見出し画像

夢叶えに行ったらヌシみたいなのが釣れた 釣り編

「春眠暁を覚えず」とはこの時期によく聞く言葉です。かれこれ千年以上も言われ続け、そろそろ漢字圏の人達は聞き飽きたくらいでしょう。孟浩然より千三百年も先を生きる僕は、最近ついに暁を覚えてから寝る生活にまで進化させました。

たとえ自分が昼間眠っていても、人間のメインの活動は昼間。僕は熟睡中に身に覚えのない宅配によく叩き起こされますが、ぶつぶつ言いながら封を開けるとなぜか全てに心当たりがあります。今回は鬼滅の最新刊でした。

まだ読んでません。

さて、誰しも小学生の頃には夢があり、それを叶える自分を想像するだけでわくわくしたものです。

もちろん小学生の僕にだって夢がありました。

「小さめのナマズを釣って水槽で飼いたい!」

というものです。実に子供らしい夢ですね。しかし当時住んでた岐阜の山奥では、ナマズの生息報告がありませんでした。

生物飼育についての本を片っ端から読み尽くしていた僕は、熱帯魚でもリクガメでもなく、とにかく身近な生き物をあれこれ飼いたがっていました。その頂点がナマズの飼育です。ゴキブリも飼いました。牛乳パックに残飯と一緒に放り込んだらなぜか三日で死にました。

近くでナマズが捕れないため、ウグイとかコイとかを代わりのような気持ちで飼っていました。一緒にイモリを数匹入れたら脱走されまくってタンスの裏で干物になっていました。

あれから十年。下流域に移り住んだ僕は、ナマズの生息域圏内にいました。そして夢は

「デカいナマズを釣ってデカい蒲焼を食べたい!」

に変化していました。シンプルで本能に忠実になった所に精神的な成長が窺えます。

釣り時は夜です。自分の生活サイクルにピッタリですね。海釣り用に用意していたイワシの塩にんにく漬けと、同居して二ヶ月目になったミミズを針に刺して水責めします。

流れのゆるやかな所を流していると、目印のケミカルライトがぐん、と沈んだのでアワセます。めちゃめちゃな重さが一気に竿にかかりました。

デッッッッッッッッッッッッカ

この網の横幅は30cmです。想像の三回りくらいでかいやつがきました。入り切らなかったらどうしようかとヒヤヒヤでした。

ほとんど釣果報告のない川で釣り上げました。それもそのはず、みんな海ばっか行って誰も川なんて行かないのです。ここは海無し県育ちの僕が優勝しました。

網にエサ箱を入れたままナマズを掬ったため、ナマズと入れ違いにエサ箱が川に放たれました。必死で箱を取り戻します。一緒に暮らしてきたミミズが水責めに合うのは見てられません。

今度はスマホを地面に忘れてバイクに戻りました。呼吸ができないのと同じなのですぐ気づきます。取りに行ったら自分の足跡がついていました。いつ踏んだのでしょうか。

持ち帰ります。やはりバイクは見た目より使い勝手ですね。
このクソデカビニール袋は元々配達用の新聞が入ってるもので、実家では僕の跡を継いで弟が新聞配達をしています。ゴミ袋から魚入れ、大男の窒息までなんでも使えます。

帰宅したら泥ぬきのために浴槽に入れます。

買ってきた金魚を水槽の水に慣らすのと同じ要領で、まずは川の水と水道水の温度を一時間かけてゆっくり合わせていきます。

やってられるか~~~~!!!!!

十分くらいで袋開けました。忍耐を知らない若者。

それにしてもかなりの大きさです。さぞ大きな蒲焼きになるでしょう。

水道代が定額なのをいいことに水は垂れ流しにします。わくわくしすぎて十分に一回くらい様子見に行っちゃいますね。もう当たり前のように浴槽で飼っています。どこで間違えた?


というわけで憧れの生き物との同棲が十年越しに叶います。前回はすっぽんと暮らしていたため、「次の女か」と言われました。食べるために飼うのだと何度言えばいいのでしょうか。

判定の結果、メスでした。

次回、捌きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?