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黒島のお姉さんと白髪の説得力

今日は、およそ2年ぶりに友人に会った。

この友人とは、5年ほど前、石垣島よりさらに南にある黒島という小さくて美しい島の宿で出会った。
ここでは黒島のお姉さんと呼ぶ。

ちなみに、私にとって黒島は、日本の中でも最高に大好きな場所である。
「何もしない」ことを旅の目的に、人生の節目節目に何度も訪れている。

黒島のお姉さんは私よりも一回りほど年上だが、偶然、同業者かつ関西人であったのと、出会った当時はお互いに人生迷走中(お姉さんは無職期間、私は休職中でひとり旅中)だったこともあり、いろんな話をする中で、すぐに仲良くなった。

そして、黒島から関西に帰ってきてからも半年に1回くらいのペースで会う、ゆるい関係だ。

復職した、仕事を辞めた、転職した、いろいろあるけど何とか頑張れている…など、会うたびにそれぞれ変化したりそのままだったりする近況を報告し合う。

2人とも独身でくるりが大好きなこと以外は大して共通項もないのに、なんやかんやと盛り上がる。

山登り中に遭難しかけて救助された話や、休日に農家のお手伝いに行っている話など、お姉さんの話はいつも楽しい。

そして「私たち頑張ってる。お互い、次会う時まで生き延びよう!」と、励まし合いながら別れ、半年後に思い出したようにまた会う約束をするのだ。



そんなお姉さんと数年前、最近ちょっとだけ白髪が生えてきた、という話をしたことがある。

お姉さんはどうですか?と聞いてみると
「私も30越えたあたりで増えてきた。最初は嫌だなーって思ったけど、ある時から、白髪って、ちゃんと苦労した!ちゃんと生きてる!って感じで、人生に説得力が増す気がして素敵だなーって思い始めた。
それからは、むしろもっと増えろ!って思うようになって。そしたらなぜか増えなくなったよ〜残念だ!」という話をしてくれた。

私はそれを聞いて、なんというか、平たく言うと目から鱗というか、そんな考え方があるんだー!と、物凄く愉快な気持ちになった。

それから私も三十路を突破し、生えてくる白髪の本数も微妙に増えた。
まだまだお姉さんの境地には至れず、やっぱり隠したくなる。

だけど、たまにぴろぴろと出てくる白髪を発見するたび、お姉さんの言葉を思い出す。
そのおかげでちょっと楽観的に構えられている。

お姉さんは、私にとって「ちゃんと生きてる人生の先輩」なんだ。
ちゃんと傷付いて、ちゃんとつまづいて、ちゃんと立ち止まって、ちゃんと生きてる。
そんな人が、自分の少し先を歩いてくれている。
とても頼もしい。



感染症の影響で2年ほど会えていなかったのだが、私がたまたまお姉さんの住む隣の市に引っ越してきたこともあり、今日は無事に再会できた。

2人とも生きていた。

当たり前のことだけど、私たちの友人関係のスタート地点は、お互い人生にすごく疲れていて、本当にこれから生きていけるのかな?と心底不安な時期だった。
だから、その事実は2人にとって結構特別でスゴイことなのだ。

久しぶりに会ったお姉さんはゆるいパーマをあてていて、ますます素敵な女性になっていた。

また半年後くらいに会えるかな。
私の白髪はその時、どれくらい増えているんだろう。
その時には、お姉さんも私も、ちょっとだけ人生の説得力が増した状態で、相変わらず取り留めもない話ができていれば嬉しいと思う。

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