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好きな食べ物はなんですか?そう聞かれて気づいたこと〜一人ぼっちなんかじゃなかった、充分愛されていた〜

昨日、ランチ後の何気ない会話の中で


「好きな食べ物はなんですか?」


そう聞かれて、一瞬言葉に詰まった。


しばらく考えて、


「そうですね、なんでも食べられるし、大好物というとぱっと思いつかないけど、強いて言えば、人と食べるゴハンが好きですね」


口をついて出たこの言葉。


午後になってふと蘇ってきた記憶があった。


すでに定年している父。


現役の頃、会社から昼食補助として、オフィス近隣のレストランで使用できる食事券が支給されていた。


父はお弁当を持参するなどして、その食事券は自分のためには使用しなかった。(使うも使わないも個人の選択に任され、一律で支給されていたのだ。)


そして家族5人分の食事を賄えるくらい食事券が貯まった頃合いになると、みんなで少しだけおしゃれしして、電車で中心街にあるオフィス近くのレストランで食事した。


それは、転勤する土地土地で、行くレストランが変わっても、我が家のささやかな楽しみだった。


ある時は中華レストラン。少し変わった香辛料を使ったハマチを使った前菜サラダから夏はスイカをくり抜いた器を使ったデザートのフルーツポンチまで。


お勘定をする父を待つ間、店の入り口に飾られた水槽の中で青白いライトに照らされて、ゆらゆらと漂う観賞魚をじっと見つめる。


その時間も至福のひと時だった。


家族みんなお腹がはち切れるまでたらふく食べ、胃も心も満たされて、郊外にある社宅までみな満腹から少し前のめりになって帰宅する。


今でも兄弟たちとあの時の中華レストランの絶品料理の味を懐かしくLINEで語り合う。幸せな思い出の一つだ。


※※※


まだ存命の父は、私の知る中で、最もコミュニケーションに難ありな部類に入る人だった。


友人は一人もいない。職場で誰か同僚と飲んで帰るなんてことは、強制参加の歓送迎会以外、記憶に残る限り一度もなかった。


毎日同じ時間に出社し、毎晩22時前に帰宅し、母の作った夕飯を黙々と食べ、就寝。また翌朝出社する。


タバコも賭け事も一切やらず、身体を壊してからは酒も断ち、寄り道もせず、毎日毎日、黙々と会社に向かう。


普通のコミュニケーションも取れないので、当然万年平社員。それでも淡々と会社に通い続ける父は、子供心に苦行に耐える修行僧のようにも見えた。


父から直接聞いたことはないが、母から時々


「お父さんはね、あんたたちが産まれるまで、会社を辞めたい、辞めたいってよく言っていたのよ。でも、あんたたちが産まれてから、一度も会社辞めたいって言わなくなった」


そして


「毎晩遅くに帰宅すると、あんたたちが寝ている部屋の襖をあけて、じっとあんたたちを見ていたのよ」とも。


ランチくらいプチ贅沢として、自分だけに使っても良かったろうに、家族の分が貯まるまでコツコツ貯めて、楽しい思い出をつくってくれた。



愛されていたんだな。


※※※


一人でこじらせて、一人ぼっちだ、誰にも必要とされていない、誰からも愛されていないし、誰も愛さずに死んでいくんだと絶望していたときも、私は本当は充分愛されていた。


「好きな食べ物はなんですか?」


どんな食べ物でも、人と食べるゴハンが好きです。


それは、たくさんの楽しい思い出を作ってくれた家族がいたから。


好きな食べ物はなんですか?そう聞かれて気づいたこと〜一人ぼっちなんかじゃなかった、充分愛されていた〜


私もたくさんの楽しい思い出を家族とともにつくろうと思います。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました✨✨✨














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