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故アダム・シュレシンジャーが書いたパワーポップの名曲 ”Someone to Love" by ファウンテンズ・オブ・ウエイン

新型コロナウイルスの死者数は本日2020年7月12日時点で56万人にも達する。それぞれの死の重みには区別は無い。が、音楽界に及ぼした直接・間接の影響を考えると有名ミュージシャンの死は音楽ファンとしてはやはり残念だ。

日本でもかまやつひろし等と活躍した元アローズのアラン・メリル、名ソングライターで”Angel from Montgomery"の作者としても有名なジョン・プライン、日本でも人気のあったストラングラーズのキーボードであるデイブ・グリーンフィールド等...

その中に私自身これまで馴染みの無かったアダム・シュレシンジャーの名前があったので早速調べてみた。1967年生まれの52歳でファウンテインズ・オブ・ウエインの創設メンバー。バンド名はニュージャージーのガーデン・オーナメントの店名からつけたもの。バンドは日本にもフジロック2回、サマーソニック1回、単独が3回と頻繁に来ていたようだ。

このバンドの楽曲聴いていると、2007年に発表された”Someone to Love"が素晴らしく、最近病みつきになってしまった。ビデオクリップがあり、ほぼ歌詞そのものを再現してみているのでまずはこちらを見てほしい。

このビデオクリップのダイレクターであるアダム・ニュースタッドターはこの歌詞を見た際にすぐにビートルズのエレノア・リグビーを想起したという。同じマッケンジーという姓が使われているというだけでなく、孤独な人々に関する曲だからだ。

ファウンテインズ・オブ・ウエインには2003年に”Stacey's Mom"というキャッチーなパワーポップなヒット曲がある。当時全米9位となり、バンドはグラミーで最優秀新人部門のノミネートされている。アダム・シュレシンジャーはこの曲を80年代を代表する米ポップロックバンドであるカーズのトリビュートだと言っている。

この二曲を聴き比べると、ポップな曲調とキャッチーなメロディにコーラス、と言う意味では延長線上にあるが、歌詞の内容で大きな変化が見られる。”Stacey's Mom"の歌詞がビデオクリップにある通りティーンエイジを狙ったものだったのに対して、”Someone to Love"は大学を卒業してオフィスに働く男女を歌っている。

またこの二曲の発表の間にバンドには大きな変化があったようだ。2006年の日本へのツアー中にバンドのもう一人の中心メンバーであるクリス・コリンウッドが精神衰弱に陥り、ショーはキャンセル、緊急処理室に担ぎこまれ、帰国後しばらく精神病院で療養することになった。その余波で”Someone to Love"の収録されたアルバム”Traffic and Weather"ではコリンウッドの貢献度合いは少なく、”Someone to Love"はシュレシンジャーの手によるものである。

アダム・シュレシンジャーは自分自身のスタディオを持ち、映画やTV、ミュージカル、他のミュージシャンへの楽曲提供でも成功している。彼が提供した映画には”Ice Age:Continental Drift", "Music and Lyrics", "Shallow Hall", "Robots", "There's Something About Mary", "Fever Pitch"などがある。

またサイドプロジェクトとして全く雰囲気の異なるオルタナティブバンドのアイヴィに加えて、元スマッシュキンパンプキンズのジェームス・イハ、ハンソンのテイラー・ハンソン、元チープ・トリックのバン・E・カルロスと結成したパワーポップバンド、ティンティッド・ウンドウズがある。

ティンティッド・ウインドウズは2010年のツアー以降は活動を休止していたが、2014年に再び活動を開始する兆しもあったようだ。しかしアダム・シュレシンジャーの死によりもう再開することは無いだろう。合掌。


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