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人的資本経営

人的資本経営が脚光を浴びていますが、概念よりも実務のうえでどうすすめていくかが本質です。折しも中期経営計画の策定中ですが、単に「人的資本経営を意識する」「具体的には以下・・・」だけでは何も変わらないので、頭のなかを整理中しています。

1.人的資本経営の背景


①投資家の目 無形資産重視の姿勢
持続可能な成長を重視するESG投資において、企業が人材のもつ価値をどう高めているかを可視化することが求められている
②人事部門の目 標準化の潮流
従来のアナログ的な人事考課が、データをもとにしたデジタル的な人事考課へと移行しつつあり、各企業の取り組みと人材価値の差が客観的に参照できるような流れになっている
③働き手の目 働き方改革の進展
働き手の選職リテラシーが格段に向上し、自分の価値を向上させてくれる企業か否かが会社選びの重要な基準になりつつある 

2.人的資本とはなにか(これまでとの違い)


これまでの人材のとらえ方は、損益計算書における「労務費」でしかありませんでした。つまり原価という位置づけなので、ここを下げていくことで利益を稼ぎ、それが純資産へ入っていくという流れです。

一方人的資本の考え方では、人材はいったん「資産」として考えて、この「資産」に教育などの投資をしていくことで価値が創出される。その価値がバランスシートの純資産(のうち、人的資本)に貯まっていくという考え方になります。

3.何をどう取り組むか


いちばん参考になるのは「ISO30414」の指標です。11領域49項目がありますのでこれを参考に組み立てていくことになります。

11領域(この中に49項目が入っている)
1.コンプライアンスと倫理
2.コスト
3.ダイバーシティ
4.リーダーシップ
5.組織文化
6.組織の健康・安全・福祉
7.生産性
8.採用・異動・離職
9.スキルと能力
10.後継者育成
11.労働力確保

これらが投資家にも人事領域関係者にも働き手にも取り組みが求められている項目であるので、今後の施策を考えるにはとてもよい整理になります。

どう取り組むかは、ISO30414のガイドラインに沿うと、
①インプット    
 何にどのくらいの時間とお金をかけたか
②アクティビティ
 どのような活動を通じて
③アウトカム
 具体的な成果は(定量的が望ましい)
になります。これもとてもわかりやすい示唆です。

ポイントは、
・①→②→③が一貫したロジックになっていること
はいうまでもなく、
・③が収益につながっていること
だと思います。

人事領域の施策は、ともすると収益向上の視点が抜けてしまいますが、これがないと社内での納得感がなく、また、何のために取り組んでいるのかという途中迷子になりやすくなります。

ですので、私自身も、評価制度にしてもエンゲージメントにしても健康経営にしても、それらは社員のためでもあるが、企業成長(を通じての収益向上)のためでもある、そして後者があってはじめて社員への還流がある、ということを強調しています。

取り組み事例がネット上にも多く出ていますので、自社の事情に合わせつつ、何のために人的資本経営にシフトしていくのかを明確にして、すすめていければと考えます。