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5冊目/綾辻行人『深泥丘奇談・続々』

 綾辻行人先生が、長らく第一線で活躍していると知ってはいたが、恥ずかしいことに一度も読んだことがなかった。今回読もうと思ったのは、実家から持ってきた未読の本数冊の中に先生の作品があったからである。

 それが『深泥丘奇談・続々』という小説だった。読み終わってから気づいたが、なんとこの作品『深泥丘奇談』『深泥丘奇談・続』に続く連作の3巻目に当たるらしい。まじかー、知っていたら1巻から読みたかった、と思ったが部屋にこの3巻目しかないので、逆に知らなくてよかったかもしれない。前作の存在に気づいていたら、1巻目から読もうとするためもっと時間を要しただろうから。綾辻行人という名は、私の敬愛する辻村先生の口から度々上がるので興味があった。それにしても、タイトルで想像できない私は馬鹿すぎやしないか……。


 本作は、深泥丘の数々の怪異にミステリー作家の"私"が巻き込まれていく話である。理解しようとするな、これは感じるものだ、と言わんばかりのなんでもありの超展開の数々に、私は振り回され続けた。夢と想像と現実をゴチャ混ぜにした、理不尽の悪夢の中を漂うような世界観で、私は何度も吐き気と眩暈に襲われたが、なんとか読み切った。読んでると精神を摩耗させられるだろうが、興味がある人は一度読んでみて欲しい。これは、作者から私たち読者への挑戦状だと感じる。

 肝心の物語では多くの謎が提示されるが、結局何を見せられているのかがわからなかった。ふろしきを広げるだけ広げて不安は煽るのに、種明かしされることなく不可解なまま物語は続いていく。主人公の記憶の曖昧さも手伝ってさらに混沌とし、読んでいる私も頭が狂気でおかしくなりそうなる。この理不尽さこそが、この物語の醍醐味だ。まさに“奇談”。


 小説を読んで、久しぶりに疲れてしまった。

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