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🎶なじかは知らねど〜🎶美しい妖精ローレライの歌声に誘われたその先は…?

『夢伝説』

 先日、ドイツ・ライン河を船で下った。船内でワインを満喫していると、垂直に切り立った岩山“ローレライ”が近づいてきた。夕日を受けて赤々と燃え立つ魔の岩壁。「♬なじかは知らねと心わびて」の懐かしい旋律が船上を流れ、惹(ひ)かれるように、ふと、岩山を見上げる。…が、そこには、あの歌曲に登場する金髪の乙女の姿はなかった。残念。

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 遠い昔、水の精が乙女に化身して、岩の上で髪を梳(す)いていると、上流から小舟がやってきた。舟人にむかって乙女が妖しく歌いかける。「私はローレライ♪あなたを待っていたのです」。その甘美な歌声に魅せられた舟人は、なぜか、深い哀しみにおそわれ、舵を取り損ねて、小舟もろとも急流に呑み込まれてしまった。

                                   🎶

 岩の中心は空洞になっていて、妖精が住んでいるという。ならば、と岩山の中を列車で走ることを思いつき、さっそく飛び乗った。いざ!妖精の住む岩穴へ…。列車はライン河に沿って走り、やがて、ローレライのトンネルに入った。「…で、妖精は?」。窓に目をこすりつけて捜すものの、岩山の中には乙女の姿は見当たらない。「な〜んだ」。旅は人々に夢を与えながらも、時には、その夢を奪ってゆく。“なじかは知らねど心わびて”の心境で、私は旅をつづけたが、はるかなる未来、私たちはどんな夢伝説を残しているだろうか。


2004年9月30日 岐阜新聞掲載

最後までお読みくださり、ありがとうございます!岐阜県のピアノ講師・高岡紀美子先生のエッセイ作品を紹介しています。歴史・クラシック音楽がお好きな方、興味がある方、そうでない方も😆ぜひ遊びに来てくださいね〜!“くらびあはな”でInstagramもやってます!どうぞよろしくお願いします❤️❤️❤️



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