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「うちはエネルギー交流の仕組みがあるのだろうか?」

成果は組織の外にしかないのだが、そもそも成果の定義が難しい。仕事は、成果を出すためにやるものであり、そうなると、仕事の定義は成果の定義の関数ということになる。ドラッカーは言う(阪本訳)。

「効率を上げる」のと「正しいことをする」というのは、実は無関係なのである。「こうすれば効率が上がりますよ」という先に、組織が求める「正しい仕事の成果」は、ない。数ある「やるべきこと」の優先順位をつけよう。一つしかできないとするなら、どこに集中するべきか。
Managing the Nonprofit Organization, p.198

いま、多くの企業の陥っている過ちがここで、たとえばコンビニやスーパー、ドラッグストアのセルフレジ。あれは顧客の便利を増やすためではなく、自分ちの経費削減のためである。ついさっき銀行へ行ったが(特に社名は伏せるが三菱UFJ銀行)、合計15あるATMのうち、左半分7台から器械がなくなっていた。なので長蛇の列である。顧客の不便を増やし、自分の効率を上げている。そして収益も上げている。これら企業は「正しい仕事の成果」を定義することなく、「効率の向上」しか見ていない。いずれバチが当たるに違いないぜワトソンくん。

顔が自分のためにあるのではなく、相手のためにあるように、商いというものは商人(自分)のためにあるのではない。商いは顧客があってはじめて存在を許される。顧客と商人とのエネルギーの交流が商いであり、言い換えるとそれはコミュニケーションだ。

セルフレジも、ATMも、コミュニケーションを断っている。多くの企業の「顧客コミュニケーション」はエネルギー交流なんてハナから考えてない。

大きな企業はヨコに置いておこう。小さな企業、個人の場合はどうか。「ネットでバズると売れるかもしれない」と、バズる広報が人気だ。でもこれはかなり乱暴で幼稚な議論であり、そもそも知名度がどれだけあれば良いのかという理論的基準を踏まえてない。
理論的基準といえば、コンサルタント歴30年の森行生大先輩の著作にちゃんと書いてある。

森さんのコンサルティング歴30年の厚みが満載

知名度は60%が合格ラインだ。逆に、それ以上獲得しようとしてもむしろ今度は広告コストが無駄になる。かつ、同じコストを投資したとしても、知名度の上がり方が変わってくる。知名度40%から60%まで上がるカーブは急だが、60を超えると緩やかになる。投資とリターンの率が変わるのだ。そして、ネットバズが実際の購入へとどれだけつながるのか。購入はいいがその後の繰り返し購入につながるブランドへの親しみを生み出せたのか。それぞれ別の成果測定である。ここは丁寧に設計しなければならない。

そして森さんが指摘しているように、そもそもネットは「メッセージ伝達力が弱い」「ターゲットとなる視聴者の質の問題がある」。詳しくは省くが、単にネットニュースで話題になったからと言ってそれを成果としてはいけないのだ。しかも小さい企業、個人にとって、継続的な広告コスト負担は現実的ではない。一方向だしね。

顧客と商人とのエネルギーの交流が商い。双方向なんだ。だから、跳ね返らせるものデザイン(トライアングル・コミュニケーション)に創意工夫するとか、コミュニケーション・デザインが鍵になる。

商人(あきんど)はコミュニケーター。商品を売る人ではない。まずそこを、しっかり認識しよう。次の問い。

「うちはエネルギー交流の仕組みがあるのだろうか?」

昨日の夕景。面白い空が撮れたよ

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