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サウナと砂時計


サウナには砂時計がつきものだということは、この間はじめて知ったことだ。かねてから「銭湯」や「サウナ」に興味は尽きなくて、それでも、女ひとりでそこへ向かうにはなんだかとても壁の高さが高いような気がしてしまっていた。

先日、とうとうその壁を越えてきたのである。

サウナには、「ととのう」という感覚があるらしい。そして、サウナ5~6分・水風呂1~2分・休憩5分という大体の推奨サイクルがあることも知った。この順番を何度かくりかえせば、いつしか「ととのう」タイミングがやってくるらしい。

満を持して足を踏み入れたサウナには、砂時計があった。

サウナによって設備や仕組みは違うのだろう。私が行ったところには、ちょうど人が座った目の高さほどの位置に砂時計があって、くるくる上下を転回させることで5分間隔の時間がはかれるようになっていた。

なるほど。
時計もスマートフォンもパソコンもない空間で、この、頼りなげなサラサラとした落ちゆく砂が、私にとっての唯一の指標となるのだ。

くるくるくる、と砂時計をまわしてみて、改めて、サウナには砂時計がぴったりだ、と思った。

表面がちょっと熱いので、番台でもらったタオルで保護しながら、くるっと上下をまわす。サラサラサラサラと重力に従う砂たちを見るほかは、目をやるものもない。

熱く、皮膚を覆いつくし密封してくるような空気と、深呼吸が似合う空間と、5分をはかる砂時計と、機械の発する独特の低音と。

私と砂時計しかここにはない。みんながいう「ととのう」という感覚は、ただひたすらに「自分」と「今」に直面することで生まれるのかもしれない。

案の定、私もサウナの魅力にとりつかれてしまった。

普段の入浴は30分ほどで済んでしまうのだが、きづいたら2時間以上経っていてびっくりもした。800円という値段が安いのか高いのか判断さえついていなかったが、滞在時間から考えても高いコスパといえるだろう。

砂時計の静けさが、サウナという空間にはそこはかとなく、合う。


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