見出し画像

親の影響で読んだ漫画①

漫画の多い家で育ちました。具体的に言うと、4人家族で5LDKの一軒家のうち2部屋が漫画(と少しの小説)で埋まっていた。

ゲームやPCにはそこそこ厳しい家だったけど、漫画についてはかなり寛容だったのと、漫画であっても本であれば上限はあるにせよ結構買ってくれるような環境だったので、特に卒業する理由もなく今も漫画好きです。

ところで私の親はそろそろ還暦に近いくらいなのですが、そうなると当然私が生まれる前に出た漫画や学校で流行るのと違うジャンルの漫画が家に並ぶことも多く、そういった環境がかなり読書(漫画)体験を豊かにしてくれたなあと思います。
なので記憶の整理も兼ねて、細々と紹介できたらと。

※なるべくぼかして書いてますがうっすらネタバレがないこともないので、これから読むよ!という作品があったら薄目で読んだほうがいいと思います


①萩尾望都『訪問者』

表題『訪問者』は、ギムナジウムを舞台にした長編漫画『トーマの心臓』の番外編(サブキャラが主役の前日譚)に当たるのですが、私は『トーマの心臓』よりこっちの方が好きです(『トーマの心臓』はかなりキリスト教的な思想バックグラウンドによって描かれているものなのもあって、そのあたりの思想が弱い私にはかなり遠く感じられたのもあり…)。
こちらにもキリスト教思想の話は出てくるのですが、『トーマの心臓』よりかはわかりやすいので読みやすいです。

父と母、それに犬。全く何も問題がないわけではないけれど、不幸ではない平和な日々。それが、母の死により一変する―――そしてその元には、オスカー自身の出生の秘密がある。

逃避行とも呼べる父との旅の果てで、

ほんとうに 家の中の子供になりたかったのだ―――

こう思ってしまったときにはとっくに、オスカーはもう『家の中の子供』に自分が還れないことを悟っていたのだと思います。そう思えるほどに家族が大事だった。
”父”にとっての訪問者が自身の顔をしている=自分が家(家族)と思う”父”にとっては異物であったともう解っているから、二度と『家の中の子供』にはなれないけれど。

誰が悪かったのか?というといや大人みんなかな…と思うんですが、しかし殺し殺されるほどの大罪かと言われるとううん、ともなる。時間軸が後になる『トーマの心臓』でもオスカーはこの時の話を少ししていますが、そういう機敏も含め色々と理解できてしまう聡い少年であったのがオスカーの幸運でもあり不運でもある部分だなあと思ったりします。
あとこの話すごくラストシーンが綺麗なのでオスカーの涙が際立ちます。良い。

萩尾先生は『トーマの心臓』とか『ポーの一族』あたりの長編が有名かなあと思うんですが、個人的にはこの『訪問者』とか『アメリカン・パイ』みたいな切なめ短編が好きです。この辺はたぶん母に趣味が似た。
あと『アロイス』とかのホラー系短編。これ電子書籍化されてないっぽいですね…?ラスト1ページでぞっとするやつです。双子ホラー好きな方はぜひ。グロはないので安心して読める。


②波津彬子『雨柳堂夢咄』

雨柳堂という骨董品店に集まる”想い”が籠もった骨董品たちと、主人の孫・蓮を中心としたオムニバス。

骨董品×物の怪×美青年、オタクが好きな要素しかないのにあまり周りに読者がいないのでしょっちゅう人に勧めています。本当に絵が美しいのでぜひ電子版でも文庫版でもなく大判のコミックスで読んでほしい…
個人的には泉鏡花が好きな方は確実に好きだと思っています(波津先生は実際に泉鏡花の作品のコミカライズをやられてます。これもすごく良い)

ジャンル的にはオカルトや怪奇系にはなると思うんですが、びっくり系のホラー要素は全く無く、『不思議』『綺麗』が紙いっぱいに広がっている贅沢な漫画です。幻想文学漫画。
主人公の蓮は『物の想いを感じ取れる』という体質ですが、物を使って人の望みを叶えるのではなく、”物の望み”を叶えるというところが好感度が高いです。蓮の視点が(特に人間に対して)フラットなのもあり、物に宿る想いが良くなるか悪くなるかも使い手である人間次第、といったスタンスでストレスが少ないです。
そして出てくるものの作画が骨董品としての説得力がありすぎる…”価値あるもの”として描かれる物体が本当に凄まじい筆力です。

何回も言いますが全巻絵も話もクオリティが高く、オムニバス形式で入りやすいので本当に是非読んでください。絶対損はしないので…
私は唐子人形の話と虎石の話が好きです。


③吉田秋生『BANANA FISH』

まさか現行ジャンル(2018)になると思ってなかった。多分最初に読んだのは2009年くらいだと思うので、当時はアニメ最終回放映後泣きすぎて硬直している友人に光の庭収録のアナザーストーリーをそっと差し出す未来が来るなんて言うのは想像していなかったわけでして…

個人的にこの話の一番しんどいポイントは、才色兼備の”化け物”であるアッシュがそれでも『人間』だったという点に尽きます。人間だからこそ英二やショーターに心を許し、南瓜は嫌いだし、トラウマもある。けれど冷徹に合理的に生き残るために残酷に人を殺せる化け物でもある。『化け物が人間になる』のではなく、人間である面も化け物である面も両方が膨らんでいくのがアッシュの描き方のすごい点だと想います。
人間性の開示と同時に非人間性の開示も加速していく展開の中、アッシュの恐ろしい”化け物”の面を見てなおアッシュを人間として、友人として手を取ろうとする英二の在り方もただただ尊い。
それら全てがアッシュの”結末”に繋がる、本当に美しくも悲しいラストシーンだと思います。

ところで、私は初読でアッシュと英二以外にもシン・スウ・リンと李月龍の関係が非常に琴線に触れたのですが、世界観が地続きの『YASHA』で見事に打ちのめされることになったことを記録しておきます。
個人的に『YASHA』はキャラも話もBANANA FISHに負けず劣らず面白いと思っているので流れでアニメ化しないかなと思っていたのですが(BANANA FISHのクオリティでやれるなら全然文句がない)、内容が内容なので先五六年は無理だなあと思って勝手にしょんぼりしています。
雨宮凛と三上尊の共依存関係がとてもとても危うくて良いです。よければぜひ。


5作品くらい書きたいなと思ったら2500字を超えてしまった。
まだまだあるのでちまちま書いていけたらいいなと思います~あとオススメの漫画などあったら是非コメントで教えていただけると嬉しいです。では。

この記事が参加している募集

#スキしてみて

525,870件

#マンガ感想文

19,984件

何かしらの鑑賞に回ります