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【アニメ】平家物語第11話(終)「諸行無常」感想とか解説とか
いよいよ最終回の記事となりました。
これまでの感想記事は下記よりどうぞ!
屋島の戦いで敗れた平家は最後の拠点である長門国彦島へ移る。
屋島と彦島の2点を押さえることで平家は瀬戸内海の制海権を握ることができたのであり、屋島の失陥によって平家は海上における優位すらも失うことになる。
攻め寄せる源氏の軍勢と彦島を出撃した平家の軍勢は関門海峡壇ノ浦で激突する。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75016420/picture_pc_c0fc99d9e0c68cfc98634e1d66610882.jpg)
寿永4年(1185)3月24日、壇ノ浦の戦い。
この戦いについて書くことは特にない。
「なぜ平家は負けたのか?」という問いはナンセンスだろう。
立て続けの敗戦で平家は消耗し、最早源氏に打撃を与えられるだけの戦力は残っていなかったと理解すべきだ。
『吾妻鑑』では源氏800艘、平家500艘、『平家物語』では源氏3000艘、平家1000艘と両軍の構成は記述されており、これまでの海上戦力の数的優位も平家は失っていた。
なので戦略や戦術に語るべき点はない。
勝敗は戦う前に決しており、源氏にとってこの戦いは残敵追討でしかなかった。
なお、潮の流れの変化によって平家優位の戦況が源氏優位となり、そのまま勝敗が決したという説を戦前の歴史学者・黒板勝美が唱え、長く定説となっていたが、現在は左右するような早い潮流は関門海峡で見られないことがデータで示されており、船舶工学者からはそもそも潮流は合戦に影響しないという意見も出ている。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75024095/picture_pc_aa17052c39486f0922865e1d88d63567.jpg)
海戦シーンは迫力あり。クライマックスに相応しい映像クオリティであった。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75024830/picture_pc_a31163eac0ca332e6d5bd265cb182a93.jpg)
義経のいわゆる「八艘飛び」は本作では描かれず。『平家物語』における「八艘飛び」は義経を道連れとするべく飛び掛かる平教経から身をかわす場面で見られるのだが、このアニメでは平教経が登場しないのでまとめて省略。
なお、義経が船の漕ぎ手を狙って矢を射ることを命じたという話は有名で本作でも見られる場面であるが、実はこれは安徳天皇が入水してからの話であり、勝敗の決定打となったわけではない。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75025960/picture_pc_019e010e6547fd8f3a33b55f8e0a3b36.jpg)
勝敗は決し、安徳天皇を連れて「極楽」への旅路に付くことを決める平家一門。びわはためらいつつもこれを止めない。びわは自身の役割を「見届ける」ことなのだと定義している。
琵琶を弾きつつ安徳天皇が祖母・時子に抱かれて壇ノ浦の海に消えるのを見届ける。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75026832/picture_pc_c72a686e9e8ec71cf8fabf1c13145d24.jpg)
しかし、徳子にだけは手を差し伸べる。
先が見える特殊な目を持つびわは徳子にだけは先があることを知っているから。
そして、自身と同じく、徳子には死んでいった者たちのために成すべき役割があることも知っている。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75040995/picture_pc_63c728f23eae9ab9a87d9543e9d260a8.jpg)
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75040998/picture_pc_b472a329979c849d55f28409ca95ef00.jpg)
軍事面での平家のトップ・平知盛は安徳天皇の入水を見届けると、「見るべきものはすべて見た」と語る。
同時にびわの目の色が薄れていき、母親同様に視力が失われていくことが示唆される。
原典『平家物語』においても知盛の「見るべき程のことは見つ」は名セリフであり、これによって約5年の源平の戦いは幕を下ろす。
知盛ら平家の武士たちは次々と壇ノ浦に身を投げる。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75041125/picture_pc_46720263695f7250d26e55cbf2fea970.jpg)
びわが最後に見たのは平家の赤旗。
平家が滅び、『平家物語』を語り継ぐ盲目の琵琶法師が誕生する。
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75169673/picture_pc_a7d38ce4a97e9f312ebaba9b0cf8181e.jpg)
出家して京都・大原で静かに暮らす徳子をお忍びで訪ねる後白河院。
『平家物語』の最後を締めくくる「灌頂巻」の話。
徳子の没年には諸説ある。
建久2年(1191)とも建保元年(1214)年とも。
詳しいことは伝わっていないが、アニメのとおり静かに安徳天皇と平家一門のために祈る晩年であっただろう。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75170534/picture_pc_9c5410854dbbb895f9e0831a4670847b.jpg)
最後に平資盛らしき人物が少しだけ描かれる。
資盛には奄美群島に落ち延びたという伝承がある。
生きているといいなと思わせる魅力が本作の資盛にはあった。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75171586/picture_pc_e0446f8e62668c4468a9173ce6082c9a.jpg)
びわが語り継いだ物語は今日まで続く。
「祇園精舎の鐘の声」
日本人誰もが知るこのフレーズとともに。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75171937/picture_pc_48672c6c82908b747ec258af4ca48eda.jpg)
ラストシーンはアゲハ蝶。
第1話冒頭もアゲハ蝶だったのでアゲハに始まり、アゲハに終わる。
アゲハ蝶が平家の家紋であることは第1話記事でも書いた通り。
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75172260/picture_pc_31ff7e7fc8de8b03426007d92adaf0af.jpg)
アニメ『平家物語』完結。
予想以上のクオリティでした。素晴らしい作品。
放送前にあまり期待していなかった自分をぶん殴りたい。
つくりあげてくださった方々に心から感謝したい。
びわというオリジナルキャラクターの主人公を雑音にすることなく、登場させるその意味をしっかり描き切ったことはお見事。
勿論、長編である『平家物語』を全11話のアニメにすることは簡単ではなく、削られた話や登場しない人物も数多いわけだが、しっかりと『平家物語』だった。
『平家物語』は「語られる」という性質もあってバリエーションも数多い。『平家物語』は自由なんですよね。
だからオリジナルキャラクターのびわがいてもいい。歴史学の最新の研究成果を反映してもいいし、反映しなくてもいい。原典の『平家物語』と相違があってもいい。全11話に構成されたっていい。
「ブレない何か」があるから、多くのバリエーションに分かれても800年語り継がれてきたんですよ。
アニメ『平家物語』はその「何か」を「祈り」なんだと提示したんだと思いますが、それが正解かどうかは各自で様々な『平家物語』に触れて考えましょう。
昨年、シリーズで書いた「いざ鎌倉」の最後の記事の中で次のように書きました。
この「いざ鎌倉」のエピソードゼロとなる平家政権と源平合戦の解説もいつか文章にしたい気もしますので、平家一門と木曾義仲についてはその時に存分に書きたいと思います。いつの話になるかわかりませんが。
『平家物語』の解説記事はいずれ書きたいと思っていましたが、まだまだ勉強不足で数年先のことを想定してました。
しかし、アニメが面白かったので我慢できずに結局、書いちゃいましたね。
でも原典の『平家物語』の解説記事として完全版はいつかちゃんと書きたい。
こんどこそ本当に「いつの話になるかわかりません」が。
しばらくnoteは「鎌倉殿の13人」の感想記事が中心になります。
雑誌『宗教問題』の連載記事の補足も書きたいんですが、なかなか時間が……
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