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ヒュウガ・ウイルス
カミュの「ペスト」が最近、巷で読まれているらしいが、自分が今の時期に自信をもって薦めたい小説は村上龍「ヒュウガ・ウイルス」だ。
九州東南部の歓楽都市ビッグ・バンで発生した感染症。筋痙攣の後に吐血し死亡させるウイルスの蔓延。キャサリン・コウリーは日本国軍に同行する。人類《最後の審判》を刻む長編小説。
版元の幻冬舎には上記の紹介文が記されているが、この小説は「五分後の世界」という村上龍のシリーズ作品の2作目であり、現在の世界と五分間のタイムラグの発生しているアナザワールドの物語でもある。
1作目の「五分後の世界」も傑作だが、今の時勢で読むにはウイルスを題材として扱った「ヒュウガ・ウイルス」の方が相応しいであろう。
この本の主題は「危機感」だ。
切実な危機感をもって、生きているか、生きてきたか、そして、生きてゆくかが問われていたように思う。
20年近く前に読み終え、以来読み返していないが、それだけは強く記憶している。
爾来、病を恐れるというよりも、危機感をもって生きていかないことの方を恐れるようになった。
久しぶりに読み返してみようと思ったのと同時に、村上龍による「五分後の世界」の3作目を期待してしまう自分がいた。
生きてるか 活きていないか 死んでるか 心を燃やせ 命を燃やせ
人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光りあれ。