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朗読第5回「糸を紡ぐグレートヒェン~ゲーテによせて」

https://www.youtube.com/watch?v=N9GqYa5sqXY


正直、戯曲を読む、のは苦手です。だから演劇とか朗読は自分がやるものではなく、見たり聞いたりするものだと思っていました。歌は大好きなのでセリフがメロディーに乗っかっているものーミュージカルとかオペラとか、簡単な歌舞伎とか文楽などーは受け入れているので、シェークスピア作品は映画とオペラとかで知ることのほうが多いです。文字になったものをきちんと読むことの重要さは大人になってから後悔するほど分かるものでした。現在私の甥や姪も古文は漫画で「読んだ事あるよ」と大きな顔をして言いますね。人のことは言えない私です。

そして今回は、私が師事している朗読の先生、草間先生からご提案いただきましたシューベルト作曲「糸を紡ぐグレートヒェン」の朗読です。

ご存知の方も多いので、いまさら説明などおこがましいのですが、この曲は歌詞がゲーテの戯曲「ファウスト」から、ヒロインのマルガレーテの台詞にメロディーがついたものです。なので、この曲を正面から理解しようと思うとこの「ファウスト」という戯曲の物語について知っておいたほうがいいということになります。

超簡単に説明します(笑)なので間違っている部分があるかもしれない。ご指摘お待ちしています。

年老いた学者ファウスト博士は、どんな学問を究めつくしても結局真理は分からないという苦しみを味わっていました。そこへメフィストフェレスという名の悪魔が尋ねてきて、ファウストにこう、申し出ます

「あなたが生きている間は私があなたの奴隷となって働きます。その代わりあなたが死んだらこの私の奴隷になりませんか」

ファウストは、悪魔とこの契約を結び…悪魔の魔力でもって20代の青年へと若返ります。研究や勉学ばかりで青春を過ごしてきたファウストは、研究とは違う人生ー世の中の富や権力や快楽を手に入れる人生を味わいます。

そこで出会った純真なマルガレーテと恋に落ちます。マルガレーテもファウストのことを愛し、愛するが故に家族を誤って殺害してしまいます。そしてファウストにも捨てられたマルガレーテはファウストとの間にできた子供を殺し〝乳児殺害〟の罪で逮捕、懲役刑に処せられました。何もかもに絶望してしまうはずのマルガレーテは、しかしファウストを忘れることが出来ず…

「糸を紡ぐグレートヒェン」

となります。(続きは長くなりますので、またの機会に。)

ゲーテはこの「ファウスト」を20代から書き始め、亡くなる間際までずっと執筆していたとのこと。本当にライフワークでした。そして主人公のファウストと同様、悪魔のメフィストフェレス、マルガレーテそれぞれの視点から作られたミュージカルや映画、こうしたクラシック歌曲などたくさんあって様々に愛や欲や罪や救いを描き出す泉のような作品は、そう、多くないと思います。

では私は、グレートヒェンに何を思ったのか。それは「依存心」です。彼のいない世界は墓場と思っているということは、愛が深いのではなくて依存なのでは、ないかと。ただ絆(ほだ)されているだけではないかと感じて

そういう物語を綴りました。

糸紡ぎ、という作業は現在では家庭内でも紡績工場でもなかなか見受けることは無いので、すべてが等しく繰り返す中に身を置いている情景を思い浮かべるのがちょうどいい、と理解しております。

なかなか同情はできないけれど、頑固なところは、何となく私に似ている気もする、のです。(笑)

朗読は5/4公開予定です。よろしくお願いいたします。

https://stand.fm/channels/601fc64085b142d0d859ff7a


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