いちばんワクワクする地域の未来を考えたら、ふるさと食体験と保育園留学にたどり着いた。
キッチハイク「ふるさと食体験の準備室」メンバーインタビュー、第1回目は代表取締役CEOの山本雅也(@masaya_yamamoto)さんです。
コロナ禍における事業の変化から得られたこと、そして、根幹にある「食でつながる」魅力とおもしろさ、これからの展望について話を聞きました。
「ふるさと食体験」をきっかけに、北海道厚沢部町へ「保育園留学」
―この夏は、家族で北海道に滞在してましたよね。「保育園留学」という発想が素敵でした。
北海道の南、函館から車で1時間の距離にある厚沢部(あっさぶ)という町に3週間滞在しましたね。「世界一素敵な過疎づくり」をスローガンに掲げている地域。知ってます? 道外では、まだなかなか知られていないみたいで。
昔、大学の時にバイクで北海道1周したんですが、自分自身もはじめて町名を聞いたときは、あれ?厚沢部町ってどこだっけ?と思いました。これは正直に言っておきます(笑)。
でも、不思議なもので「ふるさと食体験」をきっかけに厚沢部町の存在を知ったら、もう魅力だらけで。実はメークイン発祥の地で、アスパラや黒豆、お米の栽培も盛ん。
特産のメークインは、ホントにとんでもなくおいしいです。それになんといっても、厚沢部町の方たちがいい方ばかり! 温かくて穏やかで朗らか。今や我が家にとって、第二の故郷のように思ってます。
―2歳の娘さんですよね。山本さんの溺愛ぶりは社内でも有名ですから(笑)。それで、厚沢部町の保育園にしばらく行ってみようとなったんですか?
そうですね。今年の1月に開催された厚沢部町の「ふるさと食体験」をきっかけに、町の雰囲気や地域の食を知って。それから、どんどん興味が湧いてしまったんです。で、たまたま保育園ってどんな感じなのかな?って調べてみたら、感動するほど素敵な園があって!
7月に娘が2歳になって、言葉も興味の対象も一気に増えて、こんなご時世だけど、もっといろんな経験をさせてあげたいなぁ、いろんな景色を見せてあげたいなぁ、という親心が日に日に強くなっていた時だったんです。なので、もういっそのこと、家族で丸ごと行けないものか!ということで、役場の津野課長に率直にぶつけさせてもらいました。
それから、保育園を立ち上げた木口係長や園の先生方、お試し住宅を運営する素敵な過疎づくり株式会社の赤石さんをつないでもらい、滞在を全体設計させてもらった流れですね。
photo by Ikuya Sasaki
それが、今回通わせてもらった厚沢部町の認定こども園「はぜる」です。園や町の素晴らしさはもちろんながら、役場の皆さんも、園の先生方もとても気にかけてくれて、本当にありがたい幸せな体験でした。厚沢部町の皆さんに、感謝してます。妻も娘も毎日すごく楽しそうでしたね。
― Instagramでも保育園留学日記してましたよね。本当に楽しそうでした。
地域への入り口が「食」なのは、本当にいいと思います。食をきっかけに地域や地元の人とつながって、関わる人みんなの人生が豊かになるサービスをつくりたいと思ってますから。
「ふるさと食体験」に参加した人が、それぞれの形で地域に入り込んでいくような、そんな深く長く続くつながりをつくりたい。
我が家の場合は、保育園留学っていう家族ごと地域の暮らしに飛び込む形になりましたが、どんな人でもきっかけさえあれば、後はオンラインやECもあるし、最近はワーケーションとか移住も多拠点暮らしもあるし。
きっと仕事や新しいプロジェクトにつながったりとか、いろんな展開があり得ます。食から始まる多彩な広がりが、自然に起きるようにできたらと思いますね。
―「ふるさと食体験」をきっかけに、現地まで足を運ぶ人や家族が増えたらいいですよね。
現地訪問ももちろん始まりにすぎないというか。実際、自分の場合は、保育園留学を終えて、都会に戻ってきて、あぁ北海道、厚沢部町よかったね、で終わりではなくて、まさにここから家族ぐるみの関係人口が始まるので。
娘が成長していくこれからの時間も含めて、厚沢部町との関係を紡いでいける。まちがいなくまた行きますし、もしかすると向こう100年くらい厚沢部町のメークインを取り寄せ続けるかもしれませんからね(笑)。
世の中にまだない豊かな遊びを発明して、みんなができるようにしたい。
―先ほどの話にしてもそうですが、山本さんがやりたいことって、明確ですよね。
すごくシンプルに言うと、「世の中にまだない豊かな遊びを発明して、みんなができるようにしたい。」もう、これに尽きますね。これが本音です。この世界の豊かさを味わえて、且つ社会がよりよくなっていくようなワクワクする座組みを考える。で、「これいいと思うんだけど、みんなも乗っからない?」というのが原動力ですね。
今こうして娘も生まれて、自分も30代後半になり、会社自体も大きくなって、責任をいろいろ背負うようになりました。そんな中で思うのは、その発明した遊びを通して、社会がより良くなっていくというサイクルをいかにつくれるかということ。無理なく続くよう仕組み化するのも大切。
でも、やっぱり原点は、ワクワクするとか、なんか楽しそうだからやってみたい!という気持ちで人が動いて、結果的に世の中が良くなっていくというのが、キッチハイクらしさだと思ってますね。
―コロナ禍でキッチハイクの事業内容が変化しても、根本的な「らしさ」は変わってないように思えます。
そうですね、根っこの部分は変わらないけど、実は2つ、コロナ禍に見舞われたことで変化があって。ひとつは、関わるステークホルダー全方位での価値づくりをする事業に大きく移行したこと。
コロナ以前は、主に個人ユーザーを対象にしたサービスでしたが、今は「ふるさと食体験」を通して、地域全体や行政の課題解決、地元の事業者さんの魅力を伝えて販路を増やすこと、そして食と旅が好きなユーザーのお楽しみ、もっというと地域の多様性や食文化、歴史といった概念も包括するような食体験プラットフォームになりつつあると感じてます。
もうひとつは、これは娘が産まれたことの影響も大きいですが、より豊かな未来を後世に残していきたい、そういう仕組み作りをしたいと改めて思うように。地域と人と暮らしがテーマなので、いかに魅力あったとしても、瞬間的なもので終わらせないといっそう心掛けるようになりました。
「ふるさと食体験」に関わってくださる方々に価値が届いてると実感できることは、コロナ禍での大きな励ましになりましたね。必要とされる機会が一気に増えた気がしてます。
―事業が広がる一方で、キッチハイクのらしさや哲学がより深くなっているイメージもありますが、そのあたりどうなんでしょう?
そうですね。今、キッチハイク全体の哲学を「もっともぐもぐ、ずっとわくわく。」と定義してます。食をきっかけに、人生が予想していなかったほうに転がしていく。もちろんいい意味で。予定調和を外れているんだけれど、可能性に満ちている体験をつくる。言ってみれば、偶有性の高さが最大の特徴ですね。
―「偶有性」とは、どういうことですか?
端的にいうと、「想像を越える出来事に出合えるかどうか」というポジティブな意味で使っています。食べることを通して、人と人、地域、食と文化との出会いに偶有性を高めることなんです。キッチハイクは、もちろん自分の手で仲間と一緒に生み出したものですが、それと同時に、自分やチームを成長させてくれる、なんというか、羅針盤みたいな感覚もあるんです。なので、その羅針盤に導かれた僕やメンバーの人生も、予定調和を外れてわくわくする方へ転がっていくという(笑)。
「ふるさと食体験」に参加してくださるユーザーさんや、ガイドしてくださる地域の方など、キッチハイクに関わった方たちみんなが、いい意味で人生が予想していなかった方に転がっていっているのではないかと。地域の食そのものの素晴らしさはさながらですが、食でつながる一番のおもしろさは、そこにあるんじゃないかな。でも、つながりをつくるって、偶有性を高めることに他ならないですよね。
これは、創業時に世界中の人の家を訪ねて、ごはんを食べ歩いて、たくさんの人とつながった時の感覚が深いところで流れているんだろうなぁと思います。
― なるほど。確かに、食でつながることは「偶有性」の高い体験ですよね。出会いや驚き、発見がたくさんあります。
先が読めないんだけど、でも楽しいことはわかっている、みたいな状態を、僕は人生の豊かさのひとつだと思ってます。保育園留学も行ってみたら、想像以上に本当に楽しくて。娘も大自然の中で駆け回ったり、じゃがいもやブルーベリーを収穫したり、先生や新しい友だちと遊んだり。都会の日常では体験できないことをたくさん味わえて。
「ふるさと食体験」の延長線上に、保育園留学が待ち受けているなんて、僕自身思いもよらなくて。偶有性の高いサービスをつくりたいなぁと常々思っていますが、まさかここで自分が体験することになるとは!改めて、キッチハイクが好きになりました(笑)。
― 山本さん自身が思いがけない展開になったものの、すごく楽しんでる。それは、キッチハイクのメンバーにも大きな影響を与えていると思います。
いや、最近メンバーが頼もしすぎて、僕がリードしていたつもりが、もう僕じゃなくて、メンバーがリードした方が、キッチハイクが成長するんじゃないかって思う瞬間が多々あります。これはとても喜ばしいことで、頼りになるメンバーの研ぎ澄まされた意思決定に委ねていった方が、価値の総量も迫力も出るというか。
やっぱり、代表の能力が組織の上限になったらいけないですから。だから、今、自由に動くメンバーを見ているとすごくいいなと思ってますね。このままだと、すべて事後報告されて、いいね!しか言わない人になってしまうのではと(笑)。本当に頼もしい!
―とにかくメンバーへの信頼が厚いですね。となると、山本さんのポジションって、自分ではどう捉えているんですか?
まだない価値をつくりながら急成長しようという渦中にいると、平常時と非常時がくるくると入れ替わりながら訪れると思うんです。キッチハイクは、自己資金時代を4年、資金調達をしてから5年が経ちました。特にこの1年半はコロナ影響が直撃したり、本当にいろいろあった9年目の今、心がけていることは意外にシンプルで。
平常時は、とにかく横に。着実に積み上げるイメージで、提供価値の深堀り、組織の強化、チームカルチャーの磨き込みに注力します。特にキッチハイクの場合は、メンバーの責任と裁量も大きいほどいいと思いますね。非常時は、とにかく縦に。0→1や×10、×100の可能性があることに挑戦を重ねる。前例がないほどいい。解像度高く、速く、実践しまくる。自分の場合は、体感を伴って生み出すのが好きですね。
コロナ禍で既存のサービスを休止せざる得なかった非常時を経て、「ふるさと食体験」という地域のための食体験プラットフォーム事業がようやく形になってきた。おかげさまで今、1年半ぶりに大きくは平常時に移行していますね。と言いつつも、常に非常時モードの部分もあるし、結果としては斜め上に進化していくような感じです。
―ふるさと食体験もまだまだバージョンアップしていきそうな気配があって、私たちもわくわくしてます。だからこその新メンバー募集なわけですね? こんな方に来て欲しいというイメージはありますか?
まず、今のメンバーは、本当に個性豊かな人ばかりで自慢ですね。共通しているのは、giveの精神を持っていることでしょうか。
― 今いるメンバーは、ホントに食が好きで、楽しく仕事するのが上手な気がします。受け取るよりも、与えた方が楽しいという人ばかりです。
そうですよね。ホスピタリティ精神が旺盛というか、人を喜ばせることが自分の楽しみにつながると思ってますよね。そういう人をあえて選んで採用しているわけではなかったんだけれど、自然とそうなっていますね。
あとは、みんな、変化に強い!さっきの話で言うコロナ禍の非常時に、さぁこれからどうするかって局面で、ここでは言えないくらい死ぬほど悩んだけど(笑)、メンバーの柔軟さと適応の速さ、それから楽しむ姿勢に、自分も会社も救われたと思ってます。みんな、本当にありがとう!!
―ですね。予期せぬことに遭遇したら、むしろみんな楽しんでいるというか。山本さんが大切にしている「偶有性」が、メンバーにも浸透しているのだと思います。
コロナ禍もまだまだ油断できないし、たいへんな状況の中で苦労している人もたくさんいる。変化が早くなる一方の時代に僕らは生きてるわけで、いっそう柔軟さが求められるんだと思ってます。
その中で、「ふるさと食体験」に参加してくださるユーザーさんや、地域の方々たちといっしょにいかに楽しめるか?食を通して、地域のよさや地元の方たちとこの先、どんな関係を築いていくか?どんな未来を描いていくか?自由に動ける頼もしいメンバーと一緒にこれからもチャレンジしていきたいですね。
山本 雅也(やまもと まさや)
キッチハイク代表取締役 / CEO
1985年、東京都生まれ。三度の飯より家飯が好き。
早稲田大学商学部卒業後、博報堂DYメディアパートナーズ入社。出版社×デジタルの新規事業、クライアントソリューションの提案を担当。退社後、食でつながる魅力にハマり、世界各国の見知らぬお宅の食卓を訪ねる旅に出る。
著書『キッチハイク!突撃!世界の晩ごはん』(集英社)
<趣味>
娘と妻。探検。ワクワクする遊びを考えること。
<好きな食べ物>
サムギョプサル。ビール。鴨。
<暮らしの変遷>
東京で生まれる。27歳の時、450日をかけて、東廻りに世界で120以上の街を周遊。現在の拠点は、浅草・上野・横浜。ときどき北海道檜山郡厚沢部町。
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キッチハイクは、全国各地から食と文化と交流に興味がある仲間を探すべく、「ふるさと食体験ができるまで」をコンセプトに、ふるさと食体験を一緒につくっていく準備室メンバーを募集します。
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