こんな学びが生きるタクシー業界の仕事vol.1 【境さんの野犬に鍛えられた精神】

企業が新卒採用を一斉にスタートして、学生はみんなスーツを着て就職活動を始める。そんな日本の就職事情。「大手志向で行こう」「営業職が向いているかな」「食品に関係した仕事がいい」…それぞれ自由に夢を思い描くだろう。そんな中、「タクシードライバーになろう」という選択肢がすぐに出てくる人は、なかなかいないのではないか。

「タクシードライバー」という仕事は「高収入」「安定したワークライフバランス」「未経験からのスタート」など、新卒入社でも活躍できる素晴らしい環境があることは多くの記事で書いてきた。それでもなお「新卒でタクシードライバーになるの？」という疑問が残るワケ。私はその理由の一つに、こんな「？」があると考えた。

「大学で勉強したことが無駄になっちゃわない？」

確かに、最初はそう思うかもしれない。はたから見れば、タクシードライバーとして働くために必要なのは「運転免許」だけ。「運転さえできればこなせる仕事じゃないの？」「大学を卒業して就職するメリットがあるの？」そんなふうに思うかもしれない。しかし、それは大きな間違いだ。タクシードライバーは「運転をする」だけの仕事ではないのである。

タクシードライバーの仕事、その「実」。そして、大学で学んだことがどう活きるのか。これまでの取材の中で聞いたドライバーの体験談を元にまとめてみた。

◆「物怖じしない心が育った」【境さんのトンガでの学び】
第二新卒で国際自動車株式会社（kmタクシー）に入社した境さん。大学時代は留学していたらしいが…彼が飛び立ったのは「トンガ」。トンガ…？トンガって、どんな国だっけ…。

"トンガ王国（トンガおうこく）、通称トンガは、南太平洋に浮かぶ約170の島群からなる国家で、イギリス連邦加盟国のひとつである。オセアニアのうちポリネシアに属し、サモアの南、フィジーの東に位置（以下略）"

一旦、wikipediaで調べてみた。ちなみにトンガの方は大柄の方が多く、ツポウ4世は「世界で最も大きな国王 (209.5kg)」としてギネスに登録されていたらしい。その他、ヌクアロファはトンガタプにあったり、コプラが有名だったり、パアンガを使ったりしているとのこと。

そんな心惹かれる国「トンガ王国」で彼は、何事にも物怖じしない心を手に入れたと言う。下宿近隣の移動には自転車を使っていた境さん。猛スピードで走り抜けるのには、ワケがある。…野犬に追われているのだ。こんな状況、かのキング・ハクや、シオネ・ヴァイラヒだって、流石にびっくりするだろう。彼は見事に野犬から逃げ、無事現地の学校に通い続けたのだった。

そんな（どんな？）彼の物怖じしない心はタクシードライバーとしての仕事に活きている。活きまくっている。というのも、ぶっちゃけ話をすると、ドライバーに対して高圧的な態度を取られるお客さまも少なくないのだという。

そんな時に彼はタクシーを運転しながら、心の中では自転車を運転する。野犬に追われている、あの自転車だ。「大丈夫だ」「きっと上手く躱す方法がある」…そして境さんが編み出したのが「て手懐ける」戦法だった。

流石に当時野犬を手懐けることは叶わなかったが、お客さまはちゃんと向き合えば分かり合えるはず。気持ちよく乗っていただくためには、こちらが高圧的な態度を取っていてはいけない。歩み寄るのだ。まずは、例え高圧的でも「全てを肯定する」…（詳しくは以前の記事を参照）

タクシードライバーは決して「運転するだけ」の仕事ではなく、ご乗車いただいた方に快適な時間を提供するホスピタリティ溢れる仕事だ。それが例え、どんあお客さまでも。「野犬よりは分かり合える」…こんな視点でお客さまと向き合える人はいるだろうか？そう、物怖じしない精神は、ドライバーの仕事をする上で非常に役立つスキルなのだ。

【余談】
屈強な精神を持つ境さん。屈強な体…というよりもすらっとしたビジュアルの彼は休憩時間のストレッチにこだわりがあるらしい。車内でこんなポーズを取っているので、ふらっとすれ違った同僚に変な目で見られることもあるとか。そんな冷ややかな目にも、屈強な精神で応えている（と思う）。

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