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底辺アマチュア奏者の編曲のススメ

1.はじめに

「楽器が上手くないのに編曲なんて生意気だ」、
「編曲する暇あったら楽器の練習しろ」、
「それ以前に楽譜が読めてないだろ」

吹奏楽編曲に興味があると言った時に、
一部の人に言われました。

そんな私の音楽経験は以下の通りです。

〇吹奏楽編曲を始めた時点の音楽スペック
・高校、大学は吹奏楽部だったがコンクールバンドではなかった(高校は部員数一桁、大学は授業優先にしたため、積極的な活動はしてませんでした)。
・コミュニケーション能力が低く、積極的に学習する能力と理解力が人一倍弱い。
・社会人になってレッスンに通うまで、楽譜は音階しか読めなかった。
・現在はサブカルチャー吹奏楽団に所属しているが、
上記の状態だったので、ずれた感覚と思い込みで合奏参加をしていた。


音楽経験が乏しい状態の私が吹奏楽編曲ができるようなるためにしたこと、僅かに変わったことをかきます。

「もしかして、音楽経験が全然ない私にも編曲できるかも!」

そんなきっかけの記事になるといいなーと思い、初めての曲が出来上がるまでの過程、今やっていること、変わったことなどを書くことにしました。

なにかお役に立てれば幸いです。

2.はじめての曲ができるまでやったこと

①和音のレッスンに通ってみた
まずは理論を知ることと思い、半年ほど通いました。

受けたレッスンの内容はピアノを使ってコードを鳴らして説明する形式でした。

コードに関してどれくらい理解したのか、テストがあったら及第点をとれる自信はありません。

じゃあ、通った意味はないのでは?

しかし実際には、編曲作業しているとある時、「もしかしてあの時先生が言ってたことってこのことだったのかな?」と時間差で理解することがちょいちょいあります。

そんな時、頂いたテキストを引っ張り出したり、頭の片隅で残っている用語をググることは度々あります。

分かったことは編曲をしてみると分からないところもガンガンでてきて調べようって気持ちになります。

最初は好きな曲の楽譜(コードが明記されている譜面)を買って、習ったことをゆるく復習してました。
(わからなかったら、先生に聞いていました)

それでも初めての曲を取り掛かるにはかなり時間がかかりました……

②環境を整えてみた
当時、使っていたパソコンにガタがきていたのと、編曲ソフトを持っていなかったので、FinaleとSurfaceを購入しました。

楽譜制作ソフトはMuse Scoreというフリーソフトもありますが、周りの編曲者がFinale使いが多かったので、分からないことが聞きやすいのではと奮発して購入をしました(実際のところ、使用者が周りにいた恩恵があって効率的な使い方を教えていただいてます)。

因みに便利なフリーソフトは聞々ハヤえもんと、Wave Toneです。
(耳コピで助けられています)

Finaleは選んで良かったぐらいに、たのしいし、便利です!

③編曲したい曲の楽譜とバンドスコアを買ってみた
耳コピ目的で原曲の楽譜を購入するのは、今はどうしても調合やリズム、拍子など分からない時にヒントまでで留めてます。

最初は無理して全部自分でやるのは、やっぱり人によってはハードルを上げてしまうと思うんです。
(絶対音感は残念ながらありません)

私の場合は、編曲の回数を重ねていくうちに段階的に耳コピ部分を増やしていきました。

(初めての曲)分かる部分だけ

(編曲3回目の曲)ドラムやベースをやってみよう

(編曲4回目の曲)自分でコードを考えてみよう

(編曲n回目の曲)原曲にないけど降ってきたフレーズをいれてみよう。

頼れる資料、自分でできそうなところから始めると、段々とできることが増えてきて、自由度広がりました。

逆にもっと自由に編曲したい気持ちが沸き上がって、耳コピしたい部分が増えてきます。(分からないときは本当に分からないし、こういう時、音楽理論の知識が働くんだろうな……)

④思い付くまま打ち込みした
とにかく、見よう見まねで打ち込みしてた……ハズ。
それでも最初の一曲はなかなかきっかけもなかったので、完成までに一年ぐらいかかりました。
(今は難航しなければ、一般的な歌ものなら1ヶ月半ぐらいでつくれる時があります)

完成までには遠かったけど、メロディ一、ドラム、ベースを一通り打ち込んで、形が見えてきた感動はなんともいえないうれしさがありました。

そこから楽器に音を乗せて、徐々に形になっていく一つ一つの作業に感動がありました(これでいいのかなという不安もありました)

勢いだけで作っていたので、終わりの瞬間って突然やってきました。

あれ、いつの間にか打ち込みが終わっているという感じでした。
(色々と間違いだらけでしたが……)

⑤完成させたいきっかけに出会ったので飛び込んでみた
(編曲オフに参加してみた)

この機会なかったら、多分ずっと最初の曲は完成しなかったし、こうして編曲をたのしんでなかったと思います。

編曲オフ会は編曲有識者のアドバイス、奏者が集まって実際に合奏していただける……なんという素晴らしい機会!!!

一方、やっぱり私が編曲をやってもいいのかという不安もあり、送信ボタンを押すのにかなりの時間を要しました。
→結局、曲を完成させたいという気持ちが勝って一歩踏み出せました。

そこからは合奏日に向けてひたすら手探りで音を打ち込んでいました。

結果、出来上がった楽譜は色々と音楽のお約束ごとを破った非常に演奏しづらい楽譜ができました。
(調合、リハーサル記号の位置がおかしかったりと、今思うと恥ずかしいです→それでも私にとっては大切な楽譜です)

無知故に一部のパートが地獄みたいな譜面で、本当に素敵に演奏して頂いたことはありがたかったです。

楽譜が完成し、オフ会を迎える数日間の緊張感、実際に合奏された瞬間の感動は今でも印象強く残っています。
(オフ会の当日の朝は緊張でご飯が食べれなかったです)

楽器の演奏が上手くないので、やっぱ編曲する時間があったら練習とか、楽譜の読み方に時間を費やした方がいいのかな?

編曲をなめているとか向いてないって怒られるかな?

原曲が好きな人を怒らせるような譜面かな……

でもやっと自分が編曲した曲が聴ける日がやってきた!!

など、色んな不安とワクワク感が入り交じってました。

実は幻の初めての曲があったんですが、訳あって編曲を断念せざるえなくなった背景があり、それはトラウマとなっていたので、本当に合奏を迎えられるかどうか、今後も編曲を続けることができるのかの不安がありました。

そして、初めての合奏を聴いた瞬間はそんな不安はどうでもよくなりました。

やっとこの瞬間が迎えられた!!!

初めての合奏を聴いた瞬間、色々渦巻いていた不安はすべて解消されました。

合奏という大きな到達点に行けたことが私にとって本当に大きな喜びでした。

そしてもっと音楽を作りたい、私が音楽で求めていた気持ちはこれかもしれないという確信が生まれました。

このことに気がつくために、それまでの過程に試練があったんだと思いました。

しんどくて、不安ばっかあってめんどくさい作業は多いけど、編曲に出会えて本当に良かったです。

あの時の感激をもう一度味わいたいと、中毒のように病みつきになってしまったのです。

⑥振り返ったり、指摘部分を直してみた
理解してなくても、覚えている範囲で初めての曲はすぐに手直ししました。
(それでも鬼畜な曲だったことはその後、所属楽団で合奏をしていただいて痛感しました)

そしておすすめしていただいた楽典の本や、Finaleのリファレンス本をAmazonでポチったりして必要そうなものを揃えて環境を強化しました。

⑦初めて編曲した曲について
私が社会復帰をするきっかけをくれたアニメのOPでした。

歌詞が半年間の無職期間を重なり、そしてボーカルの後ろでなるストリングスとブラスは自分にとって好みの響き方でした。

アニメの終盤のヒロインの弱音も、当時、無職だった私の上手く言えない人生の悩みを代わりに言ってくれて、泣きました。

あっ……ずっと私はこのことに悩んでいたんだ……教えてくれてありがとうと……

まさかアニメに人生を救われるとは思わなかったです。

アニメの感動や登場人物の力強さを音楽で表現したかったのです。

だからこそ、初めての編曲はこの曲でよかったです。

思い出の曲を編曲して、合奏をしていただける経験は自分にとって貴重な経験でした。

3.効率をつかんだので、色々やってみた

初めての編曲でつかんだこと、有識者のアドバイスや数曲の編曲にチャレンジを経て、今はこういう手順で編曲作業してます。
(効率を忘れない自分のための忘備録だったりします)

作業時間は主に早朝の出社前、休日の午前中、仕事の昼休みです。
(朝は割りと精神的な無茶の範囲なので〆切厳守の編曲時ぐらいにとどめてます)

夜は作業に夢中になって、寝る時間が遅くなり生活リズムが狂って集中力が乱れるリスクがあるので、原則19時以降は作業しないようにしてます。

朝のメリットはその次の時間は仕事という絶対に時間厳守の強制予定があるので、嫌でも時間を意識して作業を進められます。

また、朝は睡眠により比較的疲れが回復しているので、集中力も割と高かったりします。

そしてそのエンジンがかかった状態なので、午前中の仕事の効率はすごくいいです(夕方になると、電池切れを起こしますが、定時に仕事を終わらす気持ちが更に強くなります)

私の編曲手順は下記の通りです。
※あくまでもアマチュアがやっていることであり、人によってはもっと効率のいい方法があるかもしれません。

①調査
隙間の時間は原曲、似た感じの曲聞きまくる
似た感じの曲の吹奏楽アレンジ、吹奏楽スコアを探す
作曲者をググる(時々ファンが音楽的な考察してる記事がある)
知っている作品でもググる
時間に余裕があれば原作に触れる
音楽を聴きながらエア楽器をやって楽しさを探す。
この作業は会社の通勤時間を活用して使ってます。

②編曲スケジュールを組む
社会人は趣味の時間が限られています。
1,2か月の間にどれだけの時間が取れそうか考えます。
(仕事や合奏頻度、隙間時間、今期の見たいアニメを踏まえたうえで)
耳コピ、打ち込み、浄書と段階ごとにいつまで終わらすか〆切をつくります。
大体、通勤で歩きながら考えています。

③耳コピ
メロディ→ベース→ドラム→コード
この順番でやってますが、耳コピは不安定なので、メロディが半音ずれて取ってることがコードとってる途中に発覚したり、コードは完成のギリギリまで、あっちいったり、こっちいったりしてます。
(こういうとき、理論の知識、絶対音感があるとぶれないんだろうなと痛感します……)

また、思い出補正たっぷりの骨の髄まで染み込んだ曲の場合だと、耳コピのスピードが大幅に上がりますw

この時点では染み込んだ曲でもコードやスケールのリファレンスサイトから手が離せません。
コードの音はピアノの音にして、管楽器でのせたい和音をのせたりしてます。
分からなくなったらググる、ググるの繰り返しです。
キリのない沼作業なので完璧は求めないことにしました。

また、最近は出先での作業の際、荷物を減らすためにiPadのキーボードアプリをダウンロードするなどして活用をしています。

④主役の楽器を決める
度々変更はありますが、ひとまずこの時点でメロディにしたい楽器をのせます。

目立たせたいのに楽器の音域的に無理(Finaleだと中級者で黄色表示)が生じたときは曲によっては移調を検討します。

この時点で作りながらやりたいことが固まります。

イメージばかりが膨らんでとっても楽しい作業です。

そしてその片隅で浄書しながらで見たいアニメを考えます。

⑤パズルのピースをはめるように打ち込む
ここまでくるともはやジグソーパズルです。
原曲の取り入れたい部分、どうすればいい感じになるか、
似た感じの曲の吹奏楽スコアとグーグル検索が欠かせません。
(ちょっと理解できたら、これはこのコードかなと察しを着けて理解できたかどうかの答え合わせの意味もあります)
また、人がいないところだと、原曲や途中までの打ち込み音源を流してエア楽器やエア指揮をしてイメージや奏者にしてほしいことを固めます。

変な響き方を発見してたり、やっぱりこうしたいと、常にあっちいったり、こっちいったりしてる段階です(終盤までやってますけどw)

理論の知識があるとこの作業もスピード感があげられるんだろうなと感じます。

⑥違和感ないかの確認
終止線までさっくり打ち込んだら、とにかく変なところがないか打ち込んだものを聴きまくります。
また、スコアを印刷してミスやこんな感じにしたい、もっと詰めたいことなどをメモします。
合奏を急ぐ場合はこの時点でベータ版して提出します。
余裕があったらレッスン依頼を検討する段階です。

⑦浄書の準備
音源はこれで完成だと思ったら、音源基準で一通り楽譜をきれいにしてます。
(発想記号やアーティキュレーションの位置を整理)
理由はこのあと、ファイルを3分割(音源用、スコア用、パート譜用)にするため、大きな修正があった時に作業を最小限にするためです。

ファイルを分ける理由はそれぞれの用途に合わせるないとレイアウトや音が納得いく感じにならないからです。
(音源に合わせると、楽譜がみづらくなったり、見やすさを優先すると音源から変な音が鳴るし、パート譜とスコアも表記がちがってたりとする現象があるんです)

なので、できる範囲で念入りに、前の工程の段階でチマチマと最初に手をつけた部分をキレイに直したり、和音の確認をします。

この時点で職人パート(ピアノ、ベース、ギター、ドラムなど奏者に委ねるパート)はスラッシュ表記にしたり、やっとほしいことを明記。
また、木管の連符の分担などを検討、金管の一部のパートが吹きっぱなしになってないか確認をします。

⑧浄書
大体2クールのアニメを見ながら作業しています。
(前から見たかったアニメをみるチャンス!)

編曲した後には人間が演奏するため、見やすい譜面にすることは大事って上記の編曲オフで痛感しました。

特に社会人楽団の合奏の時間は限られているため、貴重な合奏時間を無駄にしないためにも、ミスや見にくい部分を徹底的に減らしていきたいと思ってます。
(それでもどうしても間違える時は間違えるし、良かれと思ったことが裏目に出ることがありますが……)

⑨合奏と振り返り
一番緊張する瞬間です。
合奏を聴いて不具合やミスを発見したら適宜修正します。

できればミスが発生しないといいなー、指揮者、奏者、演奏を聞きに来てくれるお客様は喜んでくれるかなーとドキドキしちゃいます。

以上、今はだいたいこんな感じの流れで作ってます。
でもやっぱり知識があれば効率がよくなるし、編曲の精度があがるんだろうなって感じます。

有職者や編曲の小話をTwitterで見かけたり、回数を重ねたり、曲によってはまたこれからも色々変わるかもしれません。

4.変わったこと

合奏、音楽を聴くことががさらに楽しくなったのは確かです。

ですが一時期、こういう現象が起きて悩んでました。

・他の人の譜面もしっかり吹こうと意気込んだものの、譜読み間違い、吹けないと以前の何倍も凹み、演奏が辛くなる。
(ヤバい時は譜面見ただけで視界がぐらつくぐらいに気持ち悪くなりました)
・原曲好きな人に「クソ編曲」と思われてないか不安になる。
・自分の曲の合奏の時間が些細なことで神経質になる

恐らく、定期的に起こるんだろうな~
(これを乗り越えなきゃいい編曲や演奏が出来ないぜ、先に進みたいか、ここで留まりたいか選べという試練かもしれません)

落ち込んだり、不安になることが多いですが、やっぱり自分の曲が演奏される瞬間、徐々に形になっていく過程、ホールで集大成が響いていく瞬間を経験すると、編曲してよかったと思えるんです。

それに、合奏で指揮者が意図を汲み取ってくれた発言、奏者から演奏してて楽しかったよという声はとっても嬉しくて励みになります。

私は人とコミュニケーションを取るのがスゴく下手で、音楽を通して表現したいことを伝えることができてすごく嬉しかったです。

スコアって曲をつくった人に対するファンレターと個人的には思っています。

例えるなら、ヴァイオレットエヴァーガーデンの自動手記人形のように、原曲が好きな人の気持ちを汲み取って曲を作った人へ届ける手紙を代わりに書いていると思うのです。(ただ流行りに便乗して言いたかっただけ)

だからこそ、自分以外の譜面もしっかり理解した上で、しっかり演奏できるように演奏できるようにしないとと感じました。

それに練習は練習で楽器の基礎練習だったり、練習曲に触れてると、「あっこれは編曲に活用しよう」との発見があります。

だからこそ、今後も編曲を楽しんで、演奏も楽しくできるようにしたいと思いました。

最後までお目通ししていただき、ありがとうございました。

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