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僕の好きな小説家が
僕のかけらを指差して
僕とおんなじだと言って
僕の全てを蝕んだ

頭がイカれたフリをして
辺りの好奇な目を惹き
あたかも異能者のごとく
新しき時代の到来を説く

過去の遺志を改竄して
未来に石を投げつける

ありのままの言葉を捨て
ありとあらゆる辞書を引き
ありもしない思想を練り
ありふれた結末を添える

意味をたどれど 声はしない
浅い息継ぎだけがする

黒い鳥が舞う波打ち際
渚の果てで嘔吐した
砂に染み入る疚しさに
何処かへ消え去りたくても
引き換えに
切らせた肉を刺す
容赦ない潮風

盗んだ物を食べ過ぎて
授かった物を下した

罪と罰を問う波打ち際
渚の果てで白状した
雲を晴らすかのような月に
悔い改まる気がしても
闇と光の波打ち際
渚の果てから振り返る
砂に刻んだ書置きは
脆くも波に消え去った
引き換えに
剥がした爪を刺す
容赦ない潮風

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