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彼女にとってのLavender Hazeとは〜Taylor Swift『Midnights』より『Lavender Haze』〜

 Taylor Swiftの10枚目のアルバム『Midnights』を聴きました。一通り聴いて、今は一曲ずつ和訳してみようと(無謀な試みかも)ノートに英語歌詞と和訳を書いています。英語歌詞を書く時に参考にさせていただいたサイトさんがありますが、なるべく和訳は見ないように、先入観が入らないようにしてみました。いざ、答え合わせをしてみると、私の解釈とは違うところがいろいろ出てきましたが、まずは書いてみます(あくまでも私の訳です)。

Meet me at midnight
真夜中に私に会って
Staring at the celling with you 
あなたと一緒に天井を見つめるの
Oh, your don't ever say too much
あぁ、あなたは決して言い過ぎないし
And you don't really read into
My melancholia
(あなたは)私の憂鬱症を本当に読み取らない(読み込まない?)

Taylor Swift『Lavender Haze』より

 『Midnights』が発表された時のネットの記事に「眠れない夜に捧げる13の物語」と見出しに書かれているものがありました。

 「このコンセプトとタイトルに私が惹かれないわけがない」と自分で思うくらい、私にスッと入ってきてくれたことを覚えています。
 そして、実際に聴いてみた上で歌詞を和訳した1曲目。彼女の足取りが覚束ない様子が(歌詞の内容の話)伝わってきました。自身の不安な状態と、それを汲み取ってもらえない相手への諦めにも受け取れました。

I've been under  scrutiny(Yeah,Oh,yeah)
私はずっと監視されていて
(最初“精査中”と訳しましたが、“自分が精査している”のではなくて“精査されている方”ですね)
You handled it beautifully(Yeah,Oh,yeah)
あなたは美しく処理したわ
All this shit is new to me(Yeah,Oh,yeah)
私にとって全ての(この)たわごと?は新しい

Taylor Swift『Lavender Haze』より

 だんだん、怪しくなってきました。私の和訳が。shitの意味がこれで良かったのか?と不安がよぎります。
 Taylorが以前出したアルバムに『reputation』(評判)と言う作品がありました。「I've been〜」のところはそのアルバムタイトルを彷彿とさせました。その次の「美しく処理した」のは「あなた」。少し思い当たるところがなくはないですが、ここでは「あなた」にとどめておきます。

I feel
私は感じる
The lavender haze creepin' up on me
ラベンダーヘイズ(ラベンダーの靄)が私に忍び寄るの
So real
とてもリアルに
I'm damned if I do give a damn what people say 
私は人々が言うことを気にしてしまって、忌々しい
No deal
同意しないわ(取引しないわ)
The 1950s shit they want for me
彼らが私に望んでいる1950年代のたわごとよ
I just wanna stay in our lavender haze
私は(私たちの)ラベンダーヘイズにただとどまりたいだけ

Taylor Swift『Lavender Haze』より

 Lavender hazeが、彼女にとっての安心安全な場所なのか?現実の世界とは切り離された場所のような印象は受けました。ユートピアのようなものなのかな、とか。

All they keep asking me(All they keep asking me) 
彼らはみんなたずね続けるわ(彼らはみんなたずね続けるわ)
Is if I'm gonna be your bride
私があなたの花嫁になる場合
The only kinda girl they see
(The only kinda girl they see)
ただ若いだけの女性と彼らは見なすでしょう
(ただ若いだけの女性と彼らは見なすでしょう)
Is a one-night or wife
一夜限りか妻か
I find it dizzying(Yeah,oh,yeah)
私はめまいがすると思う
They're bringin' up my history(Yeah,oh,yeah)
彼らは私の歴史を育てている
But you aren't even listening(Yeah,oh,yeah)
でも、あなたは全く聞いていない

Taylor Swift『Lavender Haze』より

 なかなか辛辣な言葉が並んでしまっているように感じました。また、この部分も「I've been〜」の監視されているがゆえの内容になっているように感じました。自分が花嫁になる時の周りのリアクションを考えざるを得ない状態に追い込まれてしまっているとしたら、ゾッとしてしまいます。「I find it dizzying」はまさに彼女が周りへの抵抗を示した歌詞のようにも思います。また、そのあと「They're bringin' up〜 」の部分も監視への皮肉を込めているように感じました。そして、「But you aren't〜」の部分の「you」は、最初Taylorの歴史を育てている「彼ら」のことを「あなたがた」と言う単語に置き換えているのかなと思い訳しましたが、あの「美しく処理した」「あなた」なんですね。

Oh
あぁ
I feel
私は感じる
The lavender haze creepin' up on me
ラベンダーヘイズが私に忍び寄るの
So real
とてもリアルに
I'm damned if I do give a damn what people say
私は人々が言うことを気にしてしまって、忌々しい
No deal
同意しないわ(取引しないわ)
The 1950s shit they want for me
彼らが私に望んでいる1950年代のたわごとよ
I just wanna stay in our lavender haze
私は(私たちの)ラベンダーヘイズにただとどまりたいだけ
The lavender haze
ラベンダーヘイズ(に)

Taylor Swift『Lavender Haze』より

 この部分は、ラベンダーヘイズについてずっと歌われています。“周囲の雑音がない場所に私とあなたのふたりでずっといたい”と言うことが強く伝わってきます。ここで気になったことが、何度か繰り返されている「1950s shit 」。この部分は時代背景も把握しないと理解できないかもしれない、と思い調べてみました。

  1950年代はフェミニズム第二波の時期。女性の外見や“笑顔でいること”といったイメージへの抵抗が示された時期になるんですね。また、“家庭的な女性”と言った性別で決められてしまった役割から脱するように声を上げた時期でもあるとのこと。Taylorが描いている歌詞の内容は、周りから押し付けられる“女性像”へのアンチテーゼなのかなと思いました。今この曲を発表すると言うことは、彼女自身が今の時代にもなおそのような言葉をぶつけられてしまっていることを表しているのではないか、とも思えてしまいました。私にも(彼女の比では絶対にないですが)、“今の時代にこんなこと言う人いるんだ”って失望した経験がありました。そして同時に、時代がだんだん変わっても変えられない考え方とか変われない人っていることを目の当たりにしました。

Talk your talking, go viral
あなたの話をして、バズるわ
I just need this love spiral
私はただ愛の螺旋が必要なの
Get it off your chest
あなたの胸から取り除いて
Get it off my desk(Get it off my desk)
私の机から取り出すわ(私の机から取り出すわ)
Talk your talking, go viral
あなたの話をして、バズるわ
I just need this love spiral
私はただ愛の螺旋が必要なの
Get it off your chest
あなたの胸から取り除いて
Get it off my desk
私の机から取り出すわ(私の机から取り出すわ)

Taylor Swift『Lavender Haze』より

 「go viral」を「バズるわ」と訳すのはちょっと新鮮でした。love spiralはどうしても上手く訳せないので、アルバムの歌詞カードの和訳も見てみます。また、chestとdeskの関係をもう少し考えたいなと思いました(最初は整理ダンスと訳そうかと思ったので)。

I feel(I feel)
私は感じる
The lavender haze creepin' up on me
ラベンダーヘイズが私に忍び寄るの
So real
とてもリアルに
I'm damned if I do give a damn what people say
私は人々が言うことを気にしてしまって、忌々しい
No deal(No deal)
同意しないわ(取引しないわ)(同意しないわ(取引しないわ))
The 1950s shit they want for me
彼らが私に望んでいる1950年代のたわごとよ
I just wanna stay in our lavender haze(Oh)
私は(私たちの)ラベンダーヘイズにただとどまりたいだけ(あぁ)
Get it off my desk
私の机から取り出すわ
The lavender haze
ラベンダーヘイズ
I just wanna stay
私はただとどまりたいだけ
I just wanna stay in our lavender haze
私は(私たちの)ラベンダーヘイズにただとどまりたいだけ

Taylor Swift『Lavender Haze』より

 では、改めてLavender hazeとは何なのか?周りの雑音が届かないところ。ふたりのユートピア。ありきたりかもしれませんが、彼女が心穏やかに過ごせる場所なんだと思いました。パパラッチによる過剰な取材、SNSでの誹謗中傷。そこから避難するための場所を、真夜中に空想し描きたかったのかもしれません。また、「1950s shit」 の部分が繰り返し歌われているのは、彼女が有名人だからではなく、あくまでも彼女もまた「他の女性とは変わらないひとりの女性」であることを伝えたかったのかな、と思いました。彼女に対して、これまで以上に心身ともに穏やかでいられることを願います。
 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

In sleepless nights