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【インド雪山紀行⑦】寒いラダックの温かい夜

2023/12/23

屋外に置かれたバケツの水は完全に凍っている

今日の予定は特になし。

ラダックの民家
いわゆるボットン便所なので、トイレは上階にある。
ちなみにこのトイレに屋根はない。

泊めさせてもらっているTundupの家はレーの外れの住宅街にあるので、周辺に何か面白いものがあるわけではない。
とはいえ、あまりに退屈なので適当に散歩して写真を撮る。

まずは午前中の散歩。

セブンイレ…ん?
冬期講習のチラシ
軍人御用達の店

ラダックはカシミールよりも乾燥していて寒さが厳しいが、カシミールで感じたような「寂しさ」がない。
それは、チベット仏教特有のタルチョやマニ車が色彩豊かだからかもしれないし、ラダックの人々の顔立ちやファッションセンスが日本人に似ていて親しみを感じるからかもしれない。

チャパティ

一旦、家に帰って食事をとる。
ラダックは東アジア風の料理が多いが、その一方でカレーやチャパティなんかも普通に食べられている。
こういうのを見ると、ラダックもインドの一部なんだなと思う。

腹ごなしに午後の散歩。
地図を見ると近くをインダス川が流れていることがわかったので、行ってみる。

子犬
川を堰き止めて作ったスケートリンク
インダス川
流れが緩やかな岸の辺りは凍結している
クリケットに興じる少年たち
大きな音がしたので振り返ると大きな馬が走って来た

日が暮れる頃に帰宅。

明日のスケジュールについてTundupに確認する。
私「明日は何時に出発するの?」
Tundup「1時だ。朝の」
「朝の?」
「そう、つまり今夜だな。1時に出れば、朝の7時くらいにはカルギルに着くだろう。それから、夜までにはパドゥム(ザンスカールの中心の村)に着くと思う」
「明日はパドゥムまで行くんだね?」
「そうそう。明日はパドゥムで1泊して、明後日に俺の村に行こう」
…ということになった。

それからしばらくして、40歳前後の男性が家にやって来た。
彼はザンスカールまで私たちを連れて行ってくれるドライバーで、今晩はこの家で仮眠をとるらしかった。
Tundupが牛乳のペットボトルを持ってきて、中身をグラスに注ぐ。
中身はもちろん牛乳ではなく、透明な液体が注がれたグラスを私たちに手渡した。

自家醸造酒

「何これ?」と問うと、彼は「アラックだ」と答えた。
アラックというと通常は、ナツメヤシやブドウを醗酵・蒸留させた中近東のアルコールを指す。
醸造の技術が各地に伝播する過程で、その地域に特有の「アラック」が愛飲されるようになったのだろう。
ラダックのアラックはバーリと呼ばれる穀物からできているらしい。

一口含むと、日本酒と焼酎の中間のような味がする。
アルコール度数はかなり高く、30%近くあるかもしれない。
すぐにほろ酔い気分になる。
部屋の中央に置かれた小さな暖炉では薪がばちばちと爆ぜ、室内は団欒の様相を呈し、何だかとても良い気分だ。

Tundupの娘と少年が夕食の準備を始める。

内側に着ている少年のパーカーをよく見ると、「呪術廻戦」と書かれていた
襞を作るのもお手のもの

あっという間にモモの完成。
アルコール度数の高い自家醸造酒と自家製モモとヤクチーズのスープで身も心も温かくなる。
外は水が凍ってしまうほどの極寒だが、部屋の中はとても温かい。

私は満ち足りた気持ちで、夜中の出発に備えて仮眠をとった。

ところでこれを書いていて気づいたのだが、ドライバーも出発の3時間ほど前までアラックを飲んでいたことになる。

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