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約束のネバーランド

  Aloha  from

   ケタ上げB2B

~Marketing  B2B Surfin' 23 ~

 by Surfrider

wave # 6:約束のネバーランド

こんにちは! 阪本啓一(JOYWOW)です。

前号wave#5 のテーマは「マーケティング・ビジョン」でした。

ただここで一つ気をつけておきたいのは、「ビジョン」はややもすると企業視点の「かくありたい」という思いになりがちという点です。

しかし、顧客は、企業が何を約束してくれるのかを知りたい。
これを、ブランド・プロミスといいます。

ブランドの約束。

製品・サービスは、時の流れを経て、変化します。

街の一等地にどんな店舗があるかを観察しつづければ、時代の変化と、「いまは何が求められているか」が見えてきます。

かつては銀行でした。

やがてその一等地はケータイショップに置換されました。

いま、ケータイショップはどんどん消えています。

後には「PCR検査」が入ってます。

製品・サービスが変化しても、変わらぬものは、企業が顧客に提供する約束です。製品・サービスは約束を実現するための手段に過ぎない。

言い換えると、「製品・サービスによって、顧客が受け取るベネフィットは何なのか」。

阪本が翻訳した『The Brand Mindset』(『ブランド・マインドセット』デューン E. ナップ)に興味深いエピソードがあるので、引用します。

ここで、約束を開発しようとしている架空の保険会社「ハードライン保険」の事例を見てみよう。ハードライン社は、保険販売というビジネスに従事していることはわかっている。そして、顧客が第一に望んでいることは、実は「自分の健康についての不安と健康維持のためにかかる費用を減らしたい」ということだと気づいた。

そこで、自社のビジネスを、次のように再定義した。

「人々の生活の質をケアすること。彼らが健康で、ハッピーと感じるようにすること」。

さらに、社名まで変えた。「フレンドリーヘルス」。

一方、社内で議論がなされた。そこでわかった事実は、

・顧客が助けを求めて電話しても、たいてい長く待たされる

・会社の財務上の目標は、顧客がベネフィットを受けられることから、かなり違うところで達成される

・顧客や医師に保険金が支払われるまでの平均日数は、100日である

この架空の保険会社は、日常業務をガラリと革命的に変えることができないのであれば、自分が一体何のビジネスをやっているのか、ということを考え直さなければならない。

決して、社名を変えればいいというものではない。

『ブランド・マインドセット』デューン E. ナップ, 阪本訳

保険会社の存在意義は「保険をたくさん売る」ではないんですね。

「自分の健康についての不安と健康維持のためにかかる費用を減らしたい」という顧客へのサポートなんです。

保険という商品は、そのためにある。

製造業の人と話していて、(時に営業担当者ですら!)驚くのは、その「工場視点」の強さです。

「いまはA工場が忙しいのですが、できれば拠点3つとも同量の注文が入れば助かるんですけどね・・・」

ここに、「顧客視点」はありません。プロミスの「プ」の字もない。

では製品主導なのかというと、実はそうでもなく、ウェブサイトそのものがなかったりします。あってもよくわからないイメージ動画だけで、どんな製品があって、どんなスペックで、どういう用途によく使われているのか、といった必要最低限の情報すら、探せない。

それら製品によって、社会にどんなプロミスを果たそうとしているのか、ゼロ。

日本のB2B企業がザ・昭和なままなのは、こういうところからも見えます。

EXPO'70大阪万博がまだ終わってないんです。

『遅れる万博の会場整備 海外パビリオンの建設申請ゼロ、その背景は』
7/12(水)  毎日新聞WEB記事より引用

2025年大阪・関西万博の会場整備が遅れている。開幕まで2年を切る中、海外の国・地域が自前で出展するパビリオンの建設に必要な申請が12日現在、大阪市に一件も出されていないのだ。
背景には人材不足や資材の高騰などで、国内の建設業者との契約が進んでいない現状がある。
国は外交ルートを通じて対象国にデザインの簡素化や予算の増額を要請、建設業界には協力を依頼した。万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)もスピードアップを図るため、対象国に建設の代行を打診するなど異例の事態となっている。

毎日新聞web版2023.7.12記事

ひょっとすると、日本企業のマインドが「EXPO'70大阪万博以来変わってないから」が本当の進まない理由なのかもしれません(笑)

*この記事はまぐまぐで配信しているメルマガ『ケタ上げB2B』wave # 6:約束のネバーランドと同じです。

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さて、noteオリジナルのおまけエピローグを。

神戸・三宮のイタリアンレストラン「ピノッキオ」。

ここは1962年開店以来のピザ累計枚数をナンバリングした小さなカードが添えられ出てきます。

2011年4月の写真なので、現在はもっと枚数増えてるはず

子どもの頃、母に連れられて行ったのが最初。何かいいこと、たとえば、飛び箱が一段高く飛べるようになったとか、25メートル泳げるようになったとか、あったら、お祝いに連れて行ってくれた。嬉しい。

高校時代、当時つきあってたガールフレンドとも行った。

母は、もう、いない。

ガールフレンド、いまはもういいおばさんだろう。ひょっとするとお孫さんが産まれておばあさんになってるかもしれない。でも、ぼくの中では、ピザを美味しそうにほおばるポニーテイルのままだ。のびたチーズに奮闘するさまが可愛かった。

ピノッキオは、美味しいピザを提供してくれるお店だけど、もう一つ、「お客さんの中に生き続ける物語、記憶、思い出」を記録し提供してくれる。

これも、ブランドの約束だと思います。ブランドがどこにあるかというと、お客さんの脳内なんだよね。これ、ブランドの本質です。商品やお店や工場には、ブランドは存在しない。あくまでお客さんの脳内。ならば、どんなかたちで脳内に残るか。

今日もお読みくださいまして、ありがとうございました!

今日が皆さんにとって最高にJOY+WOW+LOVE and FUNな一日になりますことを。

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