井手英策「幸福の増税論」。いつか直接お話を伺いたい

読む前の私「へー消費税増税論者? なんで増税が幸福につながるのか全然?????」
読了後の私「消費税増税は非常に有効な手段である」


読む前はなんで消費税増税なのか全くわかっていなかったですが、読んで説得されてしまいました。。。非常に勉強になりました。「成長」頼み、自己責任をうたう社会がいまどんな状況になっているかを著者は客観的に示し、成長に頼らなくても幸せに暮らしていける社会を目指そう、とよびかけ、グランドデザインを描いています。なぜ消費増税かといえば、「もつべきものからもたざるものへの移転」という形態に対して生じる階層間の分断を防ぎ、「痛み分け」という形で堂々と応分の負担を求めていくべき、という議論です。

日本は「増税してよかった」「増税で税金の負担が増えたけど、こちらの部分の支出は減ったので良かった」といった、増税の成功体験がない、という指摘は、自分の気持ちに照らしても納得。消費増税の一番の壁はおそらく世論の抵抗なので、成功体験となるように、増税と目に見えて結び付く社会サービスの拡充ができると良いが、多様な生活を送っている国民のあまねく層に納得してもらえるような成功体験を用意するのは、相当難題と思われる。(3~5歳保育料無償化の恩恵も限られた層にとどまってしまう。大規模な措置には大規模な増税が必要。)

そしてこれはよく言われていることだけど、日本は、世界の他国と比べて「自分の税金は高すぎる」と思っている人がとても多い、つまり税金の恩恵を受けていると感じられていない。

私としては、要因の一つは社会保険の仕組みにあるのではないかと思う。終身雇用・正規雇用の父親が一家を支える、という昔の構図であれば「長く働いた人は”ご褒美”」として多くの年金を受け取れる、というのはそれなりに成り立っていただろう。でも現在、非正規雇用の人々などは年金受領の要件に到達できるかも怪しいし、到達したとしても非常に苦しい生活を迫られる水準の額しか受け取れない。他方で、現制度の年金には、社会保険料だけでなく、税金も相当割合組み込まれている。そうなると、残るのは税金の負担感だけである。負担と恩恵のつながりがわかりやすいはずなのにわかりにくい、この社会保険中心の年金制度は構造を大きく転換すべきではないかと思う(私見)。

増税に対して今まで自分たちが繰り広げていた言説(その前に無駄を削れ、防衛費や公共事業費はなんなんだ、信頼できない政府に税を払えない等々)に対して、第5章でされていた反論にも納得致しました。

目指すべきは、ベーシックサービス。(宮本太郎さんのうたう「ベーシックアセット」にも相当近いように感じました。自・公・共の組み合わせにより色合いが異なってくるという理解でよいでしょうか)
あとは、どうやってこの大転換を現実に行えるか、が最大の難題ですね。

民進党の政策作りに加わっていたとのことですが、ぜひまた政策作りに参画していただきたい。

そして、いつかぜひ直接お話を伺いたいです。

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