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なぜサスティナビリティ推進活動は頓挫するか? 担当者から聞いたことで見えてきた組織のいかんともしがたい構造の話

5月25日(土)にサスティナブルコミュニティ、通称、サスコミュさんの3周年記念イベントに参加させてもらってきました。イベントページがこちら。

なぜかイベントページのリンクを貼ろうとするとイベントページのではなく、イベントのサービスページのサムネイルが出てしまうので、運営元のリンクも貼っておきます。


当日の様子

当日は、企業のサスティナブル担当(誰もが知るような大きな組織の方もたくさんいらっしゃいました)や、saasの提供者、メディア関連の方、大学生や大学院生、投資家、そして私のような組織向けの教育コンサル的な方などがいました。おそらく100名近い方々が参加されていたのではないかと思います。

主催者の方曰く、「想像以上の方が来てくれてここまで会場が狭く感じられてしまうとは思いませんでした。すみません。」と言った話をされていました。

コンテンツとしては、
・サスティナビリティ関連の事業のピッチ
・参加者交流会
・サスティナビリティ推進室で奮闘されている方々のお話
・参加者交流会(スポンサー提供のクラフトビールや飲むお酢などを楽しみながら)

という形式でした。全部で4時間くらい。非常に熱量の高い場で、司会者から「そろそろ皆さん席についてください」というアナウンスがあっても全然みんな座らない、みたいな状態でした笑

私が参加した理由

交流会で、皆さんどういう背景で参加をしようと思ったのですがと聞かれたので、私はこんな話をしました。

「一言で言うと、人材開発、組織開発のコンサルティングをしています。

サスティナビリティで言えば、多くのステークホルダーがいるわけですが、一般生活者、消費者、企業の従業員、管理職、経営層、サスティナビリティ推進室、投資家、などと分けていくと、私の仕事は、企業の経営者やサスティナビリティ推進室の方から依頼されて、従業員や管理職の方々に、このテーマについての理解を深め、実践をしてもらう支援をするのが仕事です。

また時には、あまりよくわかってない経営層に話をするケースもあります。その際にこの領域は、まだ始まったばかりということもあり、私自身があんまりわかっていないということが頻繁に起こっていくため、ちゃんと勉強をしようとこの会に参加しにきました。

同時に、今した話は仕事の話ですが、一人の個人としても軽井沢の森の中で生活していて、日々、気候変動や生物多様性を実感しながら生活しています。消費者としても、この領域についてちゃんと考えたいなということも思っています」

という形でしょうか。この話をすると、みなさん、どこも、従業員を中心に社内の浸透活動には頭を悩ませている様子で、もう少し話を聞かせてくださいみたいな感じになりました。

今回見えてきた企業内のサスティナビリティで頻繁にみられる課題

そんな形で、いろいろな方の話を聞かせてもらいながら、私なりに段々と見えてきたものがあるので、今回はそれについて書いてみようと思います。

サスティナビリティ推進活動をしようとすると、こういうパターンが生まれるのではないかという話です。

あくまでもこれは私が持っている仮説なので、間違っている可能性もあります。ツッコミ大歓迎。

1、社会的な潮流から、投資家から企業に圧がかかる。

経営側からすると、数多ある会社の中からいかほど投資をするかどうか、はたまたしないかを吟味している投資家から「御社のサスティナビリティへの活動の状況はどのようなものですか?」と聞かれてしまったら、それはもう対応するしかありません。

2、経営者は、何かしら対応しないといけないため、必ずしも自分がよくわかっているわけではないなかで、サスティナビリティ推進室や、担当をおき、仕事を任せる。

もちろんわかっている方や、これを機会に勉強する方もいらっしゃいますが、経営者は経営者で日々、起こるさまざまな課題と向き合いながら経営判断を起こっており、サスティナビリティ推進以外にも対応しなければいけないものも多いものです。

環境の問題は、これはこれでとんでもなく重要ではあるわけですが、重要ではありつつ、緊急性という観点からいうと、社内の課題をずらっーと並べた時に、緊急性としてはどうしても優先順位が下がってしまうことがあります。

それ以上に、売り上げをいかに上げるかとか、人員数をどう確保するか、優秀な人材をいかに確保し、また離職を止めるか、そのためにエンゲージメントをどう高めるかとか、どこどこで起こっているトラブルをどう消化するか、とかを考えないといけなかったりします。

そんな中で、この活動の理解に十分な時間や認知力を捻出するのは難しいものです。(私がこの立場の担当になったら、できないというのも、非常によくわかります。。。)

当然、動き始める段階では、よくわかっていないまま進めざるを得なかったりするので、戦略も予算もどうしていいのかわからず、とりあえず、担当を置くということで始まります。

その際、この段階ではコスト部門としか見えないため、できるだけ人にも予算にもリソースは割かない状態でプロジェクトが動き出します。

ただ、対外的にここら辺は宣言しないとだめだよねという目標だけはそれとなく置かれます。

3、サスティナビリティ担当は、あんまりよくわかっているわけではないなかで、言われた以上仕方がないから仕事に取り組む。

その際、きちんとリソースが配分されているわけではないことも多く、時には現業を持ち込んだ形で、純粋に追加の業務としてサスティナビリティ推進の兼務が始まります。

本来的には、この段階で、サスティナビリティ担当が、いろいろと調べて計画をし、本当に設定するべき目標の水準とそれを可能とするための予算を設定して、経営層に提案し、実行し、以降PDCAを回すという流れを生み出す必要があるわけですが、関心的にも、能力的にも、また兼業であるが故に、そこまでも対応している余裕もなく、ずるずると時間がすぎてっいったりします。

本来的には、推進事業の立ち上げ、戦略の立案から、実行までをしっかりと回せるくらいの体制を組んで始めるべきであるのは間違いないないのですが。

これができる人というのは、それなりに優秀な人が、集中してやらないとできないレベルだったりもします。

結局、こういったレベルで仕事ができる人というのは、どこにいても仕事ができてしまうため、なかなか中長期での活動であり、直接利益に結びつくわけではない業務にアサインするのは難しいということが起こります。

4、外部からコンサルやシステム等のベンダーが出現する

自分がよくわかっていない以上、外部の力を頼っていくことになります。その際、コンサルやベンダーに問い合わせをして、あれやこれやとサービス内容を聞いていくと、一見どれもが良さそうな気がしてきます。

ただ、担当レベルに本当のリテラシーも勉強している余裕もないため、どれがいいのか、悪いのか、自社に必要なのは本当のところ、どれなのかの判断をつけるのがとても困難です。

とりあえず、◯ヶ月後に経営層に活動状況の報告をしなければいけなかったりするので、いったん、情報を収集したものを、それっぽい形にまとめ、提言するわけですが、経営側からのさまざまな観点からのツッコミにどこかで応えらなくなり、やり直しをくらうことになります。

5、担当レベルが最も信頼できそうなベンダーに再度連絡がいき、ベンダーが説得するための資料を頑張って作る(この段階では無料での作業)

ベンダーサイドからすると、本来は、こんなにも会社の状況、懸念に沿った資料作成に向けての稼働は、失注リスクを考えると、動きたくないというのが正直なところで。

できれば、発注後にしてもらえないだろうかと思いつつ、ここで動かない限り、売り上げが立たないし、目の前にいる担当者がだんだんと気の毒に思えてきて「もう仕方がないからいいですよ」という気持ちにもなってきて、頑張って社内説得用の資料作りに取り組むことになります。

この作業が一発で済むならまだいいのですが、企業の慎重度合いによっては、複数回のやり直しが命ぜられることになり、ベンダーによっては、辞退が始まります。

6、以降は、企業の担当や、経営、ベンダーがどこまで折れながら、自分が稼働するかの勝負

この段階でプロジェクトの頓挫が見えてくるわけですが、経営側からしても、他で売り上げを立てるのが難しい弱小ベンダー側からしても、完全な頓挫もそれはそれで困ることになるため、(企業の担当はこれで自分の給料がなくなることはないため、頓挫が受け入れられることも多い)どちらかが、どこかしらで折れ、その人が追加でがんばることになります。

7、プロジェクトの浸透段階に入った後、社員の大半は誰も自分ごと化していないままの一部の担当だけが対外的にアピールをする

・プロジェクトの立ち上がり度合いの程度にもよりますが、必ず、どこかで社内への浸透、啓蒙のフェーズがやってきます。(私の専門領域はここ)

この場合、社員の「自分ごと化」がポイントになってきます(本当はここのポイントだけを記事に書きたい気持ちなんですが、上記の文章を書かないとここの仕事ができない苦笑)

その際に起こるのが、KPIは既存のまま何も変わらないということです。

結局、どれだけサスティナビリティを意識した事業を行おうにも、職場が生まれる課題の大半が、今週、今月、今期の目標の達成状況だけしかないと、どれだけサスティナビリティを意識しようと担当が声を荒げたところで、現場への浸透はしようもないというのが現実でしょう。

本当の意味で浸透をねらい、自分ごと化を進めたいのであれば、以下のステップは必須ではないかなと思います。

0、企業としての戦略や意識ポイントを通達する
1、各従業員が、戦略をもとに、このテーマの重要性を自分の価値観を通して見つめる。
2、それを業務の目標数字や行動計画に落とし込む。
3、その落とし込まれた目標や行動計画を上司と確認する。上司は目標の状況を確認する際に、数字の達成度合いとともに、本人の「自分ごと」の状況も確認する
4、その自分ごと化しようとしている数字やアクションの達成度も昇格や昇給の評価に多少なりとも要素として組み込む。制度にまでは落とせなくても、せめて上司やチーム内で言葉での承認をしっかりとする。

これはパーパスでもそうですが、新しい取り組みをしようとすると、少なくとも上記の5つのプロセスがないと動き出しを期待するのは、非常に難しいわけですが、多くの現場で行っているのは、0の上からの通達のみで、それだけを行っている中で、「自分ごと化されない」と嘆いていたりする為、私からすると、そりゃ自分ごと化されるわけないんじゃないかなーという気持ちで、見ています。

小学校から大人までの教育活動に従事してきている私が持つイメージで言えば、6歳くらいの子供に「今晩の夕食はカレーだからカレーを食べられるようにしておいてね」という指示を出しているのと同じような感じに思えてきます。


上記の流れから私が思うこと

私が普段一緒に仕事をするカウンターパートは、サスティナビリティ推進室というよりは、新規事業開発、パーパス浸透活動、エンゲージメント向上担当、DE&I担当、女性活躍推進担当、といった人事に近い施策が多いため、サスティナビリティ担当者の方々と話をする機会はまだそれほど多くはなかったのですが、話を聞いてみて、この話は、ここ1年くらいで私が聞いてきた上記のプロジェクトで起こったこととほぼ相似形にあるなということを思い、上記のようなイメージが非常にありありと浮かんできました苦笑

もはや昨日の担当者さんとの話で、ここ数年に見てきた景色のミッシングパーツが埋まり、すべてがつながった感すらあります苦笑

これ、乱暴かもしれませんが、結局、企業経営に求められることの水準と範囲とスピードが猛烈な勢いで上がっている中で、人間の認知能力や処理速度、またこれまでにもっていた社内の意思決定システムがそれについていくのが難しいということでまとめられるような気もしてきまして。

日頃、人材開発、組織開発領域で仕事をし、いろいろな方々の話を聞かせてもらっててきた人間からすると、これでうまくいかせるのはちょっと無理ゲーなのではないかというように感じます。

もし、この後、可能とする流れがあるとすれば、我々は上記の構造の中にあるという共通の認識を前提として、さまざまな施策を立てるようにするというところでしょうか。

具体的に言えば、経営は、多少の利益率の圧迫はあるかもしれないが、十分な人的、金銭的、時間的なリソースを担当者に渡して上げるということに尽きるのかもしれません。

以上、いろいろな領域で、組織の担当者さんや現場の社員の悩みを聞かせていただている人材開発、組織開発の実践者からの、また、地球に住む一人の人間からの申し送り送り事項ということで。

今日も素晴らしい学びの機会をどうもありがとうございました。

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