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「忍術史」研究によって、未来を生きるヒントを探りたい


忍術史の目的と手法

「忍術史」の目的は、口伝、体伝、書伝等で伝承される忍術を復元実験、修行し忍術の実際を確認、利用価値を研究、現代における忍術利用の開発に繋げる。

研究方法は原始技術史的なアプローチを取り、技術が必要とされる背景から仮説を立て、技術の存在理由、目的を確認し、復元実験ならびに修行を行う。

修行を行う意味は、技術には「熟練」というものがあり、熟練度によって技術の価値が変化するためである。

実験と修行を通して当該忍術の技術的価値を確認しその実際を探る。技術的に存在価値が認められれば実在した可能性は高くなる。

技術的価値の判断をする際に注意したいのは、現代という環境ではなく、当時の風俗・環境的背景を元として判断を行わなければならない。

(しかし、当時の人は信じていたが科学的に考えると効果がなく、机上の術としてのみ存在するものを嘘だとして取りこぼす危険があることにもまた留意しなければならない)

原始技術史に基づく古代技術復元実験(EARATS)※をモデルとした忍術の実験や修行と並行し、伝書などの文献による裏付けも行う。

(文献による裏付けとは、文献によって技術の存在を補強することが目的であり、文献にないから技術として存在しなかったとするものではない)

加えて忍術ではなく、忍術に関連するであろう周辺技術の調査・実験・修行も行い、当該忍術について当時の一般的技術と比較してどう技術的な特殊性を持っていたかも確認し、忍術の忍術たる要因を探りたい。

※古代技術復元実験(EARATS)
古い時代の技術を、自分で体験を重ねながら復元していく方法。英語名は the Experiential Approach to Restoring Techniques(古代技術を復元することを目指して体験的に近づいていく方法)。

『原始技術史入門』岩城正夫

忍術史という名前

「忍術史」というタイトルは原始技術史にならって作った。

歴史と称するからには各原始時代が個々ばらばらに扱われたのではいみがない。どんな技術でもかならず他の技術と横の関係をもっていて発展するものである。だからタテの糸とともにヨコの糸もさぐらなければ歴史の論理の解明はできないだろう。

『原始技術史入門』岩城正夫

忍術の実際を探る研究も同じで、総合生活技術と呼ばれる忍術の内容を個々に研究しても、それは単一的に現象を再現するだけに留まり、忍者・忍術の本質的な実際を探るところまではつながらないと考える。

原始技術史にならい、ヨコの糸を意識し忍術を統合し、そこから忍者の活動や生活を推察する。忍術の発生から発展というタテの糸を意識し、忍術の存在意義を探り、忍者の存在理由を考える。そして、忍術と現代技術・生活とを比較することで本質的な技術価値を探り今後の技術発展につなげる。


忍術史研究の要素

⑴ 忍術そのものの研究

伝承される忍術の実験、実践、修行

→目的:忍術そのものの実際を明らかにし、技術的価値を解き明かす。

〈忍術の役割分類〉
イ、忍者独自の技術
ロ、当時一般的な技術で忍者の職務に使われる
ハ、当時一般的な技術で忍者の生活に使われる
ニ、当時一般的な技術で一般的な生活で使われる

〈忍術の特殊性の分類〉
イ、思想的に忍者独自のもの
ロ、技術的に忍者独自のもの
ハ、思想及び技術的に忍者独自のもの
ニ、思想及び技術的に一般的なもの

〈忍術の機能性の分類〉
イ、物理的機能性がある
ロ、心理的機能性がある
ハ、物理及び心理的機能性がある
ニ、機能性はない
(機能とは、当該忍術を利用することで得られる何らかのベネフィットがあること)

〈研究対象となる忍術の種類〉
1、計略・謀略・策略(心理戦)
2、情報収集・分析・開発
3、兵法・戦略・戦術
4、観天望気・気象・天文
5、占い・呪術
6、火器
7、忍器(火器を除く)
8、武具・兵具
9、屋敷・城・陣・建築物
10、薬・医療・食品
11、暗号・通信

〈忍術研究上の注意点〉
忍術の中には机上論で考えられた術技と後世の創作家が考えた術技が混在する場合がある。どちらも機能を持たないという点では同じであるが、前者は機能を持たないが忍術であり、後者は機能を持たない空想の忍術となる。忍術史の研究対象は前者であり後者は含めないが、これの判別は難しい。実際の機能は無いが、机上でも当該忍術を考えるに至った経緯があるはずで、その経緯には本質的な解決すべき(解決したい)問題があると考えられる。机上論であることを理由に忍術研究から除外することは、忍者が忍術を作るという観点を欠如し、忍術の本質を多角的に探ることを損ねる。特に注意されたい。

⑵ 一般的技術の研究(周辺技術の研究)

当該忍術と類似する同時代の一般的技術(忍術の周辺技術)の実験、実践、修行

→目的:一般的技術(周辺技術)と忍術を統合し、口伝レベルで失伝した技術情報を補完して忍術の技術的な全体像を把握する。また、忍術と周辺技術を比較して忍術の特殊性を探り、ひいては忍者の活動の特殊性を探る。

⑶ 同類の外国技術の調査

忍術とその周辺の一般的技術と同じ役割を果たす外国民族の技術の調査。忍術と同時代の技術、また忍術と同時代ではないが同じ役割を果たす技術を調査。

→目的:日本で発展した技術と外国の技術を比較して忍術の技術的・思想的な日本オリジナルの特殊性を探る。また、判明する忍術の技術的視点から日本の忍者の特殊性を探る。

⑷ 現代で代替される技術の調査

当該忍術に本質的に該当する現代技術の調査

→目的:忍術が使われた時代の技術的存在意義を探り、当時の忍術の価値を計る。また、それにより忍者の存在価値を計る。
現代技術との本質的類似点を明らかにし、人間生活の本質を探り、今後の技術開発に活かす。


忍者・忍術学について思うこと

三重大学を中心とした忍者・忍術学は、古文書の研究や忍術の実証実験により闇に包まれた忍者の全貌を明らかにした。しかし、それは昔の忍者の存在を確認することに留まり、ではそれをどうするか?という発展に未だ欠ける。

それはなぜか?思うに忍者・忍術学は個々人の研究者が研究しているだけで成果が事実確認に留まっているからである。

各種の忍者・忍術研究内容を統合して、総合的に忍者の実際を紐解き、そこから忍者の持つ技術・知恵・思想を正確に理解することで、忍者の本質を探り、現代と比較して本質を見つけ、未来を生きるヒントにつなげたい。

今回ここにその統合方法と注意点を列挙して公開することにしたのは、自分一人ではカバーする範囲が広すぎる忍術に関して研究しきれないと思ったからである。また、現状の忍者・忍術学に頼っていては今後の発展が乏しいと考えたからである。コンテンツとして消費される忍者を乗り越え、技術として発展のある忍者に昇華し、生きた知恵・技術としての忍者・忍術を今一度取り戻したい。

名もなき多くの忍びたちが、命をかけて編み出し、繋いできた技術と思いを受け取り、それを発展させることが先人への感謝と手向けになることを願う。


忍術史研究に関してのご意見や質問、研究に協力いただける方いましたら、コメント欄かメール(design.kiyoshi@gmail.com)にてご連絡ください。

「忍術史」目的と要素.pdfダウンロード

↑本記事を書くにあたり事前製作したpdfファイルです。ご入用の方はご自由にダウンロードください。


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