見上げれば、キミ ~後編~
それからというもの、僕の日常は一変し、正直夢なんてどうでもよくなっていた。
いつでも想ってくれていた彼女の気持ち、優しさ、愛を、自分勝手な理由で蹴とばし、それに気づかず、彼女をひとりにしてしまっていた。
そんな自分の不甲斐なさ、後悔。
触れることもできない、もうあの日々に戻ることはできないと解って初めて、いつしか当たり前になっていた彼女の存在が、自分にとってどれだけ大切だったかを実感したのだ。
こうして、彼女への愛は止まったまま、月日は流れていった。
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そんなある雨の日、友人から届いた1通の動画。
そこには、亡き彼女が映っていた。
『お誕生日おめでとう。』
たった一言。
弱弱しくも、僕の大好きだったあの笑顔と声で話す彼女の姿。
"僕は何をしていたんだろう・・・"
自分の誕生日すら忘れていた僕は、彼女の気持ちを何度も踏みにじっていたことに、ここでようやく気づいたのだ。
その瞬間、あれだけ降っていた雨が止み、光が差した。
僕は窓際に行き空を見上げると、そこには綺麗な虹がかかっていた。
"あぁ、まるで彼女が微笑んでくれているみたいだ・・・"
その日を境に、僕は夢を叶えるため、これまでよりもさらに奮闘する日々を送りだしたのだ。
そんな僕を支えていたのは、紛れもなく彼女だった。
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それから数年後、彼女の支えもあり、僕はようやく夢を叶えたのだ。
もちろん最初に報告するのは彼女。
数年ぶりに帰ったその日の地元は、雨が降っていた。
「久しぶりだね。実はデビューが決まったんだ。
夢を叶えるのにかなり時間がかかったけど、待たせてごめんね。
でも、キミのおかげだよ。本当にありがとう。
これからも応援しててね。」
その瞬間、これまで降っていた雨が止み、あの日と同じように、空には綺麗な虹がかかっていた。
"本当、いつも笑顔で居てくれるな・・・"
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今でも僕は、夢の続きを過ごしている。
これからも、彼女を忘れることなんてきっとない。
今でもあの笑顔を思い出し、無性に逢いたくなることがある。
だけどそれはもう、叶うことはない。
当時の僕はまだまだ子供で、自分のことしか考えていなかった。
彼女との一生の別れから、僕は取り残され、涙やため息ばかりの日々もあった。
伝えきれなかった想いもたくさんある。
だけど、彼女に出逢えたから、今の僕が居るのは紛れもない事実だ。
彼女に対する愛はこれからも変わらない。
僕の夢は、まだまだ続いていく。
楽しい時も苦しい時もどんな時でも、見上げれば、いつもそこにはキミが居る。
僕は、これからも彼女の笑顔とともに、生きていく。
完
▼前編・中編はこちら
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