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かなん。

四条通りが歩行者天国になって
いつも見るよりもだだっ広く感じるのか、自分がドキドキしすぎて小さくなっちゃったのか。
あたしは人混みに巻かれたように見せて
つないだ左手をほどいて。

前向いて歩きつつ、長刀鉾のすぐ横でいつもの制服で警備にあたってるあの人のほうへ寄って行った。

鉾の方を向いて後ろに手を組んで立ってるあの人に近づくにつれて心臓はここにあったのかって解るほど鋭く血液を送り出していた。

雑踏の音、鉦、笛、太鼓、掛け声がフェイドアウトしていく。

通り過ぎ際あの人の手のひらを人差し指でサラッとこすってみたけど、あたしは無責任にも振り返って見れやしない。

左手がまた重ね合わせられたところで、やっと振り向くと。

いつも会社の受付で顔を合わせるときとおんなじ、眉をハの字に曲げて左の頬だけが上がる「ほんま、かなんなぁ」と言いたげな表情でこっち見てた。

かなんなぁ、は
あたしの方なんやけどな。

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