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展覧会 #08 今森光彦 にっぽんの里山@東京都写真美術館

「里山」と聞いて思い浮かぶのは、いわゆる日本の原風景と表現されるような山間部の風景です。
今森光彦氏による里山を軸とした写真は、一つ一つはそこに暮らす人々の姿や植物、生き物を撮影した自然写真ですが、展示を見ていくにつれ、徐々に里山には人間を育む存在として自然があり、それに寄り添うように人間の営みがあることが見えてきました。
それは私が今まで自然写真を見て感じたことがない感覚で、日本の自然は生き物との共生空間であるということがとても心に沁みました。

今森光彦 にっぽんの里山
会期:2024年6月20日(木)~9月29日(日)
観覧料:一般 700円 学生 560円 中高生・65歳以上 350円
東京都写真美術館
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通アクセス:
JR恵比寿駅東口より徒歩約7分
東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分

展示は春夏秋冬の四季に分かれていて、以下は私が見たもの、感じたことの覚え書きです。


― 春 ―
菜の花畑の向こうにそびえる残雪をたたえた山。
あぜ道に自生するふきのとう。
カタクリ摘みをする女性たち。
田植えを終えたばかりの田んぼの水面に映る山。
桜の淡いピンクと新緑の柔らかい緑色に染まる春の山。
可憐なリンゴの花とキジ、サクランボの花とフクロウ。
葉を食べる蛾の幼虫、きんぽうげのミツを吸うキリギリスの幼虫。
観音や地蔵の石仏と草花、鎮守の森。
春の景色では頭の中で川のせせらぎ、草木の匂い、鳥の声に耳を澄ませていました。

― 夏 ―
闇夜に浮かぶ蛍の光の群れ。
夕立を降らす雨雲。
豊作を祈る祭り。
森林の中で放牧されている牛。
菜の花畑を焼く風景。
伊勢神宮の森。
夏の景色は木々の緑が青々として、湿気を含んだ瑞々しい空気を感じます。

― 秋 ―
木々の葉は緑色が抜けて、黄色が現れ、やがてオレンジになる。
ナナカマドは赤、カエデは黄色に色づく。
棚田の縁に咲くヒガンバナ、コスモス畑、黄金色の田んぼ。
ユスリカのダンス 。蚊の群が美しく見える。
重なり合う山の尾根は水色から濃紺のグラデーションが美しい。
木漏れ日を浴びる石仏の素朴で優しい表情。
草むらにポツンと立つ祠の鳥居には綺麗に整えられたしめ縄がかけられている。

― 冬 —
木々は低い日差しを受けて雪原に長い影を落とす。
紫色からピンク、オレンジに染まる夕方の空とミズナラ林の影で青色に染まる雪原。
収穫が終わった田畑や落葉した木々の茶色い風景の中に、みかんや柿のオレンジ色が冬の実りを知らせる。
野焼きや焚き火の風景。
五穀豊穣の祈り。
エノキの巨木の前に祀られた地蔵。

秋の景色では紅葉を経て茶色がかった草木の緑と少し煙ったような空気の匂い、そして冬は冷たく澄んだ空気と濃い青のグラデーション。


写真を通して伝わってくる、季節ごとに変化する空気の「色」や「におい」がとても心地よく、日本の四季の豊かさを感じる時間を過ごしました。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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