます。
サイトリニューアルは運用を見直すチャンス。これからリニューアルを控えている会社は次のようなポイントをベースに、よりよい運用体制を構築してください。
根拠を持った課題の抽出、目標設定で建設的な議論ができ、PDCAも回しやすい
サイトリニューアルを行う際は、リニューアル後の運用で効果を出すことを念頭に置く
ペルソナ・カスタマージャーニーマップはやっぱり必要!
Webサイト担当者だけで完結させない・できない
数値目標をしっかり定め、その指標を可視化する仕組みを考える
数値を達成するための計画は予め立てる
上記の内容が皆さまの参考になれば幸いです。
ご相談・お問い合わせ
コニカミノルタジャパンではマーケティングの自社実践によるナレッジ・ノウハウを活用し、お客様のBtoBマーケティングの戦略策定や伴走支援、マーケティングオートメーション導入、マーケティングサイト制作支援など幅広くご支援を行っています。
マーケティング組織の運用や成果を出すための施策実行に課題を感じている方はお気軽にご相談ください。
お役立ち資料
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マーケティング担当者が知っておくべきこと:資料ダウンロード
※前編・後編の2つがあります。
記事作成者のプロフィール
名畑 瑠奈 コンサルタント
新卒で大規模サイトリニューアルプロジェクトやサービスページ企画制作などのディレクション業務に約3年従事。
現在はMA領域においてPardotスペシャリストとして大手クライアントのPardot自走支援を担当。
また、Web領域でのコンテンツ制作の経験を活かし、デジタルマーケティング部門のマーケティングチームを兼務、Web施策のディレクションおよび、Webコンテンツ、MA運用のオペレーションサポートを行っている。