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いくつかのショートストーリー

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さらりと読めるお話です。 超短編小説/ショートストーリー/ショートショート
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#SF

L地区の拠点にて

 「爆発音が聞こえたあと、様子を見に行ったら、皆死んでたんだ。」
 憔悴している様子で男は訴える。
 「いや、嘘だ。爆発音なんかしていない。俺が見に行ったら、コイツが死体のそばに居た。」
 小部屋の真ん中に置かれた机の前で、キリエ達は黙って話を聞いていた。事故について聴き取りをするためだった。
 「違う! 俺はコイツと一緒に死体を見つけたんだ。爆発音は一緒に聞いたはずだ!」

 「分かった。汚染が

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記憶を消してくれる薬

 「黒歴史や恥ずかしい出来事を思い出して叫びたくなることってありませんか?」そんなふざけた広告に釣られてオンラインで買ってしまった。
 そう、巷で流行っている、記憶を消してくれる薬「オブリビオン錠剤」である。
 朝、郵便受けに取りに行くと、さっそく薬が届いていた。
 私は開封して中の説明書に目を通した。それによると、自動的に脳の悪い記憶をターゲティングして消してくれるらしい。ただ、効果が現れるまで

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寿命が尽きる直前、神様によって一日だけ若き日に戻された男の話

 男は目覚めた。直前まで病院のベッドの上で臨終するところだったのに。

 先程まで穏やかな眠気に包まれていたはずだった。だが今はその眠気が消え去り、息苦しさや胸の窮屈さまでもが露ほども感じられなくなっていた。体が別のものに変わったような感覚が男にはあった。

 「(死後の世界なのだろうか。)」

 男の視界に映る景色は病院の天井ではない。耳から入る雑音も病院の音ではない。しかし死後の世界でもなかっ

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全自動統治

「国民総不労。
国民は不労を憲法で保証されています。
"向こう側"では未だに市民が働いていますが、この国では多くの作業は人工知能を持った機械に任せています。
こう言うと、人間の手が必要な整備などの仕事は誰がしているのかと疑問に思うでしょうが、そういった労働に当たる行為は受刑者の懲役になります。
新しい設備の開発や製造も機械自身が自立してやっていますからね。

いやはや、"向こう側"は遅れていますよ

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