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生産者の想いを応援できる社会に。自分が一番イベントを楽しむことで「おいしさ」を引き出す

「ふるさと食体験の準備室」インタビュー、第10回目は名嘉あづささんです。

イベントのファシリテーターとして生産者と参加者を繋いでいる名嘉さん。プライベートではログハウスで里山暮らしをしているそうです。ファシリテーターとして意識していることやイベントへの想いを伺いました。

私自身が楽しくないと参加者の方も面白くない

――名嘉さんは現在、キッチハイクとその他ご自身でも様々なお仕事をされているとお聞きしました。どんなお仕事をされているんですか?

キッチハイクでは今年の2月ぐらいからふるさと食体験のオンラインイベントのファシリテーターやディレクターを担当しています。イベントの内容を決めて準備を進めていくのと、イベント当日の司会、進行などの運営ですね。

キッチハイク以外の仕事だと、私は環境問題への関心が強いのでエコやエシカルをテーマにしたイベントを運営する団体「暮らしの目からウロコ」という団体を立ち上げました。そちらではオンラインコミュニティを作って毎月イベントを開催しています。あとはコーチングのお仕事として、企業のマネジメント層の方に1on1のコーチングを時々しているのと、SHElikesさんというキャリアスクールのライフコーチもやっていますね。

キッチハイクの「ふるさと食体験」では、ご紹介したい自治体さんや農家さんの魅力をテーマにして参加者と料理を作ったり、生産者さんにインタビューをしながら、参加者さんとの交流を生み出すイベントを開催しています。その地域に移住するまではいかなくても、旅行で足を運んでいただいたり、取り上げた食材や食品を気に入って普段の食卓に取り入れてもらったり、その地域を身近な存在に思ってもらえることが最終的な目的です。

――どんな経緯でキッチハイクに参加されたんですか?

私の仕事仲間で相棒みたいな人がいるんですが、彼女がキッチハイクさんの求人を見て「これ、あづさんにピッタリだと思うから見てみたら」って言ってくれたんです。本当に面白そうなお仕事だったので応募をして、結果的にご縁をいただけたのが参加までの流れですね。

彼女は私と一緒にファシリテーションの勉強もずっとしている仲間だったので、以前から「ファシリテーションのお仕事をしたいね」と話をしていたんです。そこから「一緒にチャレンジしてみませんか?」となって、その彼女も今キッチハイクでアシスタントをしています。コンビを組んで、私がファシリテーターで彼女はアシスタントです。

――もともと相棒なら阿吽の呼吸で進められそうですね。名嘉さんはお仕事でどんなことを一番心がけていますか?

一番心がけているのは「私自身が一番イベントを楽しむこと」ですね。私自身が楽しくないと参加者の方ももちろん面白くないでしょうし、楽しい雰囲気というのは自分自身が楽しんでこそ出るものだと思うんです。

あとは、どんな生産者さんでもそれぞれ紆余曲折があって今があるので、そこの魅力を引き出していく姿勢でお話を聞くようにしています。そのためにちょっと抽象的な気持ちの部分や、価値観の部分に関する質問は必ず入れるようにしているんです。想いは人によって全然違うし、気付きや学びが大きい部分なので、よく深掘りしますね

生産者さんの想いを応援できる社会になってほしい

――確かに、名嘉さんとお話していると自分のいろいろなところを深堀りしていきたくなりますね…。実際に、キッチハイクでこの質問はユニークなお話を引き出せたな、と感じた経験はありますか?

創業100年を超えるような老舗の生産者さんにお話を伺うと、「最初は家業を継ぎたくなくて都会に行った」みたいな紆余曲折のエピソードが必ず出てくるんですよね。だから、事業を継いだときの想いや、継ぐ前と継いだ後の変化をよく聞いています。

この間めちゃくちゃ面白かったのが、創業100年以上続く出汁屋さんの4代目のお話で。親子で代々やられていると思っていたので、「昔から出汁は身近な存在だったんですか?」「出汁屋を継ぐときはどんな想いだったんですか?」と聞いたら、4代目は「実は婿養子なんです」と(笑)結婚してから奥さんの実家が出汁屋と聞いたんだそうです。

100年続く老舗を単純に継いだだけでもすごい体験なんですけど、そこに婿養子で入って継ぐというのは、相当の転機じゃないですか。「外からの目線で新しいことを始められた」というお話の流れでそのエピソードが出てきたときはなんて面白い体験なんだ!と。

――想いを聞くとさまざまなお話が引き出せるんですね。キッチハイクの「ふるさと食体験」の魅力はなんだと思いますか?

オンラインイベントでみんなが同じ体験をするという企画自体が素晴らしいと思います。オンラインイベントで一体感を出そうとしても、頭で考えるだけじゃできないんですよね。生産者さんや食べ物に対する思いがあったり、みんなで体験を良くしようとする気持ちを参加者さんが持ったりすることで一体感が生まれるので。それができている素晴らしいイベントだな、と。

やっぱり生産者さんにスポットを当てることはすごく大事なことだと思うんです。私たちはスーパーでものを買うときに生産者の顔も見えないし、どうやって作られているのかもわからない。でも、実はその裏に一生懸命作っている方がいらっしゃって、命を削って作っているということを知るだけで、おいしさは全然変わると思うんですよね。

コロナで制限があって苦しいところもいっぱいあるんですけど、オンラインで繋がれて新しい気づきを得られるのは、今の時代の良いところ。だからイベントとして大きな意味がありますし、イベントに出てくださる生産者さんはいろんな想いを持って生産されているので、そういう方を応援できるような社会になってほしいです。ふるさと食体験を広めていく意味があるなと思います。

――名嘉さんはコーチングもされているとのことですが、キッチハイクでのお仕事と共通点はありますか?

ファシリテーションとコーチングって近いところがあるんです。質問して引き出して、気づきにつなげていくところが共通点なんですよね。いかに自分自身のことを話していただけるかも大事ですし。緊張しちゃうとうまく話せなくなっちゃうことがあるので、「この人なら安心して話せる」思ってもらえるような雰囲気作りはイベントでもコーチングでも意識しているところです。

そのために、まずは自分自身がやっぱりリラックスしていること。自分自身が緊張しちゃうとそれが相手には伝わるので、始まる前は不安になる気持ちもあるんですけど、その時のコツが「自信はないけど、ある」みたいなスタンスで(笑) オープンな姿勢でいると相手もそういう風になってくださるような気がしています。

時間の流れがゆっくりに。ログハウスで始めた里山暮らし

――名嘉さんは里山暮らしをされているそうですが、どんな経緯で里山暮らしを始められたんですか?

もともと会社員時代から、趣味がアウトドアで山登りとかキャンプが好きだったんですね。夫と共通の趣味だったので「いつか自然のところに住みたいよね」っていうのがずっと理想だったんです。でもお互い会社員だと二人の都合のいい場所で自然に近いところが全然ないんですよね。夫と私の職場の中間点に家を構えると、どっちも片道2時間通勤になってしまって、心身共に疲れたというか。

そんなときにたまたまログハウスのハウスメーカーさんに出会って、モデルハウスに行ったときに「もうこの家以外ありえない!」みたいな感じでものすごく気に入ってしまって。山の近くで薪ストーブを焚いて暮らすことしか頭に描けなかったんですね。

そこで夫と「家は一生だけど会社は一生じゃないよね」という話になりました。私は何もなければ前の会社で60歳まで働いていたと思うんですけど、もし100歳まで生きるとしたらその後40年家はあるわけだから家の方が大事だよねって気づいたときに転職を決めました。

――そこからフリーランスになられたんですか?

そうです。ただ、フリーランスになるぞ!って独立したわけじゃなくて、たまたまベンチャーの立ち上げに業務委託で入ったんです。フルリモートの会社でTwitterで求人を見て、そこもプレゼンテーションをテーマに事業をしていく会社だったので、最初の1年ぐらいはそこでガムシャラに働いていました。

以前からイベントの仕事がしたかったので、本の発刊記念イベントを各地やったり、イベントの裏方みたいな感じで研修の窓口みたいな仕事をしていました。

――それが今のお仕事にも繋がっているんですね。里山暮らしができるようになって、名嘉さんにとって変わったことはありますか? 

今だいたい移住して1年半くらいなんですけど、時間の流れがゆっくりになりました。スローペースな時間を過ごしているし、自然が近くにあると朝にお散歩すると本当に気持ちいいので良い習慣を持てていますね。

あと、お互いの実家が近くて家族みんなが集まれる場所にしたかったので、実家に近いところを選んだんです。母もよく来てくれるし、私も実家に行く機会もすごく増えました。会社員としてフルタイムで働いていたら、自分の家族と会う時間は多分人生で数えて残り100回あるかないかぐらいだったと思うんですよね。でも今は会いに行きたいときに会いに行けるし、おばあちゃんにも生きているうちに会える機会が増えて、本当に幸せだなと思っています。

――家族に会える時間って実は少ないんですね…。家という場所が気持ちいいのって本当あらゆる面で素敵ですね。食生活においても変化はありましたか?

都心からは離れた分、周りにお店がないので、自炊を1年続けたら体がめちゃくちゃ楽になりました。チェーン店やコンビニで売っているものも美味しいんですけど、やっぱり化学調味料とかが入っていたりするので。今は病気もほとんどしないし、肌荒れしたり調子が悪くなることはなくなりましたね。

あまり手料理は得意じゃないんですけど、家で畑やっていて野菜も育てているので、それを美味しく消費しています。この夏はナスとピーマンばかり使っていました。シンプルに炒め物にしたり、バーベキューで丸焼きしたりするのが一番美味しいんですよ。有機肥料だけ使う畑をやっているんですけど、全然美味しさが違いますね。トマトを近所のご家族にお裾分けしたら、そのお母さんから「この子たち、スーパーのトマトは食べないんですけど、これは食べました」って言われて。えーこんな素人が作ってるのに!みたいな(笑) 味が濃くて甘いみたいです。

自然に優しい暮らしをして環境を守りたい

――名嘉さんにとって食はどんな存在ですか?

土から生まれているものはすごくエネルギーがあるなと感じているんです。野菜にしても、あんなに小さかった苗からこんなに大きな葉っぱと実がついて、こんなに美味しい味が出るんだって思うと、大地のエネルギーや地球の恵みを感じます。だからこそ自然に優しい暮らしをして環境を守りたいと思いますね。地球とつながるというか、与えていただいている感じです。

ふるさと食体験でも、私は自分の裏テーマとして環境問題を意識していて。生産者さんに話を伺うと、食材を全部捨てないんですよね。例えば出汁をとった後の鰹節とか、昆布とかも絶対捨てないんです。何か違う食べ物に作り替えたり、肥料に返したりして、何かしらに活用しているそうです。捨てないで別の料理にしたら誰かの体のエネルギーになるし、土に返せばそれは土のエネルギーになる。全部繋がっているなと。だから、イベントでもそのような話が出たときは、皆さんにも「最後まで味わってくださいね」と言っています。

――名嘉さんご自身は今後どんな方と一緒に働いてみたいと思いますか?

人の可能性を感じられる人ですかね。私はどんな人にも無限の可能性があるし、その人らしさがあると信じているんです。そうじゃないと関係性を築くことも難しいと思うので、周囲の人の可能性を信じ合いながら、自分のことが好きな人が良いです。自分のことを好きじゃないと人のことを好きになれないんですよね。自分自身を好きで、自分は良い人生を歩んでいるなと思いながら生きることで、他の人との関係性も良くなっていくと思います。

――名嘉さんご自身のこれまでの人間観が反映されているような、人との関わり方だなと感じました。

そうですね。自分を好きになることってすごく難しいんですけど、好きというのは自分の心の声を聞いてそれに共感してあげて、自分自身を頑張っているねと言える人だと思うので、それをやってみることができれば、一緒に働いている人や、自分の近くにいる人たちとともそういう風に関わり合えるかなと思っています。

名嘉あづさ(なか あづさ)
2021年3月から参画
同志社女子大学学芸学部情報メディア学科卒業。
現在フリーランスとして「ふるさと食体験」のディレクター&ファシリテーターを務める

「自然体の自分を愛そう」をテーマに、自分らしさを発揮しながら、毎日を豊かに、周囲の人達と幸せな時間を過ごせる人の輪を広げたい。エコ・エシカルコミュニティ暮らしの目からウロコ主宰、オンラインイベント企画運営、ファシリテーター、アドラー流コーチとして活動中。自然のそばで暮らす里山ぐらしを実現するため、大手企業・片道2時間通勤からフリーランス&リモートワークにキャリアチェンジ。自宅はログハウス。

<趣味>
登山、家庭菜園、読書、スポーツ観戦

<好きな食べもの>
新鮮なお野菜をまるごとBBQで焼く、シンプルなパスタ、九条ネギ、納豆

<暮らしの変異>
会社員時代は片道2時間通勤
自然のそばで暮らしたいと考え、転職&里山移住
現在はフルリモートにて働いています

キッチハイク「ふるさと食体験」を一緒に作りませんか?

キッチハイクは、全国各地から食と文化と交流に興味がある仲間を探すべく、「ふるさと食体験ができるまで」をコンセプトに、ふるさと食体験を一緒につくっていく準備室メンバーを募集します。

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