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Hip Spine Syndromeから腰痛を理解する

こんにちは!腰痛マガジンメンバーのこじろう(@reha_spine)です。


今回はHip Spine Syndrome(以下、HSS)についてまとめていきたいと思います。


以前にも腰痛マガジンにてHSSについての記事がありますのでこちらの記事もぜひ参考にして頂きたいと思います!


今回の記事では姿勢分析のポイントを含めながら説明していきたいと思います!今回の記事を読むことで、腰椎と股関節との関係性が理解しやすくなり、腰痛患者さんの姿勢の解釈もしやすくなります。


今回の記事は特に以下のような方にオススメな内容となっております!

✔︎HSSについて学びたい方
✔︎股関節と腰椎との運動連鎖について学びたい方
✔︎年齢層における姿勢の特徴について学びたい方
✔︎姿勢分析から腰痛の原因を考える力をつけたい方


では今回の内容に移っていきましょう!!


▶︎Hip Spine Syndromeについての概要

HSSは1983年にOffierskiらによって「股関節疾患と脊椎疾患が同時に関与する疾患概念」として提唱されたものになります。


HSSは、症状に対する股関節疾患と脊椎疾患の関連性の違いにより以下の4つに分類されます。

① Simple hip-spine syndrome
「股関節、脊椎の両方に病変を認めるが、いずれか一方が病状の主原因である場合」

例えば、X線像で腰椎に著明な側弯や椎間板の狭小化を認め、股関節でも末期の変形性股関節症を認めているが、病歴や身体所見より明らかに股関節由来の症状が主体である症例など。

② complex hip-spine syndrome
「股関節、脊椎の両方に病変がみられ、主原因が不明瞭な場合」

注意深い検査が必要であり、疼痛の主原因を診断するために股関節の関節内ブロックなどの補助的な検査が必要になることもある。腰椎疾患、股関節疾患両方の手術を要する症例もある。

③ secondary hip-spine syndrome
「股関節、脊椎のいずれかに主病変があり、その病変が他方に影響を与える場合」

主病変の障害に対する適切な治療により他方の症状も軽快する。

④ misdiagnosed hip-spine syndrome
「股関節、脊椎の主原因を誤診し、誤った治療を行った場合」

例えば、著明な大腿部痛に対し、腰椎由来の症状と診断し神経除圧術を施行するも症状の改善がみられずに術後に変形性股関節症と診断されTHAにて初めて症状の改善が得られる場合。


この中で、特に脊椎バランスの評価が病態把握に有用であるのは「③ secondary hip-spine syndrome:股関節、脊椎のいずれかに主病変があり、その病変が他方に影響を与える場合」になります。1)


また、HSSの概念には脊椎疾患由来の疼痛が股関節に影響を及ぼす『spine to hip』と股関節疾患由来の疼痛が脊椎に影響を及ぼす『hip to spine』の2つ存在します。

この両者ともに「脊椎アライメント異常」が深く関与し、腰痛と股関節痛に影響を及ぼすと考えられています。2) 
こちらは後半で説明していきます!


▶︎矢状面アライメントのチェックポイント

HSSの説明によく使用されるアライメント評価時の指標として、


「C7垂線;C7 plumb line」


というものがあります。聞いたことがある、普段から臨床でチェックしているという方もおられると思いますが簡単に説明していきます!


健常者における平均的な姿勢においては、

C7頚椎の椎体から下ろした垂線(C7垂線;C7 plumb line)股関節中心の後方(仙骨底後縁を通る)を通ることが理想的であると考えられています。3)

理想的C7垂線


この理想的な姿勢といわれる、C7垂線が股関節中心の後方を通るものを

「代償バランス」

といいます。


一方で、C7垂線が股関節中心の前方を通るものを

「非代償バランス」

といいます。

代償・非代償バランス


▶︎代償バランスと非代償バランス

「代償バランス」はC7垂線が股関節中心の後方を通る、とお伝えしました。

この代償バランスでは、脊椎弯曲角度や骨盤傾斜角度は様々ですが、どの姿勢でも同じようにC7垂線が股関節後方を通っており、脊椎全体のバランスとしては良好な状態であるといえます。(下図)

代償バランス

図の左と右は骨盤傾斜と腰椎・胸椎の弯曲角度が様々ですが、それぞれ角度を調整しながらバランスを取り、C7垂線が股関節中心の後方を通るようにバランスを保っています。


一方で、「非代償バランス」ではC7垂線が股関節中心の前方を通るため、姿勢を保持するために背部や股関節後方の筋群が活動を余儀なくされ、力学的な負荷が大きくなります。そのため、脊椎全体のアライメントとして、平衡が保たれていない状態といえます。(下図左と右)2)

非代償バランス


以下に、「代償バランス」と「非代償バランス」 について分かりやすくまとめられたものがありますので、こちらをもとに説明させて頂きます!

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腰痛マガジン Lee:「Hip-spine syndrome~骨盤帯から脊柱アライメントを考える~」より引用

上の図を1つずつ説明していきます!

〈代償性バランス〉1)
【図①】骨盤前傾に対して胸椎後弯、腰椎前弯が増大することで代償される
【図②】骨盤後傾に対して胸椎後弯、腰椎前弯が減少することで代償される
〈非代償性バランス〉
【図③】腰椎前弯の減少を認める症例では骨盤が後傾するが、脊椎可撓性の低下や椎体圧迫骨折による局所後弯などで脊椎でバランス代償が不能になると重心線が前方に偏位する
【図④】腰椎に高度なすべりを認める症例では過度な骨盤前傾を腰椎が代償しきれず、重心線が前方に偏位する


つまりは、上図①,②のように脊柱が十分に可撓性を持つ場合、骨盤の前後傾に合わせて脊椎が代償します(代償性バランス)。


逆に、上図③,④のように脊椎が可撓性を持たない場合、骨盤の前後傾に対して代償できずに体幹の重心線が前方に移動します(非代償性バランス)。1)

軽度な脊椎アライメントの変化に対しては、骨盤傾斜や胸腰椎の弯曲で代償されますが、胸腰椎後弯が重度化してくると骨盤後傾に加えて、膝の屈曲や足関節背屈することで代償が働きます。4)

脊椎疾患の方の立位姿勢において膝が屈曲している例もよく目にしますが、そのような方では脊椎ではバランスの保持が限界を超えていると考えられます。


▶︎臨床的な姿勢評価(C7垂線での評価)

では、実際の患者さんが「代償バランス」の姿勢なのか?「非代償バランス」なのか?を臨床的に評価する方法についてご紹介します。

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