くらそめ

くらそめ

最近の記事

アイドルオタク人生録 vol.2~小澤愛実という運命~

「最初から核心を突くと、僕は親を亡くしています」 オタクインタビュー第2弾としてお願いした彼の生い立ちを聞き始めたとき、彼は最初に言った。 彼は、30歳に差し掛かろうとしていたが、まだ20代だった。一般的に、親を亡くすには早い年齢だ。 「ああ・・・そうなんだ。どうして亡くなったのか聞いてもいい?」 「母親は事故です。父親は病気で。癌でした」 彼は出会うといつも奇抜な格好をしていた。しかし、その日駅で待ち合わせた彼は黒地にタバコのパッケージが印刷されたパーカーを着ており、

    • アイドルオタク人生録 vol.1~なんかちゃんは光~

      はじめにこの記事は、あるアイドルオタクについての記事である。 アイドルならまだしも、何でアイドルオタクを掘り下げるの?と思われるだろう。当然の疑問である。 私も、はっきりとした答えを持っているわけではない。ただ、このアイドルブームというムーブメントがいつまで続くかわからない中で、「こんな人たちがいたんだ」ということを残しておきたい、と強烈に思ったのがきっかけの1つだ。 この記事で掘り下げていくのは私立恵比寿中学のオタクとしては比較的有名な「きうり」さんである。 彼は2

      • ももいろクローバーZの音楽(2013年8月執筆)

        前書きこの原稿を書いたのは2013年8月。当時私はももクロの音楽同人誌「イルミナーレ」の刊行に関わっていた。 私は当時ももクロに熱中していた。そしてももクロの音楽の「どこが新しいのか」「どうして面白いのか」を説明しようとしてこの原稿を書いた。 本の発起人で総責任者であったさかもとさんは、私の原稿を一番面白いと評価してくれた。その結果、私の原稿が一番最初に掲載いただくという名誉を得たのである。 本来は有料(といっても儲けなどはないが)の本の内容なので、インターネットに載せる

        • 「大空、ビュンと」がSTU48楽曲へのアンサーソングである可能性

          別記事「≒JOYの楽曲の歌詞全体についての考察」にて小澤愛実のパート割とラストアイドルの歌詞の関連性があるかも、と書いたが大事なことを忘れていた。 市原愛弓も、そういう意味では忘れてはいけない連続性を帯びている存在である。そこで、彼女が在籍した期間のシングルの、特に表題曲を調べてみたら結構収穫があったので紹介したい。(人によっては今更ですか、と思うかもしれないけれど) タイトルは「アンサーソングである可能性」とちょっと大げさに書いているが、最後までお読みいただければ、まあ確か

        アイドルオタク人生録 vol.2~小澤愛実という運命~

          ”君はスパークル”がイコノイジョイ最高の作詞と思う理由

          ≠MEに、「君はスパークル」という曲がある。 同グループの中でもかなり評価の高い曲である。 この曲、音楽も良いが、歌詞もかなり評価されているということで、今回はこの曲がなぜオタクの心を打つのかという点を主に歌詞の面から考えてみたい。 理由①:オタクあるあるが解像度高く描写されているこの歌詞の主人公は言うまでもなくアイドルオタクで、アイドル=君=スパークルというのも、明白と思われる。ゆえに、この曲はオタク側からアイドルを見たときのことが描写されているのだが、すごく「オタクある

          ”君はスパークル”がイコノイジョイ最高の作詞と思う理由

          ≒JOYの楽曲の歌詞全体についての考察

          目的 本稿は、≒JOYのそれぞれの楽曲を俯瞰した際に発見される関係性について指摘するものである。 ≒JOYの歌詞はすべてプロデューサーである指原莉乃が書いたものである。また、そのパート割についても指原莉乃が関与しているものとされている。 歌詞、パート割を1人が総プロデュースすることにより、楽曲間で相関性が生まれ、パート割にも意味が出るというのはごく自然なことだと思う。 これら”立体的な相関性”を認識することにより、≒JOYの楽曲をより楽しむ一助になれれば幸いである。 指摘①

          ≒JOYの楽曲の歌詞全体についての考察

          二階とみかん

          私は小学3年生から中学を卒業するまで、札幌の郊外の住宅地にある築20年以上の古い一軒家で育った。東京で暮らしている人には想像がつかないと思うが、その一軒家では部屋が余っており、二階はすべて子供のスペースという状態であった。二階には部屋が四つあり、弟の部屋と私の部屋が一つずつ、実際には使われていない部屋が一つ、倉庫として使われている部屋が一つ存在していた。そして弟と私の部屋は連結していた。おそらく、足すと十二畳ぐらいはあったと思う。小学5年生の私と小学2年生の弟に対し、私の両親

          二階とみかん

          二代前からの阪神ファン

          突然だが、私は阪神タイガースのファンである。 出身は北海道札幌市。日ハムが札幌に拠点を置いたのは私が高校生の時だった。北海道では、日ハムが来る前は、巨人ファンが大多数だったように思う。 さて、そんな私が阪神ファンになったのは、私の父方の祖父が熱狂的な阪神ファンだったからである。 祖父の話をしよう。 祖父は北海道生まれ北海道育ちで、その生涯のほとんどを教員として過ごした。そして教員時代は野球の審判の資格を持っており、学生野球の審判を実際にしたこともあったそうだ。もっとも、

          二代前からの阪神ファン

          歌唱力に関するあれこれ-女性アイドルを中心として-

          本稿の目的: 私が歌唱力とか、歌が上手いと思うとき、どのようなことを考えているかを説明することで、歌唱力とは何かという自分なりの考え方を整理して説明すること サマリ: 歌唱力を構成する要素について、ざっくりと、絶対的、相対的という分類と、わかりやすいもの、わかりにくいもの、という4象限に分類する。そのうえで、わかりやすいものについては、その落とし穴・注意点を、逆にわかりにくいものについては、何を示しているのかを私個人の視点を具体的な事例を交えて説明する。 ※具体例は自分の

          歌唱力に関するあれこれ-女性アイドルを中心として-

          過去、現在、未来が交差する瞬間

          虹コンの武道館から1日後、きやさんのnoteが公開された。「ありえたかもしれない未来」も「いまここにある現在」も否定せずに生きることという記事だ。 タイトルどおり読めば、彼の推しだった奥村野乃花との付き合い方が少し違っていたら、彼女はもう少しアイドルができたのではないか、自分は正しかったのだろうかという「ありえたかもしれない未来」の話がありながらも、それでも武道館というステージにたどり着いた虹コンを讃え、「いまここにある現在」を否定せず生きていくんだ、という話であると理解した

          過去、現在、未来が交差する瞬間