「短所は武器になる」の意味を教えてくれた本

実はぼくは、好奇心が旺盛なほうではありません。(中略)そこまで好奇心がないので、好奇心がない人の気持ちもわかります。だからつねに「好奇心のない自分ですら読みたくなるもの」を書こうとしているのです。

編集者・竹村俊助さんの「書くのがしんどい」のなかで見つけた一節だ。

この文章を読んだとき、わたしは、これは本当に嘘でも盛りでもなんでもなくって、「救われた」気持ちになった。ああ、よかった、と思った。ほんとうに?とも、思った。

もちろん好奇心は大事な素質のひとつだし、好奇心がなくても書く仕事はできるよ!って話でもないし、好奇心を高めたり保ったりする意識は持っていたほうがいい。

だけど、現場で編集者として仕事をされている竹村さん自身から「好奇心がない人の気持ちもわかる」って言葉を聞けたことで、わたしは確実に救われたのだ。

作家やライターや編集者など、書くことを生業にしている人たちにとって、素質や条件の第1位に「好奇心旺盛なこと」が通年ランクインしていると思っていたから。

そして、わたしにはそれがないとずっと思っていたから。コンプレックスのひとつに「人や物事に興味が持てない」が、ずっとある

よく言えば、「あっさりしている」「細かいことに執着しない」「おおらか」あたりになるのだと思う。

よっぽど大好きだと思える対象じゃないと人や物事に興味が持てないこの性質は、学生時代こそプラスに機能していた。しかしライターとして仕事をするようになってからは、目立つ枷としてしょっちゅう悩みの種になった。

今でこそ、心からやりたい仕事に恵まれるようになった。この人と組みたいと思える人と仕事ができるようになった。

それでも最初は苦しかった。つらかった。決してやりたいとは思えないし興味も持てないけど、生活のために強行せねばならない種類の仕事が少なからずあったから。

たとえ興味がなくとも、仕事だと思えばどこかしら面白いポイントを見つけて深掘ったり、膨らませてひとつのコンテンツに昇華できるのがプロなのだと思っていたから。

根本的に「周りに興味が持てない」私は、「面白いポイントを探す努力が必要」な私は、ライターには向かない

わかってはいたけれど、書く仕事を諦めたくないし、逃げられない。

ずっとずっと、そう思ってきたから、竹村さんにもそういう一面があるのだと知って嬉しかった。好奇心がないならないなりに戦えるし、好奇心がないからこそ「読ませる文章」が書ける。

短所を武器にする方法と、思考を転換する方法を教えてもらった。

わたしは今、こわくない。

ずっとコンプレックスだと思い、背負い続けてきた荷物が、実は武器になると知ったから。使い方を知らなかっただけだと、教えてもらえたから。

変な言い方かもしれないけど、これからの自分がこの先の人生どんなふうに生きていくのか、誰よりも私自身が楽しみにしているのかもしれない。


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