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お話:『踊りと私の話:7〜止まる〜』

あれ。

なんだろう。この感じ。

うーんと、、、。
そう。

わくわくしない。

あれ、なんていう歌だっけ。
カナリヤが歌を忘れちゃったっていう。
もしかして、そういう感じ。


これは一人の平凡な女の子のお話。
踊りと、ある女の子の物語です。


***

こんにちは。きこです。
このお話ももう7話目!

私が何もできなかった幼い頃に踊りに出会って「これなら自分の言語になる」って思ったような子だった、っていうのはこれまでに話してきたことだけど、自分のことが少し見えてきたかもって思えるのはほんの最近のこと。

人って、みんな全員違うんだよね。
誰も、自分と同じ人なんていない。
得意なことも、苦手なことも、一人一人違う。

そしてさ、そういう『自分』っていうものが、、たとえば何が好きで心地よくて得意で苦手で、、っていうことって、いろんなことを通じて自分で知っていかなきゃいけないんだよね。

それなのに、なんだかよくわかんないまま人に合わせることばかり覚えていっちゃうなんていうことって、もしかして実は多いんじゃないかって思うんだ。


今回はお稽古場のお話とは少し違うお話。


***

✴︎前回のお話



「なんでかなぁ。」

逆さまの景色を眺めながら、私はぼんやりと考えていた。

「なんで何もできないんだろうなぁ。」

ブリッジをした状態でしばらく考えていたけれど、答えなんて出てこない。

ブリッジの体勢のまま少しずつ手と足の距離を縮めていく。お腹をどんどん持ち上げて背中を柔らかく反らせながら手と足を近づけていって、ついに手の指と足の踵がぴたりとくっついたらそのまま気持ちよく一呼吸する。

よし、戻ろう。

その場であしぶみを2〜3回して、片足でそれ!っと強めに地面を蹴る。前後に開脚をした足で大きな弧を描きながら逆立ちを一瞬通って顔の前で着地。身体を起こすとまっすぐ直立の世界に戻ってきた。

じんわりとした感じが背中に広がっているのを感じながら首を回して、うーん、、と伸びをひとつする。


ふぅ。

どうやら私は生まれつき身体がとても柔らかいようだった。開脚は前後左右自由に開く。背中も腰もどんどんと反らしていくのは心地が良かった。

それを特になんとも思っていなかった。
単に、あぁそうなんだ、としか。

自分でも知らなかった自分の身体。
踊りに出会っていなければこの柔軟性を持っていたことすら知らないでいたと思う。
そこからさらに、伸びやかに伸びやかにストレッチをしていくことの気持ちよさ、楽しさ。
つま先を伸ばし、膝を伸ばし、脚をより高く遠くへ。
腕はしなやかに。上半身を大きく使って前へ後ろへ。

気持ちいい。心地いい。楽しい。


だけど。

だからなんだというのだろう。


これは、学校では全く必要ないのだもの。


学校で要求されることっていうことが、どうやらこの先生きていくのにとても必要なことらしい。
この世界には社会っていうものがあって、うまく馴染んでいかないといけないみたい。
オールマイティな人間にならないといけないみたい。

年齢を重ねて、学年が上がるにつれて、どんどんその感覚は大きくなっていっていた。


だけど。
どうしよう。


明るく、活発に、勉強もスポーツもできて、友だちとも楽しく遊んで、休み時間には外であそび、給食は全部食べて、はきはきと発言をして、、。

そんなこと、できるだろうか。
もうすぐ6年生になろうとしているのに自分のどこを探してもそれに見合うものは見つかりそうにない気がしていた。


なんだか型があるみたい。
こうでなければいけない、というような。
そこにはまらないといけないような、型みたいなもの。

一生懸命そこにはまろうと頑張ってるけど。

そこでは私が好きなものや心地よいものは必要とされていないように感じていた。
そして、、踊りは運動の能力には関係ないのか私は体育がとっても苦手。


私が好きなのは心地よいのは、静かに本を読むことや音楽に包まれて空想すること。ゆったりと身体を使うこと。自分の感覚や世界で生きること。


だけど。自分の心地よさの感覚がひとつひとつ扉を閉じてわからなくなっていくようだった。

そして、今通っているバレエの教室も、なんだか心が踊らない感じが続いていた。

基礎のレッスンがつまらないわけじゃない。けれど、、
踊ることってあんなに楽しかったはずなのに、今は何かが違う気がする。

バレエ、どうしようかな。
踊ることをやめたいわけじゃない。
だけど、わくわくしない。

こんなこと初めてだった。
心が止まると世界も止まっていってしまう。


身体と会話をしたり音楽と遊ぶことが、実はその先ずっとずっと自分を導いてくれるものになるなんていうことを、この時の私は全く想像もしていなかった。


***

〜作者よりほんの一言〜

感覚を消して生きるのが世の正解であり自分はそれが得意だと思っていた私が、実はとても感覚的な人間で結構頑固で自分のペースで生きたいというのがとても強い人だと知ったのはかなり最近のことでした。
ずいぶんな勘違いです。笑

とても器用だからこそものすごく不器用でもあります。
そんな自分を今とても楽しく生きています。


どんな自分をも否定することなくのびのびと生きていいことを知りながら生きていかれたらいいよね。


読んでくださりありがとうございました。
次回は4/29(土)更新予定です。


遊びにきてくださったみなさまへ。もし気が向きましたら「きたよー」の印の意味で右下のハートをぽんと足あとのように押していっていただけましたらとっても嬉しいです。RPGにありそうな「深い森の奥の奥に人知れずある小さなお店」という場所にふらりと誰かが訪れてくれたという幸せに舞い踊る私からの全力の感謝の念を送ります。

✴︎1話目からはここにまとめています


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