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静かなる退職

ある男性のつぶやき


米国ではZ世代を中心に「静かなる退職(Quiet Quitting)」というムーブメントが起きているようです。会社でモチベーション高く働き、ときにプライベートや家族を犠牲にしてでも長時間労働をする、いわば、「必要以上に一生懸命働く」、、、ことをもうやめようという動きです。


これが「静かなる退職」を象徴するようなTikToKです。地下鉄のベンチで一人の男性がつぶやいています。

必要以上に働き過ぎることをやめてみよう
人生は仕事だけじゃないはず
人としての価値は、仕事ができるできないだけで決めるものじゃない

これは日本でいう「働かないおじさん」に一見似ているような感じですが、背景からして大きな違いがあると思っています。

米国:Z世代。社会不安や働き方の見直しにより、仕事”だけ”ではない自分の人生を生きようではないかという前向きな思想が根底(と推定します)

日本:役職定年・再雇用になった中高年。減俸に加えて重要でない仕事を元部下に指示されてしまいモチベーションが著しく下がってしまったことが根底(こちらは確かですね)

昇進して役職が高い人たちにはない感覚ですから、こういう人たちには理解不能な話でしょう。
私は何度も燃え尽きてしまうことばかりなので、この気持ちは痛いほどよくわかります。

今後日本では、「働かないおじさん」が進化して「再雇用までぶらさがるおじさん」になっていく人の数がますます増えそうな気配です。実際、2022年のギャラップ社調査ではエンゲージメントの高い割合は日本では全体の「5%」、調査対象129カ国中128位でした。これは再雇用も含めた数字なのかは不明ですが、万一カウントされていないとしたらますます日本はヤバいですね。

ここまでくると、個人の考え方の問題などではなく、そういう働く人のモチベーションを落とすような「労働社会システム」に課題があると思っています。

そんななか、個人としての心を救うのは、米国流の「静かなる退職」ではないかと思いました。
実際に退職はしないけど、以前のようなハッスルはしない。仕事は生産性高くキチンとやるが、精神的にはもう退職して、生き方を哲学して生きる・・・

これも踏まえて、私も含む、シニア同輩はどのように生きていけばいいのでしょうか?

静かなる退職を前向きにとらえる

60歳を過ぎたら、ハッスルする成功者(役員など)やモチベーションが高すぎる中堅層とは一線を画してもよいのではないかと思います。

自己犠牲をしハードワーク・長時間労働を続けてきたが、努力空しく先へ昇進できずに定年を迎え再雇用選択の岐路に立ったなったならば、もう過去は捨てて、「シン・働かないおじさん」として生き方を変える。
これは決してサボったり、会社に背中を向けるということではなく、視点を変えることです。
前提:プライドを捨てて再雇用の道を選ぶ、そして・・・
1.勤務時間に正確になる 
  可能なら一時間早出して一時間早く退出
  生産性を高める
  65歳以上でやっていくことの準備にあてる
  社労士や行政書士など士業チャレンジは新たな生きがいにもつながる。
2.若い人を教えることに重心を置く(感謝されるはず)
  ここが大事です。自分がここにいる意味がないと本当に退職せざるを得なくなってしまいます。長時間労働や自己犠牲はしないが、自分を必要としてくれる人たちにフォーカスして8時間を乗り切る。
3.地域交流会に入る(視野を広めるとともに、会社で傷ついた心を利害関係のない仲間が癒してくれる)
 
心のなかでは退職しているので出世競争や派閥、上司への忖度から違う世界に身をおく。バリューではなく時間を切り売りし自分なりの貢献をする。

先ほどのTikTokのつぶやきにもありましたが、人の価値は会社や仕事が決めるものではありません。持っているお金、稼いでいるお金と幸福感が正比例するものでもありません。むしろ反比例が多い。

「オールド・働かないおじさん」は誰からも支持されない、あまりよくない生き方ですが、「シン・働かないおじさん=ポジティブな静かなる退職」はむしろ前向きに考えていくべき考え方のような気もします。誰にも言うことなく淡々とやっていく。

全身全霊で仕事に人生を捧げ、会社に、社会に貢献してこそ人生という考え方もありますが、一度きりの人生を自分らしくマイペースで生きていくのだって、少なくともバブルを生きた老兵たちは60歳を超えたらもうそういう選択肢をとるのもありではと私は思っています。