未来2024年3月号詠草『見えない壁と見える壁と』
未来2024年3月号詠草『見えない壁と見える壁と』 風野瑞人
壁の穴 壁に穴 いや壁が穴 たった一字で世界が揺れる
ゆうらりと鉄筋コンクリート 今 いつでも見られる壁の名残
くちびるに許されていることばなど歯牙にもかけない すすり泣く壁
平和にもレシピはあるの 作られた笑顔を混ぜて壁に塗り込む
手をあげるその手の意味を問いかける 壁のむこうはやさしいひとかと
友だちを隠されたという 友だちのその友だちの友だちの壁
現実をうけいれるのか 現実をうけとめきれない壁の手前で
失ってしまったらしい 名を呼ばれ振り返るとあるやわらかな壁
眠れずに壁を見るときお互いに孤島になっているんだと思う
荒野という文字そのものの場所がある壁さえ亡くした砂漠の国に
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