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楠本奇蹄
2021年8月21日 16:13
気が付くと、ステアリングを握り、夜の道を走っていた。片側二車線の、ゆったりした通りだ。対向車線との間には、中央分離帯がある。空には星が見えて、走っているのは私だけ。そのうち、緩やかな登り坂に差しかかる。自動車教習で、お馴染みの?そう、教官からハンドル捌きをたびたび指摘された場所だ。道の両側は鬱蒼とした林。カーブで見通しは良くないが、信号はすべて青。それにしても、真っ暗だ。道路灯も
2021年8月21日 01:28
てのひらで蟬が自由になつてゆく抑鬱やカフェオレの層涼しかり蛸やいま五浦を逃げてゆくたましひスクランブルエッグ素足に骨が遊ぶ呼ぶこゑの何も纏はず遠花火朝凪に犬の眼をして始発動く今朝の秋コップに当たる泣けない歯珈琲の知らずにこぼれ敗戦日虫鳴くや土の匂ひの抑留記阿剌比亞の子音は溶けて星月夜✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
2021年8月6日 12:24
冷や汁を緻密な風として掬ふ溽暑かな化石にはつめたい羽毛姉の血透けて夕凪の主語となりビリヤニの匙ひるがへり夏の雲青葉騒つづくいつかの詩の終はりに味噌汁の渦おさまらず夏休鼻歌の妣は銀河に着地して血のなかに薬の澱む暑さかな恐竜にいつかの木漏れ日の涼しさ鬼灯のなかに大事な人がゐる✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎