中島隆信「刑務所の経済学」を読んだ



排除するとかえってコストがかかりますよ、という観点から、失敗を赦す社会、再チャレンジを認める社会を構築していきましょうよ、と呼びかける本。結論としては、これも、優しさの本です。
逮捕、送検、懲役6月の実刑、満期出所、この流れの間、概算で130万円の税金がかかる。受刑者一人当たりの年間収容費用は300万円。他方、年間の生活保護費は単純計算でおよそ170万円。刑務所に入れてはいおしまい、ではなく、確実にかかっているコストも意識すべきだということ。

キーワードは「比較優位」。他人と比べるのではなく自分自身の能力を相対的に比べ、各人の比較優位を生かして生産活動を行う方が、全体として社会の利益は大きくなるという経済学の考え方です。比較優位の考え方からすれば、どんな人でも、排除するのではなくその人の比較優位の点を生かして社会を成立させていくほうが、社会にとってプラスです。こういうアプローチで、優しい社会を目指そうという主張、新鮮でした。

少年犯罪とともに取り上げられていたサイコパスへの主張も面白かったです。反省を求めても特に意味のないサイコパスは、それを生かせる分野で犯罪と縁なく活躍してもらいましょう、と。

応報はその存在意義かやむをえないと思うけど、社会復帰した人たちに対しては、比較優位を活かして受け入れていく社会でありたい、と思いました。

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