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ストーリー的な演出がゲームの自由度を制約するとき【4】

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※今回の記事には「タイタンフォール2」のキャンペーンモードのネタバレ(ボスキャラの登場演出等)を含みます。

「タイタンフォール2」のキャンペーンにおけるボスキャラの演出の例

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前回、ラスボスへの攻撃がダメージ0になる仕様とその解決法を、架空のゲームを例に書きました。今回は同様の問題について「タイタンフォール2」のキャンペーンモードを例に考えてみたいと思います。

「タイタンフォール2」は個人的に大好きになったゲームです。手に汗握る戦闘やアクションが楽しめたとともに、ロボット(タイタン)であるBTと主人公の絆を描くストーリーにもとても感情移入しました。

そしてストーリー演出上の興味深い発見がいくつもありました。

ボスキャラの無敵化をうまくゲームルールに乗せている

動画は、敵傭兵部隊の一員でボスクラスの敵、リヒターの登場場面です。上空から「タイタンフォール」してきたあと、カメラがよってリヒターの台詞とアニメーション(動き)が再生されます。

制作者目線で言うと、この場面ではプレイヤーにやって欲しい事とやって欲しくない事があります。それは次の2つ。

・登場演出を見て欲しい。
・登場演出中に攻撃しないで欲しい。

それを、プレイヤーに違和感を感じさせることなくうまく実現しています。

ファーストパーソン視点ゲームの永遠の課題として、「カメラ移動がプレイヤーに任されているので、見せたい演出を見てくれるとは限らない」「表情など細かい演技を見せたいなら、実際に主人公の近くでその演技をさせないといけない」というのがあります。

まず「登場演出を見せる」ことについては、カットシーンにすることで解決しています。カメラを寄せることでリヒターの演技を見せるとともに、そのカメラ移動を「カット割り」することなく主人公視点からシームレスに動かすことで、没入感が途切れるのを緩和するという工夫もあります。

次に「登場演出中に攻撃させない」についてですが、まずカットシーンにしていることで半分は解決しています。この演出中はプレイヤーは行動できません。

興味深いのは、登場した直後からカットシーンに入るまでの「無敵化」のしかたです。

ここの場面ではリヒターがプレイヤーから近い位置に出現してしまう可能性があり、その場合、リヒターを無敵化しないとカットシーン前に攻撃できてしまいます。そうなると、チートっぽい手段によってシューティングゲームとしての難易度のバランスが崩れるという問題と、攻撃を受けた後にリヒターがカッコつけた台詞を言っても不自然という演出上の問題が発生してしまいます。

なので制作者としてはぜひ「無敵化」したいところです。ところが、少なくないプレイヤーが攻撃する可能性がある場面で単純な無敵化をしてしまうと、「敵は撃ったら死ぬ」という根本的なルールがねじ曲がった瞬間を少なくないプレイヤーが体験してしまいます。その人たちにとっては、それこそシューティングゲームとしての楽しさが損なわれた場面となってしまいます。

それをどう解決するか。この場面の制作者は、ゲームルールを曲げない方法でボスを無敵化しました。

もう一度動画を見てみてください(今度はおついちさんの実況プレイ動画です。こちらの方がリヒターが近くに出現します)。

タイタンフォールしてきたリヒターのタイタンの周りにオレンジ色のバリアが張られています。これはドームシールドと呼ばれるものです。リヒターはこのシールドで守られているため、プレイヤーの攻撃は効きません。

興味深いのは、このドームシールドによる無敵化はこの場面だけの特殊処理ではなく、ゲームのグローバルルールになっている点です。キャンペーンモードの別の場面や、マルチプレイモードにもドームシールドがあり(と言うよりこのゲームは元々マルチプレイ対戦がベースなのですが)、タイタンフォール後しばらくの間、タイタンを無敵化します。

このように「無敵効果のあるドームシールド」というゲームルールを利用してボスを無敵化し、演出を成り立たせています。これは上手いなあと思いました。

別のボスについても見てみたいと思います。

(続く)

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