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派遣労働で学んだ3つのこと

 初日に働いた物流倉庫での業務は衝撃的で、今まで自分が知っていた社会はほんの一部だったのだ、と気付きました。そんな気付きや学びが、2週間ほどの限られた時間の中に実はたくさんありました。当初はスキマ時間を埋めるように稼ぐ手段として選んだ派遣労働でしたが、振り返ってみると良い経験だったなと。学びとしては大きく3つ。

 1つ目は、様々な社会が存在するということ。新卒で入ったIT業界はイチ業界に過ぎませんが、色々な業界の広報やマーケティング担当者と仕事をさせてもらい、何となくホワイトカラーの仕事とか、そこで働く人達の属性が自分の中の当たり前になっていました。

 あるスマホパーツを作っている工場に働きに行った時、一緒のフロアにはたくさんのブラジルや東南アジアから来た人たちが働いていました。業務内容はロボットがチップを検査する様子を見守ってエラーが起これば修正するというお仕事。正直、ロボットがミスる事はほとんどないので、めちゃくちゃ暇で、防塵服を来てただただ工場を練り歩く仕事でした。

 「はよ終われー」「まだ10分しか経ってないー」と感じながらも真面目なフリをしていましたが、同じフロアに居る東南アジア系の若者たちは喋りながら楽しそうにサボっています。もちろん上司から怒られていましたが、少し経つと同じ状況に。この状況で友達居たら同じこと自分もしてたろうし、異常なのは自分なのかもしれない。

 現場を離れて休憩スペースに行くと、工場内で仲良くなったであろうブラジル人カップルが昼食をとりながらイチャイチャしていた。彼らにどんな背景があるのか分からないけど、ここでの生活が全てであって、他人の目を気にせず自分たちがやりたいように生きているって感じでした。

 ロボットの見守りを人間がするというのもシュールですが、結局あの時何100台のロボットが検査していたパーツは今のスマホには搭載されていないようだし、あのデカい工場は今は他の何かを作っているのだろう。そこに紐づく社会も様々で働く人たちも様々。

 2つ目、肉体労働は連帯感を生み出すこと。小さめな物流倉庫で働いた時、仕分けするもの、運ぶものがとにかく重い。聞いてみると美容機器を専門で取り扱っている倉庫ということで、重たい精密機器ばかり。もちろん雑に扱うことは許されないので、肉体にかかる負担は大きいです。

 それに加えて、社長の機嫌によって午後の仕事の量が変わるという理不尽な現場であり、何度か経験のある人が「今日は大丈夫そうだ」と言うてた言葉が印象的でした。それでも重労働に慣れていない僕は、ヘトヘトになりながら働きます。倉庫の仕分けなので、初日に経験した現場と同様に担当を割り振られてひたすら荷物を分けていきますが、終わる時間に差し掛かってくるとさすがにキツくなってきて動きも鈍くなります。

 そこで心優しい同じ派遣で来ていたメンバーが助けてくれました。一人が手助けすると、自然と皆が手助けをしてくれて、優しさのありがたみを実感しました。それまで経験した現場では、割と皆さん協調性が無く、自分の仕事をしたらそれ以上は動かない人たちだらけだったので、久しぶりに優しさに触れた気がしました。ある意味、辛い仕事を共にすることで生まれる連帯感があったのだと思います。

 3つ目、自分の常識は通用しないということ。様々な社会の話と通じますが、今までの自分の経験はごく一部のことでしかなく、大半のことは知らないし、理解に及ばないことが多い。仕事を当たり前のように真面目にすることも、自分の中の偏った常識でした。

 複数人で共同作業をする事が何度かありましたが、最初は頑張って働いていたと思ったら、途中から突然動きが悪くなって「やりたくない」と言い出す人がいたり、隙あらばサボろうとする人も。重たいもの運ぶ時に全然力入れてないオジサン見た時は呆れ返りましたが、そういう人もいる。

 現場によっては、日当をその場で現金で渡してくれることもあります。貰ってすぐにタバコとパチンコに使い切って明日また働いてお金をゲットする生活をしている人もいたし、過去には来た時先にお金を渡したらそのまま逃げていった人もいたとのこと。

 自分が生きてきた世界は、性善説を元にしていたなと感じたのと、初日の現場で貴重品を身に着けていないと「盗られるぞ」と言われたように、自分の身は自分で守っていかなければいけません。そういった意味で自分の常識前提で行動することの恐ろしさを学びました。

 他にもネタみたいな現場や出来事もありましたが、総じて知って良かった現場が多い2週間でした。またやれと言われた気乗りはしないけど。

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