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ある宗教団体の規約を読み解いてみた【ガバナンス】

利用規約ウォッチャー みなしボウイです。
先日少し触れた時には悩み中だったのですが、ある宗教団体の規約(「会憲」「会則」)をウォッチしていきます。

この宗教団体を宣伝する目的、または揶揄する目的では無く、私の感想をまとめただけです。
読んでいて、気分が悪い、腹が立った等の場合は、ページを閉じてください。
読んでいて、より興味を持った、信じてみたい等の場合は、自己責任でお願いします。
私は、この宗教団体の信者(正式には「会員」と呼ぶらしいですが)ではなく、家族に信者はいません。

皆さん、なかなか宗教団体の規約を読まれる機会も無いかと思いますし、私はガバナンス面で気になりました。
重要な6つのポイントに注目してウォッチしていければと思っています。


最後までよろしくお付き合いください。


構成

先にも触れたように、「会憲」「会則」の二本立てとなっていますが、会員さんが書いたサイトなどの解説も見てみると、性質が異なるようです。

会憲

  • 国内のみならず全世界の組織と会員に適用される。

  • この会憲は、この会の根本規範であり最高法規であって、他の規定に優先する。」(第14条)とある。

  • 団体の目的、教義、総本部、会長、国際組織、会員の立場についての基本を定義。

会則

  • 国内の組織と会員に適用される。

  • 団体の目的、教義、総本部、会長、会員の立場についての基本を定義。

  • 国内組織や役員の詳細について定義。

  • 賞罰規定がある。

  • 「会憲」が最高法規である旨はこちらにも記されている。


前文

約2,000文字からなる前文は、この団体のこれまでの歩み今後の展望が記されており、会憲と会則のどちらにも同じく存在します。

この例えは微妙かもしれませんが、社会主義国の憲法前文に近い印象を受けました。今も世界に存在する社会主義国のほとんどは「マルクス・レーニン主義」を方針の根本に起きますが、建国して数十年が経った現在は、マルクス・レーニン主義とその後の国内指導者の思想や理論によって国家建設が推進されてきたことをその憲法内でも強調しています(例:中国憲法の毛沢東/鄧小平/習近平、ベトナム憲法のホーチミン、キューバ憲法のマルティ/カストロ、など)。

私が読んでいて感じたことは、この団体には「お告げ」や「悟り」があって神通力のようなものが備わった「化身」が存在する訳ではなくて(いわゆる最終解脱者やエルカンターレではない)、この団体の設立以前から存在する「教え」(社会主義国における思想)を歴代会長が先頭に立って広めてきたということで、この団体の会長とは「指導者」なのかと思います。


「三代会長」と会長と理事長

会憲と会則のどちらにも存在する概念ですが、初代会長/第二代会長/第三代会長までは「三代会長」として属人的存在として定義されています。

一方で「会長は、「三代会長」を継承し、その指導および精神に基づき、この会を指導し、統理する」となっていることから、会長とは団体の役職に過ぎないことがわかります。会長は「総務の中から会長選出委員会が選出」し、任期は4年とあります。

また、この団体には「理事長」職が存在しています。「理事長は、会長を補佐し、会務を掌理し、会長に事故のあるときまたは会長が欠けたとき、臨時に、会長の職務を行なう」と定められていますが、重要な職務として宗教法人代表役員の兼務というものがあります。

この団体の指導体制は、属人的存在である「三代会長」を精神的指導者として据え、会長及び理事長以下の幹部は代替可能な執行部隊とする集団指導体制なのかなと思われます。法人格としての代表者を執行部のNo.1とはしない体制は、権力の集中を防ぎ、組織の持続性を高めます。このやり方は、ベトナムの指導体制に近いような気がします。


ガバナンス

「会則」を見ながらこの団体のガバナンスについて考察します。

会長…総務の中から会長選出委員会が選出。
理事長(宗教法人代表役員)…総務の中から会長が任命。
主任副会長…総務の中から会長が任命。
副会長…総務の中から会長が任命。
最高指導会議…助言機関。最高指導会議員は、会長が任命。
総務会…会務面の決定機関。総務は、優れた会員の中から、参議会の諮問を経て、総務会の議決により選出し、これに基づき会長が任命。
会長選出委員会…総務会議長、総務会副議長、最高指導会議議長、参議会議長、総務の互選によって選ばれた者13名が出席。
参議会…会長の諮問機関。参議は会長が任命(総務であることは明記されていない)。
中央会議…会務執行に関する決定機関。中央会議員は会長が任命。
師範会議…教義面での会議。師範の中から会長が任命。

会則から適宜まとめ

会長に人事権が寄せられているように見えますが、その会長は、総務の中から会長選出委員会が選出することになっています。会長は再任ありで、現会長は5期目だそうです。

総務とは、一般企業で言うところの取締役であると見て良さそうですが、その総務は総務会の議決で選出することになるので、身内を身内で決める形ですね。

このあたり、宗教団体のガバナンスとは、どうあるべきなんでしょうかね。大学の学長や幹部の選出に似た雰囲気もあります。

ちょっと専門家の先生方へもお尋ねしてみたくなります。


賞罰規定

この団体には、賞罰規定があります。

この会は、この会の発展に尽くし、他の会員の模範となる活動を行なった者を褒賞する。

褒章

この会は、会員としてふさわしくない言動をした会員に対し、その情状に応じ、戒告、活動停止または除名の処分を行なうことができる。

懲戒

中央本部役員、方面本部役員、県本部役員、総務、総務補、師範および準師範の処分を行なう機関として中央審査会が、県本部に所属する会員の処分および会員の地位の有無の審査を行なう機関として県審査会が置かれることになっています。

一般信者の処分については、県審査会が行うものと思われますが、どの程度の言動でどのくらいの処分が下るのかは、会則からは読み取れませんでした。


宗教法人の規則

宗教法人とは、宗教団体が宗教法人法により都道府県知事若しくは文部科学大臣の認証を経て法人格を取得したもので、そのメリットは何と言っても税法上の扱いが「公益法人等」となることです。

宗教法人は、法人の定款に類する根本規則として「規則」を作成し、その規則について所轄庁の認証を受けることが必要ですが、今回取り上げている宗教団体もこの「規則」を「会憲」「会則」とは別に定めています。

ただ、宗教法人の規則は、「宗教法人は,信者その他の利害関係人であって前項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり,かつ,その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があったときは,これを閲覧させなければならない。」(宗教法人法第25条第3項)となっており、基本的には公開する必要がありません。

このあたりもどうなのかなと思います。個人的には、ある程度の規模以上の宗教法人については、もう少し情報開示を要する仕組みでも良いような気がします。


今回は、このあたりで終わります。ありがとうございました。

なお本投稿における、発表内容は発表者個人の見解に基づくものであり、本投稿にて取り上げられている組織及びサービスの公式見解ではありません。

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