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「長続きする関係」に、あるもの。

男友達の家に、泊めてもらった。
以前から、奥様大好き話と、息子さんのユニークさを愛でる話を聞いていたので、直接お会いできるのがとっても楽しみだった。

仕事を終えての訪問だったので、夜まあまあ遅かったのだけれど、奥様は可愛らしい笑顔で大歓迎してくれた。
お店ですよね?と言いたくなるほど美味しいご飯と、「幸福」と書いて「仲睦まじい」と読ませたくなるようなご夫婦のやりとり。
奥様とは初めてお目にかかるので、彼女のこれまでの人生や、お考えとか、もういろいろ興味津々で、いっぱい質問してしまった。(職業病。笑)

2時間ほど話し込んでいたら、お出かけしていた息子さんが帰宅。
父である友人がSNSによく載せていた、息子さんお手製のパスタを直に所望し、ゴキゲンな私。

名店のシェフによるYouTubeで独学したという。すごいな。もちろん美味しかった!

夜が更けていくのを見ないフリして、長時間、本当に長時間話し込んだ。
息子さんを加えて3人のファミリー、と、客人の私。
一滴も飲めない私はシラフだったけれど、「楽し酔い」という酔い方があるとしたら完全にそれだった。

酔っていたけれど、シラフ。だからか、ふと、気づいたことがあった。
そして、そのまま伝えてみた。

「○○家の皆さん、本当に仲良しだなあって見てたんだけどね。もしかすると、それぞれが無意識に、自然に、いろんな役割で関わっているから、仲良く長続きしているんじゃないかな、って気づいたんだよね」

ん?という顔をする3人。

「たとえばさ、『父・母・息子』という役割がずーっと固定的、という感じじゃなくてさ。見てると、『父・息子』だけど『男友達同士』に見える時もあるし、『弟子(父)と師匠(息子)』みたいな時もあるし。『夫・妻』が『親友』や『双子』ぽい感じだったり、『恋人』ぽかったり、『息子・母』みたいだったり。お互いにいろんな役割がスイッチしているような感じでさ」

言葉を足して説明すると、3人とも少しずつ「ああ」という顔にほどけていった。

「わかる、俺、息子とお互いに『俺のだぞ!』って妻を取り合ってる時があるし(笑)」と友人。
ニコニコする奥様。
「『弟子と師匠』だね」の時に、まあ、そんな感じもあるかもね……という表情の息子さん。

「ずっと同じ役割で関わるのって、息がつまるような気がしたんだよね、3人を見てて。それぞれがいろんな役割で関われる関係になっているから、仲良しで居続けられているのかな、って思ったのよね」

3人それぞれが「なんかわかる気がする」とつぶやいた後、私たちは満たされた沈黙に浸った。

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あらためて思う。
長続きする関係って、おそらく固定的ではないんだろう。
自分のことを振り返ってみても、そんな気がする。

20年来の親友は、15歳年上でありながら、時々「妹」みたいだ。
そしてもちろん、私からは姉であり、母であり、友であり、時々、先生。
母と私はとても仲が良いのだけれど、私たちも、母娘でありながら、友達のようだし、母娘が逆の時もあるし、姉妹のような時もある。

夫も、細かくあげはしないが、私に対して多様な役割を担ってくれているように思う。
それはどうも外にも見えているようで、先日2人で旅行した宿のスタッフさんが、食事中にこんな風に話しかけてくれた。

「お二人、本当に仲が良いご夫婦なんですね。なんだか、兄妹(弟姉)みたいだし、友達みたいだし、もちろんご夫婦らしくて。本当に楽しそうで、素敵なオーラが出ていらっしゃいます。わかるんですよ、ご夫婦を観ていると。本当に仲が良いのかどうか」

老舗の料理旅館だったのだけど、なんでも彼女は、ブライダル担当でもあるので、数限りないご夫婦を観てきた結果の、見立てらしい。
ご一緒にいるようになって何年ですか?と聞かれ、10年だと答えると、「それでこんなに仲良しなんて!」と褒めてくれた。
いやいや、実際にはね、いろいろあるのよ……と思いつつも、まあ、キョウダイや友達みたいだっていうのは、そんな感じはあるかな、と思う。

多様な役割にスイッチできる、というのは、お互いが役割に固執しないからかもしれない。
座っているイスからササッとどいて、別のイスに座る。
なんなら、さっきまで自分が座っていたイスに相手が座っても、心がザワつかない。
どのイスにも、適宜、座れる、ということだ。
「私のイスはこれ」「このイスは私のもの」と、思っていない。


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友達のご家族をみてからずっと、ほんのり、考えている。
自分を固定化しない方がいい、ってことを。


「あるひとつの自分像」に固執する。
これ、違う言い方をすれば「自分をしっかり持っている」とも言える。
(「固執」という言葉には違うニュアンスが含まれるから、完全に同じではないけど)

キャリアコンサルティング・ライフコーチングをしていたりすると、「自分をしっかり持っている人がうらやましい」「自分軸をしっかり持ちたい」という声が少なくない。
そして、それが叶うと、確かに、心は安定するんだよね。
でも、それが足かせになることも、あったりするんじゃないかな。

「コミュニケーションをとる相手によって全然違う自分になってしまって、どれが本当の自分かわらかなくなってしまう」というお悩みはよく聴くもののひとつですが、むしろそれ、当たり前のことなのかもしれませんよ。
だって、自分は常に、外の世界と関わり合って成り立っているのだから。
何にも影響を受けない自分、は安定していていいけれど、一方で、外界と接しているからこそ変化する自分、もあるのが自然じゃないですか。

自分っていうものを確立しつつ、違う自分へあっさりと飛び移る。
いやいや。そもそも。
確立したと思った「自分」など、もはや「どれ」だったのかわからなくなってしまうほど、多様な自分がいるのです。しかも、まだ見ぬ自分、も。
そして、どんな自分も、ぜんぶ、自分なのです。

もしかすると、自分との関係を長続きさせるヒケツは、コレに気づくことかもしれません。

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