『Ponniyin Selvan 1』 雑感
今話題のタミル映画『Ponniyn Selvan 1』を観てきた。
封切りから2週間が経った現在も満席。
2日前にネットでチケットを予約したのだが、すでに5席くらいしか空きがなかった。
2022年10月16日現在ですでに、歴代インド映画興収ランキング18位を獲得しており、今後もさらに数字を伸ばすことが容易に想像できる。
約半世紀前に出版された国民的(州民的?)小説が原作で、幾度となく実写化しようという試みがあった映画だけに、客層は幅広かった。
おじいちゃんおばあちゃんも含めた3世代で観に来ている家族が多く、まさに全タミル人が心待ちにしていた映画であることが分かった。
相対的に若い人が少なかったからか、インドの映画館につきものの指笛や歓声は控えめだった。
映画の舞台は、約1,000年前に南インドを広く支配していたチョーラ王朝。
タイトルの「Ponniyin Selvan」は「カーヴェーリ河の息子」という意味で、チョーラ王朝の最盛期を築いたラージャラージャ1世のことを指しているらしい。
タンジャーヴールにある壮大なヒンドゥー寺院、ブリハディーシュワラ寺院はこのラージャラージャ1世によって建立されたもので、現在は世界遺産に登録されている。
この映画、タイトルに付けられたラージャラージャ1世が登場するのは当然なのだが、(少なくとも第1章の時点では)彼は主人公ではない。
彼の親友で、皇子の伝令役となって南インドやスリランカを行ったり来たりするヴァンディヤデヴァンという男性の行動を追う形でストーリーが進行する。
とはいえ、この映画には絶対的な主人公と呼べる人物はいなかったと思う。
歴史活劇というものは、えてして登場人物が多く入り組んでいる傾向にあるが、本作もその例に漏れない。
この画像で予習して行ったにもかかわらず、イマイチあらすじを理解できなかったというのが正直なところ。
絶対的な主人公がいないので尚更、鑑賞中は「あれ、これ誰だっけ…?」という事態が頻発していた。
以下のサイトに詳しいあらすじや解説があるので、観に行かれる方は、上の画像と併せて読み込んでおくことをオススメする。
ちなみに、以下のサイトはインド映画についての解説がメインだが、そこから派生してインドの文化や宗教について分かりやすく丁寧な論考がたくさん掲載されているので、インドに住んでいる全日本人に読んでほしいと思っている。
ぼくも事前に上のあらすじを読んでおいたのだが、地名や人物名など、南インド特有の難解な固有名詞が多すぎて、映画を観る頃にはすっかり忘れてしまった。
また、ヒロイン役は2人いたのだが、同じような衣装を着ていたからか、最後まで2人の区別をつけることができなかった。今も分かっていない。
この映画は「pan-Indian film(汎インド映画)」として、ヒンディー語圏でも大々的にプロモートされたのだが、公開後の北インドでの反応は芳しくないようである。
北インド人のレビューとして、以下のニュースサイトで面白い一文を見つけた。
まさしくぼくが感じていたのと同じことで、他の外国人にとっても同様の困難を抱えることになるだろう。
似たような歴史活劇として『バーフバリ』が世界中でヒットしたが、『Ponniyin Selvan』は上記の理由で他の文化圏に受け入れられるか分からない。
現実味がないほど派手なアクションシーンが売りの『バーフバリ』に対して、『Ponniyin Selvan』は宮廷内の権謀術数といった複雑な人間関係の妙味も味わえる。
この2作品は似ているようでいて趣向が異なるため簡単に比較はできないが、固有名詞の難解さや登場人物の識別の困難さは、世界的ヒットとなるには大きな障壁であるように感じた。
とはいえ、冒頭でも書いたように、この映画の公開はタミル人にとっての悲願だった。
世界的なヒットなどはどうでもいいことなのかもしれない。
半世紀前から実写化の構想があったことを知った上で、ほとんどの客が3世代で観に来ている家族であるのを目にすると、こちらも何だか感慨深い気持ちになる。
第2作は2023年に公開されるとのことで、今から楽しみだ。
最後に、トレーラーとダンスシーン、劇中歌の動画を貼り付けておく。
最後の動画で歌っている男性が、劇中歌を担当したA. R. Rahman 。
チェンナイ出身の彼は『スラムドッグ$ミリオネア』の楽曲でアカデミー賞を受賞した、インドを代表する偉大な音楽家。
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