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Leave Yourself Alone 『Leave Yourself Alone』 カナダ発・シューゲイズ&エモを繋ぐ2023年最後のベストニューカマー by Kent Mizushima(to'morrow music / records)

KKV Neighborhood #203 Disc Review - 2023.12.26
Leave Yourself Alone 『Leave Yourself Alone』by Kent Mizushima (to'morrow records)

Leave Yourself Alone


今年の4月からスタートしたコチラのReview企画。これまでにHeartwormsWednesdayNight TapesBeach FossilsLesssugärSlow PulpMali Velasquezと紹介してきたが、今回は年の瀬に相応しく僕が2023年、最後の最後に出会ったバンド、Leave Yourself Aloneによるデビューアルバム『Leave Yourself Alone』について紹介していきたい。

ヴァンクーヴァーを拠点に活動中のLeave Yourself AloneはRyan Stephenson、Ethan Henthorn、Ellen Kibble、Greg Wilkinsonによる5人組で、同じくヴァンクーヴァーを拠点に活動中のインディーレーベル〈Kingfisher Bluez Records〉が主催したパーティーにPeach PitやBabe Cornerといったアーティストと共に出演しているものの、メディア露出などは未だになく、まだ謎多きバンドである。しかしその未知なバンドをこうやって文章にしているくらい、彼らのデビューアルバムが素晴らしい作品だった。

本作は彼らのプロフィールに書いてある”Cinematic long-form dream-state post-shoegaze”という言葉の通り、収録曲の7/8が6分を超えた大曲で、今のシーンの流れを完全に無視した構成のアルバムであることがわかる。確かに全体を見渡すとシューゲイズのバンドではあるのだが、冒頭を飾る「Goodness Gracious」で最初に頭に浮かんだのは世界で一番美しいメロディーを奏でる大所帯エモバンド、The World Is a Beautiful Place & I Am No Longer Afraid to Dieだ。とにかく壮大でどこまでも飛んでいくようなメロディーと幾つかのヴォーカルが完璧に交わりハーモニーが生まれている。ドライブするギターや楽曲に彩りを与えているシンセのサウンドなども頼もしく、拳を握りたくなるような力強さを持っている。2023年のベストエモとあえて言いたい。

3曲目「To Know What Helps Me」はよりドリーミーな音像が目立つ楽曲で、ここでも彼らの武器にあるヴォーカルのハーモニーが輝いている。そしてMewのような音楽が好きな人にも刺さるであろう清潔感を同時に感じさせるのもLeave Yourself Aloneの特徴だろう。バンド名=アルバム名をそのまま曲のタイトルにした「Leave Yourself Alone」は8分を超える大曲中の大曲。楽曲の中でインディー、オルタナ、シューゲイズなど様々な要素を混ぜ合わせながら、バンドのコンセプト通り映画のシーンが切り替わるように楽曲の展開も変わっていき、頭の中に本当にたくさんの情景がフォトアルバムを見ているかのように描かれる。その映し出された一つひとつのピクチャーはリスナー個々のこれまで生きてきた人生とリンクすることだろう。また後半のファジーなギターサウンドが力強く鳴っているパートはオルタナファンにたまらないだろうし、彼らは美しさを激しさでも表現することができている。

6曲目に収録されている「Race Car Driver」も完璧なインディーアンセムで、蒼くて甘酸っぱさもあるエモーショナルなギターサウンドと完璧なハーモニーが宿ったサビで今作の頂点を迎え、2分30秒間のイントロの中で今作最もヘヴィーなシューゲイズを感じさせる「I am afraid I won't do anything」へと繋がっていく。ヘヴィーなシューゲイズと同時に自然の中に溶け込んだ美しいエモも混じっていて、深海と森林を同時に散歩しているかのような気分にさせられる。

ラストを飾る「All I See Is Now」まで様々なジャンルを取り入れ、何度も何度も転調し一筋縄じゃいかない音楽を鳴らしている一方で最初から最後までとにかく美しくてエモーショナルな気分にさせられるシンプルさがある。My Bloody ValentineやSlowdiveといったシューゲイズの代表的なバンドからの影響も少なからず感じるが、それが一番表に出ているわけではない。彼らに限らず、それこそが今のシューゲイズなのだろう。2023年は間違いなくシューゲイズの年だ!と勝手に1人で意気込んでいたら、最終的には「The Shoegaze Revival Hit Its Stride in 2023」という記事が〈Pitchfork〉で特集されるなど予想以上にシューゲイズな2023年だったが、最後の最後に本当に素晴らしいバンドに出会えたと思う。

Leave Yourself Alone『Leave Yourself Alone』
Release Date:2023.11.24
Label:Independent
Tracklist:
1. Goodness Gracious
2. Catch Somebody
3. To Know What Helps Me
4. Leave Yourself Alone
5. Hope in a Bottle
6. Race Car Driver
7. I am afraid I won't do anything
8. All I See Is Now

Leave Yourself Alone / Leave Yourself Alone:Streaming
Leave Yourself Alone:Instagram /

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