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『いびつな無垢』







先日、小学校6年生同士で93万円のトラブルが起きたニュースを観た。
預金額を自慢気に話していた児童に、水族館の記念メダルを純金製と偽り「のちに価値が上がるから」など、言葉巧みに未来への価値を期待させたそうだ。

偽りの価値はそこらじゅうで生まれている。そして、気付かない人もいる。

数か月前、催眠商法として名の知れたお店が近所にオープンした。
開店初日から3日間は破格でパンやコーヒーをばらまき、ゆるやかなペースでターゲットを高齢者に絞り込み、謎の健康器具や一か月分で十何万円のサプリメントの販売をしている会社だった。
今でもたまに通りがかると、黄緑色のカッティングシートに覆われた窓の隙間から、高齢者が嬉しそうにパイプ椅子に座っている様子が窺える。

世の中には気付かない幸福が存在している。

小学6年生というと、大人になったと思い込みたい一方で、子どもでいたいし僕らは子どもなんですと主張をしているような、無垢のいびつさを感じる。

狭い世界の中で、彼らは自身で繕えるせいいっぱいの価値を探す。
よく知らない未来に、目を輝かせている。

その瞬間はとても幸せで浅はかで、時折美しい。


2024年 14.5×10cm 紙、鉛筆


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