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寿司職人VSデーモンコア

 重たげな扉が開き、調理服姿の寿司職人が姿を表した。対峙するはデーモン・コア。鈍色の放射性物質 。中央で横一文字に分かたれたベリリウム球の中に、邪悪な真珠、あるいはワサビのように潜み居る。

 ベリリウムの上の半球と下の半球が一部の隙もなく合わさった時、それは破滅的な反応を起こし、周囲の生命に速やかな死をもたらす。職人の使命は、この半球同士を限界まで近づけること。その際使うのは十本の指のみ。つまり半球はネタにしてシャリ、彼が握るのはサーモンならぬデーモン・スシというわけだ。

「困るよ」一月前、その男は『カーティス・スシ』のカウンターに深々と頭を下げた。「頼む。あんたのその”握り”が要るんだ」着古した白衣に生気のない瞳。男の様子に只事でないのが見て取れた。職人はやれやれ、とかぶりを振る。「まだ注文も聞いてない」この老いぼれに何を握れっていうんだ。

「未来を」男は顔を上げた。

「その手に握ってくれ」

【Play ball……!】

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