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覇道を行くのか、王道を行くのか

『生き方』(稲森和夫著)を読了しました。
「小学生の時に教わるような根本的原理原則こそが一番大事」
誠実であること、素直であること、謙虚であること…
自分は何のために働くのか。
自分は何のために生きるのか。
自分の生きる意味はなんなのか。
見つめなおせた本でした。

欲にとらわれすぎると

本の一貫したメッセージは、「誠実に生きる事」でした。
人間は、そもそも宇宙は、拡大発展していく法則にあるのだから、
よくなりたい、という気持ちは自然な事。
だからと言って、欲を満たすためだけの事業は、
大きなしっぺ返しを食らう、ということが
著者の経験からも物語られています。

ちょっと前の話だと、アメリカでサブプライムローンが
欲にまみれて焦げ付き、世界恐慌を巻き起こしたように。
同じ事業をするにあたっても、「相手がよくなってほしい」と、
正当な欲で事業始めていくのか、
「自分たちがもうかりさえすればいい」という欲で始めるのかで、
全然結果が違う。

因果の法則が支配するこの世界は、
どんな出来事も原因と結果がある。
すぐに芽が出ることはなくとも、
善い行いを続けていくことが人生をよい方向に導くのです。

覇道の影がちらつく教育界

我欲を前面に押し出し、資本主義経済のように勝者がうまみを持っていく、力で支配していく思想は、古代中国では「覇道」の思想と言われています。
一方、為政者が徳を高め、自身の徳で周りに良い影響を与えることを、
「王道」の思想と言われています。

この構図は、現代の教育界にも当てはまるな…と
教育技術を紹介しているSNSや雑誌、セミナーは後を絶ちません。
教育インフルエンサーも大勢います。
フォロワー1万人とか、本を出せば1万部とか、そんな人も。
SNS上では、何百人規模の教育イベントが全国各地で行われ、
インフルエンサーがインフルエンサーのイベントを紹介する、
なんて光景も珍しくありません。

イベントの登壇者は、いつも似たような顔ぶれです。
何年経っても、変わらない。
もちろん、インフルエンサーと呼ばれる方々は、
ご自身の技を磨き、多くの人が困っている技術を伝え、
日々の困りごとを解決しているのでしょう。
技術やテクニックが無限にあれば授業や学級経営がうまくいくのか。
力があれば問題は根本的に解決するのでしょうか。
結局、「覇道」の思想になっているように思えるのです。

王道は地味で目立たない

僕はそれよりも、「王道」こそが未来を拓くカギだと考えます。
もちろん、技術を高めることが必要なのは言うまでもありません。
ただ、それ以上に大事なのは、教師自身が自分を磨くこと。
「誠実に、謙虚に、前向きに、コツコツと。」
日々の自分を認め、省みて、少しでもよくなろうと努力する。

教師として、ある意味では人の上に立つ仕事であればこそ、
自分自身の「徳」を高める事。
思想を深める事。哲学を追究すること。
自己理解、他者理解、人間理解に努める事。
すぐには結果が出ないけれど、
そんな姿勢を持ち続けることが必要ではないでしょうか。

未来を見据えて、一歩ずつ

現代は、資本主義経済に代表される「覇道」が至る所に見えます。
そして、インターネットの発展によって、ますます混迷を極めています。
浮足立ってしまう現代だからこそ、
今一度、自分自身の根本を、見つめる必要があるのです。

自分を見つめ、ふり返ったところで、すぐに結果は出ません。
ほんの1ミリしか、進まないかもしれません。
だけど、雨だれが石を穿つように。
因果の法則が支配する世界だからこそ、
自分の踏み出した一歩が、
誰もが暮らしやすい未来の小さな因となるように願うだけです。
僕は、王道を歩みます。


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