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ストーリー的な演出がゲームの自由度を制約するとき【5】

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※今回の記事には「タイタンフォール2」のキャンペーンモードのネタバレ(ボスキャラの登場演出等)を含みます。

「タイタンフォール2」におけるボスキャラ登場時の無敵処理について

前回はリヒターの登場演出について記事を書きましたが、ほかのボスの登場演出も工夫が素晴らしかったので、今回は残りのボスについて書きたいと思います。

ケインの例

最初に遭遇するボスです。ケイン登場のカットシーンは、プレイヤーが坂道を登っている途中で開始します。坂道があるためにプレイヤーはケインを視野にとらえることができず、演出開始前に遠距離から狙撃することはできません。

カットシーンが終わるとプレイヤーの位置がワープしていて、遠いながらもケインを視野中央にとらえる位置関係になります。この時に背後のシャッターが閉まっていて、ボス戦中に前のマップに逃げられないようになっています。

カットシーン中にプレイヤーの位置をワープさせる処理はよくある手法ではありますが、ゲーム進行中にそれを行う場合は慎重に設計する必要があります。操作してないのにキャラの位置が変わるわけですから、自分がどこにいるかの感覚が混乱したり、プレイヤーキャラとプレイヤーの同一感が削がれて没入感から醒める可能性があります。

でもここでのワープについて、私は違和感を覚えませんでした。おそらくそれは坂道を登っている最中にカットシーンが始まるからだと思います。私の脳内では、登場演出中も自分のタイタンは坂を登り続けており、演出が終わった時に登り切って立ち止まった、という感覚でいました。

もし立ち止まった状態でカットシーンが始まり、それが終わった時に別の位置にいたら、もう少し違和感があったのではないかと思います。

それと、自分がタイタンという乗り物に乗っているという点も大きいです。乗り物なので、自分が何も入力していない時に動き続けていても違和感が比較的小さい。実はこれは戦闘機に乗るエースコンバットでも同じことがいえます。一方で自分が主人公キャラ自体を操作するゲームの場合は、入力していないのなら立ち止まるべきという感覚が強まるように思います。

話をケインの登場に戻します。

まとめると、ケインが見えない状態でカットシーンが始まり、その映像中にケインが登場、演技が終わるとカメラは主人公視点まで戻ってきてプレイ再開。こうする事で登場演出前やその最中に攻撃することを防いでいます。

そしてさらにゲームが再開した直後、ケインと主人公との間に雑魚ロボットがタイタンフォールしてきてドームシールドを張ります。これでカットシーン終了直後にケインを狙撃することを不可能にしています。この雑魚タイタンの配置は明らかに意図的なもので、たまたま射線を塞いでしまったというものではありません。

この時ケインまでは結構距離があるので、私の腕ではとても命中させられないし、させられたとしてもゲームバランスを崩すほどでもない気はしました……が、ケインは1番はじめに戦うボスであり、プレイヤーが使える兵装も限られるので、できるだけ制作者が設計した通りの楽しさを体験して欲しかったのかもしれません。

アッシュの例

アッシュの場合、このボスと戦う「決戦エリア」の入口にコリジョンが設置してあるようで、そこを通るとカメラが飛んで演出が始まります。

カットシーンが始まると、アッシュのタイタンはプレイヤーの前方遠くにあるトンネルから走って出てきます。そして「決戦エリア」に入ったところで、登場演技をします。

演技が終わるとカメラがプレイヤー視点に戻りますが、そのカメラ移動の最中にアッシュは「フェーズダッシュ」という技を使って消えます。これは「ローニン」タイプのタイタンが持っている技で、約1秒間敵から姿を消し無敵状態で移動できます。

この技を使うことで、カットシーン終了直後を無敵化しています。アッシュはカットシーン終了後、「決戦エリア」内のプレイヤーに近い位置にワープアウト? して登場します。

ここでもグローバルなゲームルールをうまく使って、ボスキャラを無敵化しています。

バイパーの例

続いてバイパー。空を飛びながら攻撃してくるこのボスと、空飛ぶ戦艦の上で戦うことになります。

バイパーの登場地点に近づくとやはりコリジョンが設置してあるようで、その場所を通るとカットシーンが始まります。映像中に画面下からフレームインするような形でバイパーが登場。「カットシーン中に登場させる」という手法で登場演出前の攻撃を防ぐ手法としてよく使われているようです。

カットシーン終了後の無敵処理はないように見えますが……ここは空中を移動する敵ボスをうまく狙撃する遠距離戦として設計されているので、カットシーン終了後に遠距離狙撃するのはOKとしたのかもしれません。

スローンの例

登場前に窓越しにチラ見せして「あ、あそこに何かいる!」と思わせています。しかし窓には防弾ガラスが張られていて攻撃できません。そこで少し回り込んで窓の向こうのエリアに通じる扉を発見し、それを開けようとボタンを押した瞬間からカットシーンが始まります。

扉を開く映像がすでにカットシーンなので、プレイヤーは登場演出前にスローンを撃つことはできません。スローンがしゃべり終わると戦闘開始。戦闘後の無敵処理はありません。扉からスローンまでの距離が近いので、いきなり中距離の戦闘になります。

ボスを遠方に登場させれば、登場演出中にプレイヤーが攻撃することが難しくなります。でも逆に戦闘が始まったときに遠距離戦になってしまいますので、ボスと中距離戦をさせたいなら痛しかゆしです。

バイパーの時のように遠距離戦でよいならいいのですが、ゲーム的に中距離戦がさせたい場合は、アッシュの時に「フェーズダッシュ」させたように、何らか距離を詰めさせる方法が必要になります。

そんなときに扉は便利です。扉を開けたらいきなり中・近距離で戦闘開始ということも可能ですから。でも多用すると不自然になってしまいます(ボスの前にはいつも扉がある……)。

じゃあどうするのかというのは、ゲームデザイナー・レベルデザイナー・ナラティブデザイナー・ディレクターが議論をし、アイデアをひねり出さなくてはなりません。

スローン戦で消えるブリスクについて

スローン戦のカットシーンではスローンとブリスク(敵傭兵部隊のボス)の2人がいるんですけど、カットシーンが終わるとブリスクがいなくなっていて、戦闘ではスローンだけになっています。カメラがスローンに寄ってブリスクがフレームアウトした時に消しているようです。

このことについては色々と考えるところがあったので、次回書きたいと思います。

(続く)

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