珍味③ 黄金色の至宝。とろりと甘い海の味、雲丹(うに)
一度でいいから洗面器いっぱいに食べたい。いつもそう思うのが、ウニです。
洗面器にとびきり新鮮な、ピンとしたウニをなみなみと入れて、木のスプーンで
掬っては食べたい。
「気持ち悪い」と必ず言われるのですが、いーや、食べたい。
それで、食べ過ぎて本当に気持ち悪くなって、二度と食べたくないって思うんだろうなぁ。
まるで私の人生を象徴しているようです。
そもそも、子供の頃に大量のシシャモを食べて、気分が悪くなった前科があるので、
何事も過ぎたるは及ばざるがごとしが、身に沁みているはずなのですが、なかなか本当には沁みないのが、不思議なところです。
まぁ、それほど好きということなのですが、何が好きって、海の味がするからです。
海水の旨味を凝縮して、甘味とコクをとじこめたような味。
新鮮なウニは、舌でつつくと、張りと舌を微かに押し戻すような弾力があって、噛むと嘘みたいに柔らかく、豊潤な汁が出てきて、甘味と潮の香りと旨味と、もうたまらないと
段々官能小説を書いているような気持ちになってきましたが、実際に官能的な味わいなのだと思います。ウニの表面って、舌に似たザラザラ感がありますし。
こんなに好きなウニですから、海から拾ったウニの殻をその場で割って、スプーンで食べるのもやってみたいなぁと常々思っているのですが、まだ機会に恵まれていません。
ムラサキウニもバフンウニも好き。
礼文島から、生エゾバフンウニを友達と乗り合いで取り寄せたことがあったのですが、表面はピンとして、噛むととろりと甘く、まったく苦みやエグみがなく美味しかったです。
逆に、外食した時に、薬臭かったり、ボソボソしていたり、苦いウニに当たると、心底落ち込みます。
美しいやまぶき色のウニをこれでもかってくらい乗せたウニ丼も好きですが、お寿司の軍艦巻きで食べるのも好き。海苔の風味で、ウニの味が損なわれるからと、海苔のないウニの握りを食べたこともあるのですが、どこか頼りない味で、海苔があった方が断然好きです。
日本の三大珍味は、
塩ウニ
からすみ
このわた
だそうですが、塩ウニもまた旨い。
でも、塩ウニが美味しいと思うようになったのは、大人になってからで、子供時分には、酒の香りが強くて、少し辛かった覚えがあります。
炊きたてのごはんにのせて食べると美味しい。お酒の当てにも良いと思いますが、ここ数年、ほとんどお酒を飲めなくなってしまったので、これはあまりできません。
小泉武夫さんの本の中、たしか『地球を肴に飲む男』か、『地球を怪食する』に、
美味しい雲丹の味わい方とあり、乾燥させたウニを粉にして、豆腐にかけて食べると書かれていました。また、醤油に雲丹を溶かして、白身魚の刺身をつけて食べると美味しいとも。
これを真似して、そんなに美味しくないウニの時は、醤油に溶かして
刺身をつけて食べるようにしています。
カワハギの肝醤油にも似て、コクが出て美味しい。
美味しかったなぁって思うのが、
ウニの貝焼きです。
牡蠣のウニ焼き、ホッキ貝のウニ焼き。どちらも貝の旨味と香ばしさにウニの甘味が重なって、喧嘩せずに美味しいものでした。
ホッキ貝のウニ焼きは、三年前に、新宿三丁目にある「はまぐり」にて。焼き過ぎず、くらいの焼き加減で、香ばしくなったウニと汁気たっぷりのホッキ貝。
美味しい、美味し過ぎて、官能的な味だとしみじみ思います。
ウニって、こんなに色合いが綺麗で眩しいくらいなのに、陰と陽とに分けると、やや陰なイメージ、どこか淫靡で、それゆえに豊潤な味なんですよね。お店の名前もどこか淫靡でしょ。
黒いトゲトゲに覆われているからでしょうか。隠しているからなのかな。
蟹もそうですけど、見た目からじゃ決してわからない。こんなに美味しいものを硬い殻の中に潜ませていたなんて。それを略奪する愉悦なのかしら、ウニは。
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